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書籍【楽しく学べる「知財」入門】読了
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https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B06W9JWD6K
◎タイトル:楽しく学べる「知財」入門
◎著者:稲穂健市
◎出版社:講談社現代新書
著者は弁理士のため、知財を扱うのが本業であるが、一方で常に「面白知財ネタ」を収集するのが趣味らしい。
知財(知的財産権)というと固いイメージがあるが、一般の人には、こういうユーモアから興味を持ってもらうことが大事だと思う。
例え知財に詳しくないとしても、「これはどう見てもパクリじゃないか?」というものを見つけるだけでも面白い。
知財には、著作権、商標権、特許権、実用新案権、意匠権など様々な権利の種類があるが、権利を持ちたいと思っている人は、どの点に注目すればよいか。
重要なポイントは「差別化」だと思う。
当たり前のことだが、権利の種類はどれでも、同じものは二重で登録できないし、似たものも登録で弾かれる可能性が高い。
如何に差別化するかが、この権利取得の主目的なのである。
「他と違う」ということをどう表現するのか。
どこのどんな部分が具体的に工夫されているのか。
それらを明確に主張できることが大切なのだ。
これは芸術作品にしても、デザインにしても、発明にしても、この点に関して言えば共有している事項ではないだろうか。
これだけ世界が情報に溢れている時代。
どこかで既に見たものを、自分が発想したものと勘違いして創作した場合、その作品は一体どういう扱いになってしまうのか。
依拠性ということで判断されるらしいが、結局似ていたらNGとなる可能性の方が高い。
似るか似ないかで言えば、人間なんて大体思考回路そのものが同じようなものだから、私が思いつく程度のことは、人類80億人の誰かが思いついているはずだ。
全く違うものを作るなんてそもそも無理があるのだが、発明者や創作者を守るためには、しょうがない部分だ。
現在は特にネットワークでつながって、情報が瞬時に届いてしまう時代だ。
前述の通り、どこかで見たものを自分の発想と勘違いすることもあるだろう。
まずは自分で思いついたアイディアがすでに実行されているかは、ネットワークにつながった世界で検索してみれば出てくるだろう。
それでは、検索しても出てこない場合は?
そもそも生成AIに「この世に無いアイディアで作品を生み出してくれ」と命令したら、世界のデータベースに無いものをひたすら生み出し続けるのだろうか。
現状の生成AIは、過去のデータを元にして生成する訳なので、普通に考えれば「この世に無い物」ではないはずだ。
そこはひたすら組合せを変えることで、今までになさそうなものを作っていくのだろう。
人間だって、実は同じような作業をしている。
イノベーションとは、技術革新ではなく「新結合」である、と言ったのはシューペンターだったか。
これからの知財の考え方はどうなっていくのだろうかと真剣に考えてしまう。
本書では、数々の面白い知財について紹介されているが、あとがきに未来の知財の変化について、記されていた。
本書は2017年発行なので、アルファGoが囲碁の世界チャンピオンを倒した後ではあるが、まだまだ生成AIが世で流行する以前の時代である。
そこでも、すでに生成AIの誕生について示唆しているのだからスゴイ。
こうして知財についても、歴史の流れを俯瞰して見てみれば、将来がこうなりそうという予測はつくものだ。
当然その予測が外れることもあるだろう。
正解というパターンもあるだろう。
しかしながら、予測は概ね、その人の「願望」とも言える。
人間の思いが、未来を創っていくのは間違いない。
生成AIが何でもかんでも生み出していくかもしれないが、「思い」を生み出すのは人間だけだろうと思っている。
気持ちを磨く修業をすることが大切なのだと改めて感じたのだ。
(2024/11/21木)