書籍【人事こそ最強の経営戦略】読了
https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B07DDG2PJR
◎タイトル:人事こそ最強の経営戦略
◎著者:南 和気
◎出版社:かんき出版
今後の会社の方向性によるが、グローバル企業を目指すのであれば、人事の仕組みを根本から考え直す必要がある。
本書は、マインドセットというよりも具体的なノウハウを記しているのが特徴だ。
私自身、人事セクションの経歴が長くなったが、国内のみの会社でしか勤務したことがなく、さらに会社の人数規模も決して大きくない。
本書を読むと、グローバル企業を目指す、数千人以上の規模の人事制度についてのことだと感じてしまった。
当社のビジネスモデルを考えると、すぐに「グローバル企業になるぞ」ということにはならないのだが、取り扱っている製品を海外に販売していくことや、海外製品を輸入して日本で展開することは、これからは更に増やしていく予定だ。
もちろん、人口減少による国内市場の縮小が大きな要因である。
必然的に、海外に打って出なければ今後の収益拡大は難しい。
当社はそんな状況であるが、グループ企業全体で見てみると、グローバルを目指していく端緒は見え始めている。
海外企業との提携も増えているし、現地で合弁で子会社を作って事業を運営することも行いつつある。
本書を読みながら、色々と想像してしまったが、今後のことを考えると、今は国内産業のみであったとしても、グローバル展開を考えざるを得ないため、グローバル人事の考え方は避けて通れないのではないかと思ってしまった。
いまだに当社もメンバーシップ型が根強く残っているが、ここをジョブ型に変化させていくだけでも、相当な労力が必要だろう。
もちろん、ジョブ型に移行するなんて全く決まっていないし、ジョブ型に移行することが当社の文化に合致するのかも、全く議論していない状況だ。
それでもメンバーシップ型の弊害は出ていると思うし、新卒で入社した社員が、終身雇用で定年まで辞めずに働くなんてことは、今の段階ではとても想像ができない。
それでは、どんな人事制度、人事施策を行うことが、これからの当社にとってベストなのか。
この答えは、簡単には出そうにない。
それよりも、明確な答えなど無いと言ってもいい。
今後は事業自体もかなり変化していくし、人材が流動化していくことは間違いない。
当社内のある業務に対して、そのスキルを持った人を中途採用する訳であるが、ジョブ型で雇用すればよいかと言えば、これが簡単な話ではない。
例えその業務スキルを持っていたとしても、当社の文化に馴染むのかどうか。
馴染まなければ、会社を去ってもらって、次の人を採用すればいいとも考えられるが、実はそれが日本では難しい。
一度雇用したら、簡単に辞めてもらう訳にいかないのが、現行の雇用に関する法制度だ。
人材の流動性という点では、まだまだ滑らかではないと言えるし、この状況は当面は続くだろうと思う。
これだけ社会の状況が変化している中で、仕事のやり方も今後益々変化していくことになる。
新しいスキルを取得していかないと、競争力自体が無くなってしまうということだ。
これからの時代は特に、未来永劫その業務が存在するとは限らない。
別の仕事をやってもらうとすれば、本人がどういうキャリアプランを描けばよいのか。
会社側がどういうキャリアプランを提示できるのか。
人間の寿命が益々延びていくのに連動して、雇用も延長されていくことは間違いないのである。
どこの会社に属するかは別として、学校を卒業して40年、50年と働くことを考えると、一つのスキルだけで、長い人生を生きていくことは相当に難しくなっていく。
だからアンラーニングだ、リスキリングだと言われる訳であるが、その状況は益々加速していくだろう。
「LIFE SHIFT」では、人生の中で、仕事を2〜3回変えていくことが普通になると説いていた。
これは本当にその通りだと思う。
日本は人事異動によって、今までと異なる経験ができるため、ある意味でスキルアップに繋がるとも言える。
最近は自社の人材育成のために、企業内大学と称した教育部門を設置している会社も増えてきた。
結局社員が成長しなければ、会社の成長も無いということだ。
企業の成長戦略を人事が握っていることは間違いない。
一方で、グローバル化は必ず進んでいく。
どのタイミングでグローバル人事を取り入れていくかは状況次第だが、準備しておく必要がありそうだ。
人事という仕事は完成形がなく、だからこそ面白いとも言える。
まさに経営戦略なのだということを、日々感じている。
(2024/11/24日)