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書籍「エンタメビジネス全史『IP先進国ニッポン』の誕生と構造」読了


https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B0BY1D9CMB

◎タイトル:エンタメビジネス全史「IP先進国ニッポン」の誕生と構造
◎著者:中山淳雄
◎出版社:日経BP


我々は自国の文化をもっと誇るべきだと思う。しかし謙虚な我々は、どう誇れば良いのかが本当に分からない。
自分の良さに気がつかないなんて、なんて奥ゆかしいのか。
逆の言い方に変えれば「せっかく高い価値のあるものを、ただ同然で配っているお人好し」とも言えるかもしれない。
それもこれも、世界の標準(相場と言うべきか)を把握していないから、こんなことになってしまっている。
違いを認識し、どう外に向かって価値あるものを売っていくのかを徹底的に考える必要があった。
それは今現在でも同様だ。考えることに時間をかける余裕すらないと思っている。
今この瞬間も日本の貴重なコンテンツが食い物にされているという危機感を持つべきだ。
我々は今まであまりにも内向きになり過ぎていたし、我々の極めて良質で特異なコンテンツとエンタテインメントをあまりにも安売りし過ぎた。
海賊版を苦々しく思いつつも、その対策を本腰入れて行ってこなかったこともその一つ。
だから本書にも書かれているが、海賊版マーケットだけで兆円の単位となっていた。
これが日本主導で正規なビジネスをしていたらどうなっていたのか。
兆円単位の収入が日本の懐に入っていたということなのだ。
最近はテクノロジーの進化で、海外OTTなどが勃興し、ユーザー側としては海賊版をわざわざ入手しなくても、正規コンテンツに対して手軽にそして安価にアクセスできる方法が出てきた。
しかしながら、それらも我々が主導で行ったビジネス展開とは言えない。
Netflixで消費される日本産アニメも、見方を変えれば、結局Netflixに利用されNetflixを儲けさせるためだけの存在とも解釈ができる。
Netflixが自分たちの利益を捨てて、コンテンツ制作者側に高額な制作費を支払い続けることはあり得ない。
アニメ制作費として支払われた金額以上に、Netflix側でも利益が出ると目論んでいるから、その金額を負担できるのだ。
今までの日本国内のアニメ制作費相場以上の費用をNetflixは制作会社に支払っているかもしれない。しかし、そこは冷静に状況を見極めた方がいいはずだ。
もちろん、これらの状況は日本アニメに限らない。
本書では各エンタメのジャンル毎に、歴史とビジネスの特徴を網羅的に解き明かしてくれている。
それこそ考え方を変えれば、なぜJ-POPはK-POPのように世界に出ていけないのか?
テレビドラマや実写映画でも同様に、もっと世界で売る方法があるのではないだろうか。
マンガだって、Webtoonに押されていてよいのかと思ってしまう。
スポーツだって、MLBとNPBの収益比較は余りにも差がつき過ぎている。これは海外サッカーとJリーグも同様だ。
もっともっと上手いやり方があるはずなのだ。
様々な世界の成功事例、失敗事例を研究し尽くせば、何らかの方法論が見えてくるはずなのだ。
日本人はお人好し、商売下手と言われるが、まさにその通り。
世界のどこにも存在しない、日本独特の素晴らしい文化があるのに、それをマネタイズしなければ勿体ない。
本書の中では、タイトル通りであるが「エンタメ」という括りで説明をしているが、現実的には「コンテンツ」を意味するものと、「流通網」を意味するものがあるだろう。
両者を掛け合わせて「エンタメ」と定義しているのかもしれないが、この辺も我々側がきちんと整理をした方がいい。
出版も、テレビ局も、配信ビジネスも、やっぱり流通網だ。ここは確かに収益化するための大事な点ではある。
マンガ、アニメ、ゲームなどはあくまでもコンテンツビジネス。
当たり外れがあるものだし、クリエイターの力量に頼る運任せ的な部分をそもそも含んでいる。
まさに、10本に1本の大当たりが出れば、9本の負けを回収できるというスキームは、あまりにもビジネス的には超が付くぐらいハイリスクと言える。
コンテンツビジネスだけで儲けを出し続けるのは、基本的には無茶な試みだ。
流通網の部分でどうやってリスク少なく、利益を生み出せるような形を構築できるか。
結局、流通網についてはテクノロジーの進化で代替わりをするとしても、「コンテンツ+流通網=エンタメ」の基本的な図式は変わらないのかもしれない。
つまり今後近い将来にメタバースなどに移行しても、上記は必ず引き継がれていく。
さて、我々はどう戦うのか?
本当にこれに尽きる。もっともっと真剣に議論していきたいところだ。
(2023/5/7)

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