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公職選挙法、めちゃ分かりづらい。自分も公選法違反をしていたかもしれない怖さ。
昨日から、斎藤元彦知事の広報全般を請け負ったというPR会社社長の投稿で、各所が大荒れとなっているようですが、私はすこしPR会社社長に同情的です。
なぜなら、自分が同じような間違いを犯していた可能性もあったと思うからです。
今回、批判されている論点は主に2つと思います。
(1)本来、黒子であるはずのPRのプロが、自社の利益のため、選挙活動の舞台裏を、クライアントに事前確認せず公開してしまった。
(2)公職選挙法に抵触する疑いの強い、買収行為(有償でのSNS戦略の立案や運用)を行っていた。
私が同情的に思うのは主に(2)に関してです。
SNSなどを見ていると「こんな公職選挙法にひっかかるような行為をするなんて、信じられない」という論調の意見が多くありました。しかし、「どれだけの人が、この行為が違法だって知っていたでしょうか?」とも思います。
「PRのプロなんだから、知っていて当然でしょ」という意見もあるかもしれません。ただ、地方で数名でやっているPR会社なら、今回、問題となっている公選法の規定について、知らない会社の方が多いんじゃないかな。と思います。
ポスター作成などを有償で請け負うのはOKだけど、SNS戦略を立案するのはNG。とか、そういった合法・違法のラインの知識って、選挙への興味が強くなければ持つ機会がないのではと思います。地方のPR会社が、日常業務で、選挙の広報戦略を担うことも、めったにないでしょうし。
また、個人的に、同情するのは、自分もこの規定を犯して違法行為をする可能性がぜんぜんあったな。と思ったからです。
とても小規模ですが、弊社も、地域内で広告物の制作や広報戦略立案などを業務として行っています。
そして、いくつかの選挙ポスターの制作を、有償で請け負ってきました。
さらに、いくつかの選挙PR戦略のアドバイスを、無償で請け負ってきました。(アドバイスと言えないような雑談などもありますが)
この、有償・無償の区分けを、公職選挙法をくまなく理解して引き受けていたかというとそんなことはなく、基本的には「知っている人からやって欲しいと頼まれ、協力したいと思えるときには、お手伝いしている」という感じです。
運良く(?)やったことはありませんが、PR戦略の立案・運用を、有償で引き受けて欲しいと頼まれて、その立候補者の力になりたいと思ったら、引き受けていた可能性はおおいにあります。
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公職選挙法の分かりにくさ・複雑さがあることで、今後も、「感覚的にはOKだと思ってたけど、法的にはNGだった」みたいな事故が起こってしまうと思います。
選挙は、国会議員選挙や知事選挙だけでなく、人口数百人の村議会議員選挙もあります。
実績もお金もなく、志ひとつで政治の世界に足を踏み出そうとする人が、デザイナーやマーケティングに長けた友人に「力を貸して」と声をかけて、潤沢ではない予算から、少しの謝金を支払う。
そんなこともぜんぜん起こりえるでしょう。
政治の外の世界から来た新米候補者や、フリーのデザイナーやSNSコンサルのような人、一人ひとりが公職選挙法を正しく理解して、選挙に関する業務の受発注をする、というのはなかなか難易度が高いです。
初心者が引っかかりやすそうな、やって良いことと悪いことの境界を、明快でわかりやすく解説した特設ページを国がつくる、ということを、ぜひやってもらいたいです。
また、そもそも、今回、問題となっているような公職選挙法の規定は、時代に合っていないようにも思うので、ぜひ、法整備も検討して欲しいです。
以下の日テレNEWS記事のコメントはかなり驚きでした。これがもし、書かれている通り、ポスターのデザイン提案も許されないような法律なのであれば、法律を変えなければならないと思います。(そもそもこの解釈が本当に合っているか要確認ですが)
瀧口麻衣アナウンサー
「では、選挙ポスターをつくる時に印刷会社にお願いするというのは大丈夫なのでしょうか?」
山崎アナウンサー
「その場合、もうデザインが決まっていて、これで印刷をお願いしますという場合にはOKです。ただ、こういうデザインの方が選挙運動的にいいんじゃないですかと印刷会社が企画の提案をしたとしたら、その候補者が有利になるように選挙運動を行ったことになるので、それはNGだということです。つまり、機械的な作業だったらこの選挙運動の費用として認められますが、企画するなど主体的にやった場合は選挙運動にあたるということです」
弊社で過去に制作した選挙ポスターは、依頼者のオーダー通りに作りましたが、「こういうデザインの方が良いんじゃないですか」と、提案する可能性は多いにありました。
国政選挙期間中に流れている各政党のテレビCMとか、代理店や制作会社がちゃんと予算もらって、クリエイティブ・ディレクターがしっかり企画提案して制作していると思ってたんですけど、どういう風に法律をクリアしているんでしょうか。
そういう、分からないことがいろいろあります。
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<参考記事>
そもそも、よく名前を聞く「選挙参謀」とか「選挙コンサルタント」のような職業は、存在自体がNGにならないのか? と気になって検索したら、以下の記事が参考になったので貼っておきます。(2019年の記事です)
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