陸上 VS 競泳 = 瞬発力×制御 VS 耐久力×耐久力
陸上短距離と競泳は何が違うんだろう?違いが分かれば適応できるんじゃないか。と、思ったので、元スイマーで現陸上スプリンターの私が自分のために考えてみた。
結論
瞬発力のある体(たい)を繊細にコントロールする心(しん)が必要な陸上と、耐久力のある体をこれまた心の耐久力で固める競泳、という差になりました。
みなさんも「わかってるつもり。でも具体的には取り組めていない課題」とかあると思うのですが、私はたくさんあります。
で、仕事のときとかどうしてたかなぁと思い返すと、フレームワークに当てはめて課題を明確に認識する、という作業をしてたなと。
なので今回も、フレームワークというのは大げさですが、心技体の心と体を軸にマトリクスにして考えてみました。(心技体の技が違うのは言うまでもないので割愛)
ぼんやりとそうだろうなぁと思っていたんですが、はっきり認識できました。
ちなみに私のレベルですが
競泳はインターハイとかいってた。オリンピックは遠かった。
陸上は41歳から現在(45歳)継続中。100m11秒83。45歳としては普通(かな?)。
「体」の違い
では早速、体の違いから説明してみます。
陸上の体
極論すれば、力を入れるのは足が地面に着いてる間=約0.1秒だけです。
この一瞬で大きな力を出せる体が必要です。
もう少し細かく話すと、「伸長反射」という現象を使います。筋肉と腱(アキレス腱など)を急激に伸ばすと反射的に縮もうとして、素早く大きな力が出る現象です。身体全体をバネみたいに使うわけです。これを使わないと、0.1秒で大きな力を、なんてとても間に合わないわけです。
より硬いバネと、硬いバネを一瞬で縮める瞬発的な力が必要なのです。
水泳の体
泳いでる間ずっと、グゥーっと水に力を加える体が必要です。
水はガツンと力をかけるよりも、たくさんの水を巻き込むようにグゥーっと力をかけた方が、よく進みます。
手足が伸びて動いていないような瞬間でも、全身をうねっていたり、水面に落ちる際(バタフライ、平泳ぎの呼吸後など)に上半身をくぼませて推進力を作っていたりします。
とにかくずっと、強い力を発揮しながら動き続ける耐久力が必要なのです。
「心」の違い
陸上の心
体で説明した通り、力を伝える時間は一回0.1秒しかありません。
しかも、100メートルなら50回で終わりです。大体50歩くらいでゴールしてしまうのです。(ボルトは41歩らしい…)
10秒間の勝負ですから、一歩失敗すると最大10秒/50=0.2秒遅れます。致命的です。
一歩0.1秒で瞬発的に力を出す一方で、その力を高効率で推進力に変える、この作業を失敗できません。
全力疾走中の体を、繊細に制御する心が必要なのです。
水泳の心
練習が過酷です。メニューが発表されると泣き崩れる女の子とかいました。
例)
100メートル100本
70秒サイクル
ベストタイムの95%以上で
※100メートル:陸上の400メートルに相当
※70秒サイクル:1本目スタートした70秒後に2本目スタート。以下同様。
※ベストタイムの95%:タイムを5%加算ではなく複雑な計算式があってそれよりもキツイ。
こんな練習を小学校一年生からやってると、そのうち幻覚が見えるようになります。
以下、いろんな人のベストタイム大幅更新体験談。
「スタート台に足が残ったままビョーンと伸びてゴールした」
「視界が真っ赤になるときはベストタイム出る」
「観客全員が何言ってるか同時にハッキリ聞こえた」
ゾーンに入る、なんてまだまだアマチュアです。
そんな過酷な練習を、毎日2回10年以上続ける、そんな心の耐久力が必要なのです。
陸上短距離に適応するには
そういうことなので、元スイマーである私の心と体を、陸上用の心と体に変える、具体的な方向性を考えてみます。
心:まずは、苦痛や違和感があっても耐えてやり過ごす、という態度から、観察して改善するという態度に軌道修正しなければなりません。「オレ耐えた。えらい。」を良しとしない強い意志が必要です。
それから、全力疾走中に自分を客観視して対応する、というのは実際かなり難しそうです。どうも瞑想中のような心理状態で走るのが良さそうです。見るでもなく見ないでもなく、しかしわかっているような感じ。
できるかなぁ…。
体:短い時間で強い力を発揮する、という方向性は問題ありません。そうと決めれば適したトレーニングが色々あります。いや実際習得できる自信が満々ということではなくて、迷うことは少なそうということですが。
問題あるのは、それ以外の時間は力を抜く、というところです。これができないと頑張っても重くてキレの無い動きになってしまう。私これとっても苦手なのですが、競泳現役の頃、つまり10代の頃は一つだけ解決策を持っていました。
「アクセル全開」
アクセルを床まで踏み込んだまま、死んでもゆるめない。これは、以下の二つの効果で結果的に上手く力を抜いているのと大体同じになる、という乱暴な解決策でした。
1.可動範囲全体で同じ努力度(つまりMAX)で力むので、結果力が弱まってしまう範囲がでてくる。
2.どんなに筋肉が硬くなっても「このスピードや負荷に対しては硬さが足りない」、という領域に突っ込むことで、必要な柔らかさがあるのと同じ状態にしてしまう。
45歳の身体では無理なので、実際に走る動作の中で繰り返して神経系を育ててあげるしか無さそうです。
参考
この記事で使ったマトリクスの軸は、私が感覚で設定したものです。
お仕事している人には釈迦に説法ですが、二軸の整理はフレームワークの一番単純な形かつ応用が利くものなので、軸を変えてみたり、自分とライバル、現在の自分と理想像を比較したりなど、色々使えます。
この記事のマトリクスで「課題」とした矢印も、斜め一直線である必要はなく、右(まずは体から)、上(次に心を)と進むなど戦略を考えるのも醍醐味です。
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