ゴーストバスターズは突然に
明日の朝ごはんを買いにスーパーへ来た。今までは出勤途中のコンビニでサンドイッチを買い、職場でもそもそ食べていた。しかし、朝一番に職場で腹ごしらえというのはなんだか出遅れている感じがしていたので、よし明日から朝ごはんは家で食べよう!と気まぐれに決心したのだ。コーヒーに合う朝ごはんをイメージして、パンと卵とベーコンを買う。スライスチーズと苺ジャムも買っておこう。ヨーグルトに手を伸ばしかけて、やめた。コーヒーを淹れて、トーストとベーコンエッグを焼き、ヨーグルトを器に盛る時間などあるのだろうか。朝ごはんを家で食べつつ出勤時間を変えないためには、早起きをしなければならない。しばし逡巡し、牛乳とシリアルを買った。何事にもプランBが必要なのだ。
お菓子売り場をうろついていると、ふいにあるメロディーが耳に飛び込んできた。店内スピーカーから流れる陽気でねちっこいその曲は、ゴーストバスターズのテーマであった。間抜けな困り顔をしたゴーストのロゴを思い浮かべながらお菓子を物色していると、店員が早足で私の脇をすり抜け、レジのある方へ向かっていった。なるほど、ゴーストバスターズは何かの合図であったらしい。レジ応援か、雨降りか、はたまた万引きの類だろうか。レジの方を見やったが、何が起きているのかはよくわからない。ゴーストバスターズが終わると、もとのボサノヴァ調のピアノ音楽に戻り、私は会計を済まして帰宅した。
ゴーストバスターズが何を意味するのかは分からずじまいであったが、ゴーストバスターズのテーマが何かを暗示するということ自体がなんだか可笑しかった。私も今やこの曲を聴くと、ああゴーストバスターズね、はいはい、といった風に身を翻す店員たちを妄想し、彼らが何をするのか気になって仕方がない。きっと取るに足らない業務なのだろう。いや、そうであってほしい。ゴーストバスターズのテーマが彼らの心を憂鬱にする暗示でないことを切に願う。