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「本当はみんな表現に興味があると信じている」(TAKRAM 渡邉康太郎さん)
ポッドキャスト「超相対性理論」の少し前に公開された回がおもしろかったので紹介します。
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」が昨年ヒットした、文芸評論家の三宅香帆さんがゲストでした。
働きながら「ノイズ」を取り入れる方法というテーマで始まり、「競争と表現のバランス」、「社会や組織に自分の表現を乗せられるか」、「本を読むことが仕事に役立つことは、目的なのか効能なのか」など、自分の興味の真ん中に近い内容で、全4話の放送を繰り返して2周も聞いてしまいました。
特に、第3話の中の、以下の三宅香帆さんと渡邉康太郎さんの問答が良かったです。
バズる発信方法や、仕事の役に立つ読書などを重視する「競争」の価値観が世間に蔓延していることに対して、(役に立たなくても)個別性を持った表現のたいせつさを伝えたい三宅さん。それに対して、「本当はみんな、表現に興味があると信じている」と返答する渡邉さんのやり取りです。
<三宅香帆>
そんな風に世間は競争が好きらしいが⋯⋯ 「競争ばっかりで、本当に人は幸せになれるんだっけ?」みたいなことを、けっこういつも考えていて。でも、なんかそれを。例えばそれこそビジネスパーソンの方とか、ある程度、競争の中をがんばって生きている人に、どうすれば伝わるんだろう、というのをけっこうやっぱり考えているんですよね。その一環として、例えば「働いていると本が読めないって良かったんだっけ?」みたいな問いかけをするとか。文章の書き方を伝えるとか。そういう活動をしているんですが。やっぱりその表現とかノイズの個別性みたいなものが、個人的には伝わりずらく感じるんですけど。渡邉さんとかはあんまり感じることはないですか?
<渡邉康太郎>
個別性の大事さを、いかに競争寄りの人に伝えられるのだろうか⋯⋯
<三宅香帆>
そうですね。とか、伝わりづらいと思うことはありますか?
<渡邉康太郎>
ありますね。ま、たしかにあるんだけど⋯⋯ でもなんていうか、蓋を開ければ究極的にはみんなそれが好きとも信じている。公の自分というか、例えばビジネスパーソンとしての自分は、どうしても競争の語彙をしゃべっている。けれども、本当はみんな表現に興味があるのだと信じている。から、あらゆる人が自分の分人の中でせめぎ合っていて。で、表現だけに体重を乗せて語ることができない。少なくとも、9時から5時はその話ができないってなっている人に「いや、話しちゃっても良いじゃん」っていうような、表現を肯定するような論みたいなのを渡したいねっていう思いはありますね。
<三宅香帆>
例えばなんかその会社の中で、ちょっとした仕事に自己表現を忍ばせるみたいなのが、私自身はすごい好きなんですけど。やっぱり社会に出ると「そういうのって要らないから」っていう風にバッサリ切られるなっていうのも、一方ではすごく感じていたりするんですよね。でもやっぱり、本当はみんなやりたいのかな⋯⋯
<渡邉康太郎>
やりたいし。少なくとも無意識的にやっちゃっているのかなと勝手に想像するんだが。どうなんだろう⋯⋯
※太字は筆者
三宅さんの問題定義には共感します。実際に多くの人が、情報をインプットするときに、「役に立つもの」「効果があるもの」を優先していて、「何の役に立つか分からないノイズ的なもの」は後回しにしている風潮はあると思います。
自分自身もまさにそうです。本も、仕事(競争)に役立つビジネス書は優先して読むけど、直接的に役に立たなそうな本はなかなか手にとらない。(時間を捻出できない)
でも。渡邉さんがその後で言ってくれているように、様々な理由で、表現に興味はあるけど、表現だけに体重を乗せて語ることができない。という弁解のような言い訳のような思いが、自分の中にもあります。
「競争だけしたいわけじゃないんだよー。もっと、自由に興味の赴くままに本も読みたいし、自分らしい表現したいんだよー。でも、なかなかそういうわけにもいかんのよー」という嘆きです。この葛藤は働きはじめてからずっとあります。
そういう欲求がある中、最近では、日中の仕事と少し距離を置いて、朝や夜にnoteとpodcastで遊びながら表現の試行錯誤しているような気がします。
日中にやっている仕事も好きだし、仕事自体が自分の表現欲求の発露でもあります。とはいえ、たくさんの分人がいる中で、仕事という枠組みの中では解放できない分人もいて、それは発露される場所を求めているとも感じます。
また、仕事に直接的に関係のない本を読むというのは、なかなか自分にとってはハードルが高いけど、ポッドキャストという媒体は、インプットのハードルが低くて、仕事に直接の役には立たなくても、自分の欲求を満たしてくれる番組を気軽に聞くことができています。聞くことで刺激を受けて、こうやってnoteで紹介をするのも自分の表現になって、インプットとアウトプットの良い循環が生まれています。
ちなみに、podcastの中でも、渡邉康太郎さんがホストをつとめるTAKRAM RADIOはかなり好きなんですけど、渡邉さんの以下の思いが番組の端々ににじみ出ているからなのかもしれないと思いました。
本当はみんな表現に興味があるのだと信じている。から、あらゆる人が自分の分人の中でせめぎ合っていて。で、表現だけに体重を乗せて語ることができない。少なくとも、9時から5時はその話ができないってなっている人に「いや、話しちゃっても良いじゃん」っていうような、表現を肯定するような論みたいなのを渡したいねっていう思いはありますね。
自分も、自分なりに誰かの個別的な表現欲求を解放したり、後押しをするようなことを、ちょっとずつでもやっていきたいと思っています。
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![小笠原 隼人](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86256144/profile_df9b2e4da1afde616450bafd83ce16b5.jpg?width=600&crop=1:1,smart)