絵本・造形作家こしだミカと「ものがたり」
この度、設立10周年を記念して、絵本・造形作家こしだミカさんをお招きし、絵本の読み語りあれこれを、みんなで楽しむイベントを開催いたしました。
大阪府枚方市拠点のアート教室、コロコロキッズアートクラブでは半年かけて、こども達がストーリを考えラフから絵、着彩、文字入れ製本まで手掛けた絵本をカフェで展示する『ものがたり展』を2023年3月開催しておりました。(巡回展は2023年7月20日~開催 まちライブラリーとかとかにて概要はコチラ)
半年間のこどもたちの頑張りを知ったこしだミカさん
「そんなんやったら同じ作家として、私の絵本のラフやダミーも自由に手にとって見てもらって、お互いに同じ作り手として、こども画伯とお話できればいいですね…」と言っていただき、なんと!!
「アリのさんぽ」「ねぬ」「でんきのビリビリ」「ねむろんろん」「ナマコのばあちゃん」のラフやダミー本、スケッチや取材ノートまで!公開していただきました。
絵本がこの世に生み出されるまでの進化の過程に触れられるなんて・・・
作家の生みの苦しみ、作品の根源、秘密レシピみたいなもんですよ!
いやー、ほんと、贅沢ですね、私が一番興奮したかもしれません笑。
さて、絵本イベント開始です。
こしだミカさんが「アリのさんぽ」「ねぬ」架空社の2冊
を、みなさんの前でまず最初に読み語りをしてくださいました。
その後、こしださんから絵本について、説明していただきました。
絵本「アリのさんぽ」の原画はいろいろ勘違いがあって、急遽1か月間で絵を仕上げたこと。
逆に何も考えず集中して絵が描けたので結果的に良かったと感じていること。墨や割りばし、インクなどで描いていること。
「ねぬ」については、ある日鼻歌を歌っていたら、「のねぬ」というワードが下りてきた・・・などなど。
お楽しみの質問タ~イム!!
「みなさん、こしだミカさんに何か質問あれば手をあげてください。
作家さんに直接質問できる機会なんてそうそうないですよ!遠慮なくどうぞです~」と司会の私が言うと、コロコロキッズのMちゃんが早速手をあげました…
Mちゃん
「お話の作り方、考えてもなかなか出てこないです。ぱっとでてくるにはどうすればいいですか?」
絵本作りを経験しているコロコロキッズならではの質問ですね。
こしだミカさん
「私の場合は、好きな絵から先に描いていくことも。アリとか好きなので、ずーっと観察してると描きたくなって、描いた絵を見ながらお話を考えることもあります。身近にあるものや、経験、何かあった出来事から考えていくことが多いですよ。」
次に手をあげたSちゃん
「なんで ねぬ が、この世界にはいっぱいの動物はいるのに、どうして主人公になったのですか?」
こしだミカさん
「ある時、♪おいらはドラマ~♪と鼻歌を歌っていたら、そのリズムの中で、♪おいらは のねぬ~♪っていう言葉が出てきて。
『のねぬ』って誰?と考えてみると、野良犬、野良猫、野良ねぬ…
ねぬっていう生きものが、どっかにいるんやなぁと思ったんです。
でも長いこと、ねぬがどんな顔してるのか、ねぬが何をしたいのか、わからないまま胸の中にあって…20年くらい経ったある日、ねぬの本作らな!と思い立って、作り始めました。
でも実際に絵に描こうと思ったら、ねぬがどんな顔してるのか、わからなくて、何枚も描き続けました。そしてある日…
とうとう『ねぬ』が絵に出てきてくれました、思わず『おはよう』と声をかけました。」
その他、大人からも質問が続きます。
私も画材の質問などして、ふぉーっと脳内メモ♪
読み語りは続きます・・・
『でんきのビリビリの絵本を描くきっかけは3.11の震災です。』
こしだミカさん
「震災をきっかけに、自分はどんだけ電気を使ってるのか、いっぺん描いてみようと思ったのがはじまりでした。家の中の電化製品を描いた後、外へ出て、自動販売機や電信柱を描いていきました。
この絵は近所の電信柱の前で、母からもらったながーい絹の巻物の布を広げて何日か通って描きました。何日目だったか、電信柱の後ろに建ってる家の二階の窓がガラっと開いて、おじさんが(なにジロジロ人の家見てるんやー)という感じで、こっちをジーっと見てきはって。。。
私は内心(いやあの、この電信柱を描こうと思うと、同時にお家も描くことになって、えーとえーと)と思いながら絵の画面を見たり電信柱を見たりしてたんです。
そしたら(もう、しゃあないなぁ)という感じで、おじさんは窓を閉めはりました(笑)。自動販売機も、実物の前で描かせてもらいました」
なので、電信柱や自動販売機は原画も特特大!のようです。
「でんきのビリビリ」はブラティスラヴァ世界絵本原画展で入選され、美術館で原画を展示する際、主催者さんも想定外の大きさだったそうな。笑
ここでも質問があがりました・・・
Kくん:自動販売機の「ぶどうメロンジュース」はどんな味ですか?
こしださん:どんな味やろね〜どんな味やと思う?
Kくん:ぶどうとメロンが混ざった感じの味
こしださん:そうやね〜うんうん、カッパのジュースはどう?
(自動販売機のカッパのジュースを指さしながら)
Kくん:(首をひねる)
こしださん:他にどんな味のジュースがあったらいいと思う?
Kくん:いちごとパイナップルのジュース
こしださん:甘酸っぱい感じやね〜♪ いちご好き?
Kくん:きらい!!(大きな声)
こしださん&会場:笑笑笑
という純朴、素直ならではのやり取りも。笑
ちなみに「でんきのビリビリ」が
他の絵本と違うところ…
登場人物がなんと、
1人も本文に描かれていない!
ダミー本の中では家族の姿がありましたが、描いている途中で、ダミー本を絵の本ひろばの加藤啓子さんに見てもらったら「こしださんの絵本を読む時、子どもたちは絵を読んでるんやから。説明の絵はいらない。こしださんの描きたい絵を描いてください。」
と言ってもらったそう。
そして、こしださんも実は説明のための人物は描きたくないと思っていた。とのこと。
ダミー本に走り書きもありました。
「登場人物がいると、どこかの家族になってしまう」と。
水先案内人はいる、でも人物は本文に描かれていない。
“ 描きたいものだけ、描きたい絵をかく “
わたし、この絵本を過去にも読んだことあったのに、
本文に人物が描かれていないことに気づきませんでした。
自分の脳内で自然と人物を思い描いていたのです。
見返しのお子(水先案内人)から派生するような感じで…
作家さんの意図する通りでした。
読者が想像をふくらませた人・表情で話が進んでいくのですね。
「余白」ということでしょうか。
すごいなー・・・・・
さてさて、ここで途中休憩
こしださん文字「ものがたり」落書きやフリートーク、会場に設置したこしださんの絵本や、こどもたちが作った絵本などを楽しみました。(絵本ができるまでYouTube)
生粋のアーティストのエネルギーを感じてか、キッズの落書きは勢い増し増しでした。笑
それを見て、ちゃかしている私達↓ 笑
さて、休憩の後は
「ねむろんろん」新日本出版社の漁船や大漁旗、さんまの水揚げ、鶴の話など取材の話を聞き・・・
イベントの最後は、
最新作「ナマコのばあちゃん」偕成社の読み語り…
最後に、質問や全体の感想ないですか?と声をかけると
Sちゃん
「ナマコのばあちゃんが一番良かったです」
と、じーんとした表情で感想を伝えていました。
Hくん
「絵本を制作するとき、メインにするものを考えるのはどれくらいかかりますか?」
こしだミカさん
「浜辺でのある出来事がきっかけでナマコって、いったい何者?と興味を持って、ナマコ博士の本川達雄さんの本を読むようになりました。
後に本川先生と出会い、科学絵本『ナマコ天国』の絵を描かせてもらったんですが、知れば知る程ナマコってすごい!ナマコみたいになりたい!と思うようになって(笑)
ナマコを描いている間、自分もナマコになったようなつもりで、海から人間界を見ているような気持ちで描いてました。
『ナマコ天国』の本作りに10年かかったのですが、その最中に、3.11の震災があって…その時の想いが『ナマコのばあちゃん』へと繋がりました。
浜辺でナマコと出会ってから、15年くらい経ってるかなと思います。」
ここで2時間弱、名残り惜しかったですが、私も締めのご挨拶とさせていただきました。
参加者の声・・・
「こしだミカさんとてもステキな方ですね、話し方や声も優しさ、かわいさ、あふれていて大好きです。すごく楽しいイベントでした。これからもまたして頂きたいです。」
「大人になるにつれて生き急いでしまってましたが、こしだミカさんの絵本にふれて、違う視点から毎日をみてみようと思えました。」
「絵本ができるまでの実際のラフスケッチなど貴重なものをたくさん見せていただき、すごく刺激になりました。これからもイベント楽しみにしています。」
「絵本を読んでいただいてた時とても心地良かったです。」
「描きたいものを描く、子どもの頃の気持ちを思い出しました。色彩感覚すばらしく、子どもにとって良い刺激になりました。」
こどもたちの声・・・
「ラフスケッチを見せてくれてありがとうございました。」
「思いのままに描いててすごいなーと思いました。」
「ナマコやねぬなど、思いもしないものが主人公だけどちゃんと物語があって私の想像を膨らませてくれる絵や文が魅力的でした。こしだミカさんの作品に和を感じました。」
「絵本をつくるときの工程や本のラフが見られてとても楽しかったです。」
「今日は貴重な体験をさせていただき有難うございました!こしだミカさんのゆっくりマイペースに進んでいく姿や考えに勇気をもらいました!」
「きょうは来てくださってありがとうございました。」
こしだミカさんからみなさんへの言葉
「こども画伯たちが半年かけて作らはった絵本を『ものがたり展』へ見に行きました。1冊読んだらドキドキしてきて、2冊3冊…どんどん読みたくなって、すべて読ませてもらい、そのあと家に帰ってもしばらくドキドキしていました。その線や色、ものがたりの力強さ、問いかけ・・・どうやったらあんな風に描けるんだろうと刺激をいっぱいもらいました。
私は海でナマコに出会ってから、そのシンプルでストレートな生き方に度肝ぬかれて「ナマコみたいなばあちゃんになりたい」と思ってるんですが(笑)…みなさんもまたいろんな経験を通して、その時その時の自分を表現しながら新しい自分と出会っていってくださいね。」
一瞬、会場がシーーーンとなって、その後大きな拍手が湧きおこりました。
私は特に「ナマコみたいなばあちゃんになりたい」という言葉が深く深く染み入りました。
こしださんの言葉の意図するところは、ぜひ
絵本『ナマコのばあちゃん』偕成社をお手にとっていただき、
みなさまにも想像していただけたら幸いです。
アート講師 緒方 希より
絵本イベント開催は私の長年の夢でありました。
私の小さな頃から側にあった芸術・大好きな絵本、それはこどもの“アート思考”を育む効果もあると考え、5年に1度はこどもたちと半年かけて絵本作りをしています。
そんな時期にぜひ、第一線で活躍されている絵本作家さんの言葉や作品を子どもたちに直接届けたい。心に大きく響くような素敵な経験の場を作りたい。また大人にとっても、作者さんから絵本の背景を伺うことで、もっと深く絵本を知り、多角的に見て感じながら読むことができるのでは…という思いが通じたのか、本当にありがたいことに、ご縁あってこしだミカさんにお越しいただくことができました。
こしださんと打ちあわせを重ねていく度に、最初に提案していた私のプランからどんどん変化し、こしださんの柔軟な発想、なおかつ設立10周年のお祝いの気持ちも込められた数々の嬉しい打診、スタッフからの提案、中高生たちの真摯な働きなどで、みんなで楽しくイベントを作り上げることができました。
私は、人前で話すことが一番苦手なはずなのに、人手が足りず、自分が司会しなければならない、と謎に自分を追い込み(笑)、本番は緊張しまくりましたが、みんなに支えられてなんとか無事「大成功」なイベントになりました。
何をもって大成功と言えるのか。
そこにいた全員が心揺さぶられた。
と確信できたから。
アートの表現や感じ方は十人十色のように、絵本もそれぞれ感じ方が違うと思います。今回、みなさんが発見し、感じたことはすべて正解。その湧き出てきた思いをぜひ大切にしていただきたいです。
「経験は宝」今回の宝が一人一人、私も含め、これからどんなかたちで育まれていくのか、楽しみでなりません。
この度は、こしだミカさんはじめこのイベントにかかわってくださったすべてのみなさま、誠にありがとうございました!!
コロコロキッズアートクラブ 代表
アート講師・リサイクルアーティスト
緒方 希 公式サイト
こども絵本作家40名「ものがたり展」7月 巡回展 開催予定
会期:2023年 7月20日(木)~7月30日(日)まで
会場:まちライブラリーとかとか 公式HP
大阪府枚方市町楠葉1丁目31−2(京阪樟葉駅 徒歩10分)
開館時間:13時~17時 入館自由 Instagram 最新情報
会期中、こどもたちがラフ・ストーリー・絵から製本まで手掛けた絵本を読んでいただけます♪ ラフ案や原画も展示予定。
ぜひ読みにいらしてくださいね!概要
注意事項
・会期中休館日はありません、臨時休館の場合SNSにてお知らせ予定
・駐車場はございません。近隣のコインパーキングをご利用ください。
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