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【目印を見つけるノート】571. 『天国への階段』尽くしです(意訳付き)

今日はレッド・ツェッペリンの『天国への階段』(Stairway To Heaven)という曲のことだけ書きます。訳も付けました。
私見は最後の方に置きますが、ちょっと限定した内容になります。
レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)は1968年にデビューして、1980年に解散したイギリスの4人組ロックバンドです。
『天国への階段』は4枚目のアルバムに収録されています。日本では『Led Zeppelin IV』と呼ばれていますが、本来は無題です(Four Symbolsとも呼ばれています)。
そのA面(レコード)最後にこの曲が収録されています。
寂しげなコードAmのギターとリコーダーで始まり、広がりのある12弦ギターの響きが美しい中盤から激しいロックに展開して終わります。たいへんドラマティックな曲で彼らの代表曲のひとつです。
それは彼らも初めから意識していたのでしょう。レコードにはこの曲の歌詞だけが絵本のような書体、挿絵付きで印刷されていました。

歌詞をご紹介しましょう。


天国への階段

すべての輝くものが黄金だと信じているひと
彼女は天国への階段を買おうとしている
たどり着く店がすべて閉まっていても 
ひとつの言葉で
彼女は待ち望むものを手にできると知っている
そして彼女は天国への階段を買おうとしている

壁にはしるしがあるけれど 
彼女はさらなるしるしを求める
言葉はふたつ意味を持つことがあるから
小川の脇に立つ木で 小鳥がうたう
ときどきぼくらの思考すべてが揺らいでいく

わからなくなるんだ

西をはるかに見るとき 感じることがある
そしてこころは 去りがたくて泣いている
思考のなかで僕は描く
木々を通り抜ける 煙の円環を
そこに立ち 見ている誰かの声を

わからなくなるんだ

奏でられる音を呼び求めれば 
ささやきがじき 僕らの耳に届くよ
そうしたら
笛吹きがぼくらを真理に導くだろう
長く待つ人びとのために
新しい日がやってくる
そして森には笑い声がこだまするだろう

それで僕はわからなくなるんだ

庭の生け垣がざわざわしだしても 驚かないで
五月の女王のために 春を片づけているだけ
そう あなたが進める道はふたつある
でも 長い間には自分のいる道を変えることもできる

それで僕はわからなくなるんだ

あなたの頭はぶんぶん唸って 進まない
笛吹きが一緒においでと 呼んでいるよ
親愛なるあなた 風の吹くのが聴こえる?
知っていた?
あなたの階段は 風の囁きの中にあることを

僕らが曲がりくねった道を下っていくとき
その影は僕らのたましいより高くそびえる
僕らの知っている彼女が 歩いている
白い光を輝かせ 僕らに知らせようと
どのようにすべてが 黄金になるのかと
懸命に耳を凝らすのならば 
その果てに音が奏でられるだろう
すべてがひとつなら ひとつがすべてであり
それは揺るがない岩になる

そして彼女は天国への階段を買おうとしている

Stairway To Heaven / Music by Page and Plant /  意訳 尾方佐羽


いくつか私の補足を。
すべてが黄金に変わるというのは錬金術のことと受け取れます。「笛吹き」というのは『ハーメルンの笛吹き男』的な人と思われます。「最後の審判」のイメージもありますね。天国への階段を買えると固く信じている女性への応援、共感、崇敬、傍観、諫言とも取れる歌詞だと私は考えています。

さて、音盤ではアコースティックギターで始まるこの曲ですが、ライブでジミー・ペイジは12弦と6弦のついたギブソンのダブルネックギターで演奏しています。ベースのジョン・ポール・ジョーンズはこの曲ではキーボードを弾きます。

いくつか有名なライブの動画を引用します。
すべてフルにするとたいへんな長尺になってしまいますので、短いものもあります。

1973年、Madison Square Gardenでのライブ。これは1976年に『永遠の詩(狂熱のライブ)』(The Song Remains The Same)という映画とライブアルバムになった有名なものです。

これはジミー・ペイジのギターソロだけの短いものですね。これ以降の動画も同様なのですが、ドラムスのジョン・ボーナムとの掛け合いが見ものです。
前のnoteでも書いたことがありますが、ドラムスが臨機応変にギターと同じ音符を叩くのです。時には煽ったり、尋ねているようでもあります。ソロにチョーキングが入れば間を入れたり、3連符になれば3連符に。
レッド・ツェッペリンの醍醐味のひとつはギターとドラムスの掛け合いなのです。

私の説明ではわかりづらいので、そのことを説明している動画を。これは分かりやすいです。
What Makes John Bonham Such a Good Drummer?

1975年、イギリスのEarls Court Arenaでのライブです。

この頃が円熟期だったのではないかと思います。これはよりメロディアスだと感じます。アメリカツアー終了後の凱旋でしたので、リラックスしているのかもしれません。アールズコートではテンポがゆっくりなのです。この曲はメロディアスなので、やはりゆっくりの方が聞き入るのに心地いいです。

1977年、シアトルでのライブです。

こちらはかなり新鮮です。音のバランスのためか、キーボードの音が前面に出ています。この曲はライブではベースなしになりますので、後半のアップテンポをどうカバーするのかという工夫も見られてとても興味深いです。
何よりキーボードの音、きれいです。

1979年、Knebworth Festivalでのライブです。

これが、実はハラハラするのです。
このフェスティバルまでバンドは不幸なこともあって、ライブが久しくできていなかったのもあるのだと思います。ギターが走っていて、キーボードと少し合っていない。音はとてもきれいなのですが……。でも、ジョン・ボーナムのドラムスでビシッと揃います。そして、ソロになったらテンポを上げてギターに合わせてもいます。
ドラムスがいかにバンドで大きな役割を果たしているのかと気づく動画です。それに、他の動画でもそうですが、ボンゾはメンバーをよく見ているのです。すごい人です。

1980年、ベルリンでのライブです。これがこの4人での最後の演奏になったとコメントにあります。そうでなくとも、それに近いものだったでしょう。同年9月、ドラムスのジョン・ボーナムが不慮の死を遂げてバンドは12月に解散しました。

このライブのバージョンについては、ジョン・ボーナムがきっちりと、本当にきっちりと8ビートを叩いていることが印象に残ります。

最後の引用は、ジミー・ペイジがこの曲の製作の背景について語っている動画を。英BBCの番組ですが、編集の妙に拍手喝采です。
Jimmy Page: How Stairway to Heaven was written - BBC News

ーーーーーーーー以下私見です。

これは誰にも見てもらえなさそうだなと思いましたが、「これだけこの曲のライブバージョンを一緒に出す機会はもうないだろう」と思って書きました。

思えば、『3年B組金八先生』(TVドラマ)で生徒役の野村義男さん(ギタリスト)が金八先生に弾いて聴かせていたのがこの曲だったと思います。合っていますか。
レコードもですが、携帯用音楽プレーヤー(ウォークマン)で初めて聴いたときは本当にもう、鳥肌ものでした。
アールズコートのロバート・プラントとジミー・ペイジの写真ポスターを中高にかけて、ずっと部屋の壁に貼っていました。ギターがダブルネックなので、この曲の一葉かと思います。写真では知っていましたが、今回初めて動画を見ました。当時はMSGのライブしか見られるものがなかったのです。

ひとことで言えば、大好きな曲です。

通して視聴すると、このバンドの変遷も見えてきます。この曲だけが素晴らしいというのではありませんが、それだけいろいろなものを包摂しているといえるのではないでしょうか。

それでは、お読みくださってありがとうございます。

尾方佐羽

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