書籍【「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?】読了
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◎タイトル:「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?
◎著者:今井むつみ
◎出版社:日経BP
こちらの伝えたいことが伝わらないだけでなく、おそらく相手が伝えたいことも、私に伝わっていないのだろう。
「何回説明しても伝わらない」ことは、本当に恐ろしい。
仕事では常に付きまとっている、大きな課題だ。
ここで言っている「コミュニケーション」とは、あくまでも「感情」のことではない。
端的に言えば「情報」の方だ。
情報は通常「インフォメーション」のことであるが、それは「学校からのお知らせ」のようなもので、今回の意味とは異なる。
インフォメーションは通常一方通行であり、一対多の関係のことを指す場合が多いだろう。
本書での主題は違う。
「情報についてのコミュニケーション」は、意味合いが大きく異なるのだ。
この情報は一方通行ではなく、相互にやり取りされるものであるが、感情に共感する話ではなく、あくまでも「相手が伝えたいと思っている内容が、正しく自分に伝わり、そして理解をしたか」というもの。
ここでのやり取りはあくまでも双方向であることに意味がある。
友達同士で、勉強の分からないところをお互いに分かるまで教え合うようなイメージに近いかもしれない。
仕事では、上司部下とか階層があるから、どうしても一方通行な指示になりがちだ。
しかし今の時代は、課題そのものが複雑化していて、上司ですら正解が分からない状態だ。
上司も部下も関係なく、全員で話し合いながら、その都度最適な答えを見つけていけることが理想の形だと思う。
そうしたいのに「伝わっていない」「理解していない」が随所で起きていたら致命的だ。
本書の第1章は【「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」かもしれない】だ。
これは深い。
打合せの参加者全員がまずはこの思考になれるかどうか。
相手にあなたのメッセージは、伝わらないことを前提としてみる。
その前提で、どうすれば分かりやすく伝わるのかを考える。
ついつい相手に理解を求めてしまうが、果たして自分は相手のメッセージを正確に理解できているのだろうか。
年齢を重ね経験を積めば積むほど、「相手に伝わるように伝える」という努力を怠っている可能性がある。
それは他の人同士の会話を客観的に聞いていて、そう感じるからだ。
とにかく会話がかみ合っていないのに、物事が進んでいこうとするのを身近で見ていると、恐ろしさすら感じてしまう。
他人を客観的に見ていると気付けるのに、自分事となると、なぜできないのか。
人間とはそういう生き物なのかもしれない。
本書内では「スキーマ」と言っているが、結局は人それぞれに価値観があって、ある言葉を言われても、その言葉を都合がいいように解釈する癖がある。
認知バイアスという言葉も使われるが、このフィルターを外すことは相当難しい。
自分自身で強く意識をしないと、必ず人の言動を「スキーマ」として、自分の都合のよいバイアスで解釈してしまう。
先入観を交えずに、フラットに話を聞く。
そして一拍置いて「相手がどういう意図で、私に何を伝えようとしているのか」を想像してみる。
心の余裕が大事だが、まずはこの2ステップを心掛けることが重要だと思う。
話はこれに尽きるのであるが、実践するのはそんなに簡単な話ではない。
最近は、仕事上でもより複雑な課題が山積している。
特に打合せに参加するメンバーで、ベースの知識が揃っていない場合は、質の高い打合せをすることそのものが単純に難しい。
会議がマウント獲り合戦になると最悪だが、知識をひけらかして、ITやデジタル用語の横文字を乱発するような打合せは、本当に止めてもらいたい。
相手からすれば「基本の知識なのだから、事前に勉強しておけよ」ということかもしれないが、会議参加者のほとんどがついてこれていないのだから、打合せのやり方そのものを見直すべきだ。
テクニカルな話の問題ではない。
相手が何を知っていて、どういうレベル感なのか。
それを理解していれば、相手に伝えるために、理解してもらうためにどうするかを考えるはずだ。
結局は、相手の気持ちになって考えろということに尽きてしまう。
それでも大事なのは「先入観を交えずに、フラットに話を聞く」ことなのだろう。
むくむくと前に出てくる先入観をどうやって抑え込めるか。
これも「人間力」と言っていいだろう。
「伝える」ことは本当に難しいが、まずは相手が伝えたいことを、私自身が正しく理解することだ。
社会的な生物である人間にとって、「コミュニケーション」は、永遠のテーマだと思う。
(2024/8/22木)
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