「あなたの番です」最終回後の10万ツイートの感情判定が「嫌悪」だらけだった件。
私はマーケティングにおけるデータ活用を支援するコンサルタントの小川と申します。マーケター向けの分析の書籍も出版しています。
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戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。
番組ファンがプロ仕様のツールを使ってツイート全数を分析。
「あなたの番です」は秋元康氏が企画脚本を担当した2クールの日テレのドラマです。黒幕は誰だ!?」などWEBでの考察ブームを仕掛け、1クール目の最終回6月16日にはツイッターのトレンドで世界トレンド1位にもなっていました。
最終回の視聴率は19.8%!
最終回は多くの謎を残したまま、番外編はHuluへ、的な内容だったため、多くのクレーム電話が入った模様です。「現在、日テレはネットの反応を見ながら「あな番 未回収を回収しますSP」(仮題)の告知タイミングを計っているという。」という記載もあります。
私は、あなたの番ですロスになるのがいやだったので、謎が残ったことで続編への期待が生まれ、前から契約していたHuluで番外編が楽しめることを喜んでいました。最終回放映後のツイッターは想像以上にざわついていました。
これから紹介する分析では、ツイートの全数抽出が行えるソーシャルリスニングツール、コミュニケーションエクスプローラー、以下「CE」を使って、最終回後の「あなたの番です」ファンのざわつきを可視化します。
以降、あなたの番ですとは?といった説明を控え、主にドラマを見た方向けに説明していきますが、ドラマを見ていない方であっても、
マーケティングやデータ分析に興味のある方にはツイートを使った分析の参考にして頂けると思います。
なお、9月8日の最終回の放映後の24時過ぎにはこのnoteを公開していました。
内容をかいつまんで説明します。
■第1話放映開始(4月14日)~最終回放映の前日(9月7日)までの合計ツイート数は162万強。
■うち、考察と思われるツイート数は25.6万。
■1クール目の最終回6月16日から急増し、ツイート数のベースがアップ。
■2クール目の反撃編開始6月30日から最終回前日9月7日までの考察ツイートを分析し、犯人候補となる登場人物それぞれの言及があったツイート数を集計。
■「誰が一番怪しまれたか?」を定量化した結果、1位は、黒島ちゃん、2位は翔太、3位はどーやん。
ツイッターユーザーの考察は正しかったわけです。
最終回9月8日のツイート数はどれだけあったのか?
前回は最終回前日の9月7日までの集計だったので、9月8日のツイート数を加えました。
全ツイートの折れ線グラフはこんな感じです。9月8日の9月8日の27.6万ツイートが多過ぎて、1クール目の4月14日~6月15までのツイート数の推移が地を這うように見えてしまってます。
最終回の放映直後からの視聴者のツイートから感情の推移を探る
放映終了間際の23時23分から23時59分まで、放映終了直後の約10万ツイートを分析して、最終回のラストからの視聴者の感情の変化をツイートから捉えていきます。
まず、ツイート数を分単位で集計しました。
折れ線グラフにしてみると、放映終了直後にピークを迎えてきれいに減衰しています。
次にツイート数とリーチ数の推移を見ていきます。
リーチ数とは、例えば、フォロワー10人のAさんとフォロワー100人のBさんが1回ツイートして、フォロワー5人のCさんが100回つぶやいた場合、下記のように求める値です。
(A)10人×1+(B)100人×1+(C)5×100人= (MAX)リーチ610人
こうして求めた値はフォロワー数から導いたツイートを見た方の人数の上限値の目安となります。
MAXリーチ数と捉えるのがよいと思います。
2軸の折れ線グラフでツイート数とリーチ数の推移を重ねると、リーチ数が急上昇している箇所が①②③の3箇所ありました。こうした箇所では、フォロワー数が多いアカウントがツイートしている場合が多いです。
①は番組公式アカウントによる以下のツイートやHuluのツイートによってリーチ数が多くなっていました。このツイートの1分後の23時27分がツイート数の最大値になっています。
②はオリコンニュースのツイートが、
③はこのツイートが、
それぞれリーチ数をけん引してました。
こんな風にして、影響力のあるツイートを探していきます。CEにはリツイート数の多い順に集計する機能もあります。リーチ数やリツイート数の集計方法など、前回のnoteで紹介していますので、詳しくはご覧下さい。
ここからは、言語意味理解研究所(ILU)との共同開発による、言語解析エンジンの機能を使っていきます。前回のnoteにも書きましたが、テキストマイニングによる感情判定は難しいです。例えば、「やべー」って言葉は、いい意味でもわるい意味でも使われます。例をあげたらキリがありません。
ソーシャルリスニングでいきなり細かい単語の抽出集計をすると、深みにハマって全体を掴めなくなることがあります。まずは、対象となるツイート全体を俯瞰してツイート内容を把握することが重要です。言語解析エンジンの活用は分析の初期段階で全体を俯瞰するのに便利です。
まずは、大分類で分析します。文脈から「肯定」的か「否定」的か?またはそれ以外「中立」的か、3分類で判別してくれます。
肯定中立否定の分類はプロ仕様のソーシャルリスニングツールに良く備わっている機能ですが、CEの場合は中分類、小分類というさらに細かな解析単位があります。中分類は下記です。
この分類で解析してみます。
この粒度の判定では「質問」「悲哀」「悪評全般」が多くなっていました。
次に小分類です。
さらに細かいです。
この分類で解析してみるとこんな感じです。「その他判定」が増えてしまいましたが、
一番多いのが「嫌悪」でした。
私はこれまで企業向けのツイッター分析も多く行ってきましたが、嫌悪が1位になるパターンは初めてで、興味深い結果でした。
小分類の結果をさらに、1分単位で集計してみます。「その他」は除外して集計しました。
表の値を縦棒の積み上げグラフにしました。
「疑問」と「嫌悪」が、放映直後に多くつぶやかれ、次いで「不満全般」「良好」「楽しみ」の順番です。
これを縦100%の割合グラフで積みあげます。
「疑問」と「不満全般」の割合は放送終了直後からだんだん減っています。特に「疑問」の減少が顕著です。
「嫌悪」と「楽しみ」と「良好」の割合は時間の経過とともに増えています。
放映終了間際からあの終わり方はなんだ?という「疑問」判定のツイートが一気にピークを迎え、「不満全般」とともに時間が経つにつれて減衰し、「嫌悪」と「楽しみ」と「良好」はじわじわとツイートされ割合を増やしていった模様です。
さらに詳しくツイートの中身を見ていきます。
番組終了直後に急増し、一気に減っていった「疑問」と「不満全般」ツイートの中身は?
まずは、番組終了後に一番多かった「疑問」と判定されたツイートに含まれる単語のランキングを見ていきます。
番組名に含まれる語句(番)以外で一番多い「続編」に対応する感性表現を抽出する機能を使ってみます。
上位の「あるの」という文字をクリックすると、43件の該当ツイートが表示されます。
コメントのみ記載します。
こんな風に見ていくことで、「疑問」のツイートの大枠がつかめます。大まかには
「続編はあるのか?」
というツイートが多いことが分かりました。
次は「不満全般」と判定されたツイートに含まれる単語のランキングです。
「最終回」に対応する感性表現を抽出します。
「つまんなかった」に該当するツイートを見てみます。
不満全般のツイートは、
「最終回がつまらなかった」「モヤモヤして腑に落ちない」
というツイートが多いことが分かりました。
時間の経過とともに、ツイートに占める割合が増えていった「嫌悪」「良好」「楽しみ」のツイートの中身は?
次は「嫌悪」と判定されたツイートに含まれる単語のランキングです。
「HULU」に対応する感性表現を抽出します。
「見れない」という文字をクリックして、該当ツイートを見てみます。
最終回放映直後に、Huluのアクセスが急増し一時的に見れなくなりました。「あな番」のせいでHuluまで落ちたので、他の番組も見れないといった「見れない」ツイートもあれましたが、多いのはHuluを契約していないから(続きが)「見れない」というツイートでした。
「嫌悪」のツイートは、視聴者それぞれのHuluが「見れない」によるざわつきだったことが分かりました。
次に「良好」と判定されたツイートに含まれる単語のランキングです。
「ドラマ」に対応する感性表現を抽出します。
「ドラマにハマった」に該当するツイートのコメントを見てみます。
良好のツイートは、
「珍しくハマったドラマだった」というツイートが多いことが分かりました。
最後に「楽しみ」と判定されたツイートに含まれる単語のランキングです。
「最終回」に対応する感性表現を抽出します。
「面白かった」に該当するツイートのコメントを見てみます。
最終回が面白かったというコメントもありますが、「最終回までは」または「推理して悩んでいた時が」面白かったというツイートも多いです。あとは、これまであまり見ていなかった人や最終回だけを見た人が面白いと言っているのも印象的です。半年間熱中して見てきた人のほうが想いが強いからこそ、あの最終回が消化不良になりましたが、最終回だけを見た人は(なんとなく)面白いと感じたのでしょうか。
楽しみのツイートは、主に
「最終回までは面白かった」「最終回まで推理してきたことが面白かった」というツイートが多いことが分かりました。
【まとめ】10万ツイートから見えた視聴者の感情とは?
もう一度、感情判定別のツイート数の推移を見てみましょう。
番組終了間際の23時22分から、まずは、「続編はあるのか?」といった疑問のツイートが大爆発しました。
「最終回がつまらなかった」「モヤモヤして腑に落ちない」不満全般のツイートがそれに続きます。
これらは、放映終了から時間が経つにつれ、(あな番の)ツイート全体の割合は減っていきます。
放映後のツイートの総量が一番多かったのは「あな番」によって人それぞれ、「Hulu入ってないから(続きが)見れない」または「Huluが(落ちていて)見れない」嫌悪のツイートでしたが、数が多かったのは前者です。放映直後からツイートされ続けました。
普段ドラマを見ない人が「久々にハマったドラマだった」という良好のツイートや、「最終回までは面白かった」「最終回まで推理してきたことが面白かった」という楽しみのツイートはじわじわとツイートされ、(あな番の)ツイートに占める割合を増やしていきました。
最終回のあとにHuluに流すのはどーなんだ!?という反論はあれど、普段ドラマを見ないような人達が珍しく「ハマれた」作品だったのではないでしょうか?19話までの視聴者の熱狂的な考察ブームが無ければ、20話であそこまでざわつかったはずです。
検索トレンドから見た「黒島ちゃん(西野七瀬さん)「Hulu」ブーム
最後に「反撃編」開始の6月30日~最終回放映日の9月8日までの検索数を「Google」トレンドでいくつかのキーワードを調べてみました。
「あなた の 番です 考察」の検索数の上昇とともに、乃木坂46の元メンバーで黒幕だった「黒島(西野七瀬)」の検索数が上昇しています。前回のnoteにまとめた様に、再集回放映後の考察ツイートの中で最も言及されていたのは黒島ちゃんでしたが最終回放映後も急上昇しています。Huluの検索数が一番多くなりましたが、「黒島」と「西野七瀬」を足すと、Huluの検索数を上回っている模様です。
先日(反撃編放映中)Huluでひと昔前の「うちのガヤ」を見ていたら乃木坂46が出ていました。家内に「黒島ちゃん出てるよ!」と言ってはしゃぎました。これから我が家ではTVで乃木坂46を見たら黒島ちゃんを探すだろうと思いました。ですが、このnoteを執筆している時点で、西野七瀬さんが「元」乃木坂46なんだと知りました。それくらい、乃木坂46には元々興味のなかった私が黒島ちゃん(西野七瀬さん)のちょっとしたファンになっています。
最終回放映後ツイートの感情判定による嫌悪の主なものが、「Hulu」じゃないと見れない、「Hulu」が(つながらず)見れない、ざわつきで、9月8日の「Hulu」検索数も急上昇していました。新しく加入した方も多いのではないでしょうか?それを確かめるため、「Hulu お試し」でも調べてみました。(対象期間は直近1年間です)
最終回放映によって1年間でもっとも検索数が急増していました。対象期間を5年間にしても、あなたの番ですの最終回放映週の「Hulu お試し」の検索数は最大でした。
9月8日のツイートのうち「Hulu」を含むツイート全てを丁寧に見ていくと、私のようなHuluユーザーが「(あな番の番外編見れるから)入ってて良かった!」といったツイートや「(あな番の番外編見たいから)兄弟からアカウント貸せって言われた」というツイート、Hulu未加入ユーザーによる「とりあえず入るか?」などのツイートもありました。
「あなたの番です」の考察ブームが社会減少となり、TV以外のメディアにも取り上げられ、視聴率も伸びて「黒島ちゃん」のファンを増やしていき、最終回で一気に「Hulu」の視聴者を増やしたのであれば、マーケティング的には大成功だったのではないかと思います。
続編に期待!
分析者としてファンとして「あなたの番です」の続編が作られることを期待します。再びファンとして推理しながら、その盛り上がりを分析したいです。
私はプライム会員なのでAmazonプライムビデオを常時利用しつつ、HuluかNETFLIXいずれかを併用し、乗り換えながら視聴する動画ストリーミングユーザーです。今はたまたまHulu利用中だったねで「あなたの番です。」の番外編も含めて楽しんでますが、NETFLIXにスイッチしたくなるヤバイ作品が出てきました。山田孝之主演の「全裸監督」です。
見だしたら、一気見が止められず、廃人化しそうなのでまだ我慢していますが、分析者としても、このコンテンツのツイッターでの盛り上がりが気になっています。賛否両論が激しそうです。
私も昨夜(9月15日)に「扉の向こう」の番外編の黒島ちゃん後編を見終わりました。ここではネタバレを避けますが、ツイッターを見ると、その内容を見ての考察など、まだまだ盛り上がっている模様です。私の中での「あなたの番です」ブームがようやく落ち着きつつあります。
そろそろ、NETFLIXに乗り換えて「全裸監督」を視聴して分析するかもしれません。Huluの扉の向こうとAmazonのバチェラーと比較したら面白いかも!?など、分析者としての興味は尽きません。今後も、身近なブームをツイッターや検索数などから考察していければと思っております。よろしければフォロー頂ければ幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
【note】
https://note.mu/ogataka
【Twitter】
https://twitter.com/dancehakase
【更新情報2024年5月26日】
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