かなしさにまけない(日記88)
稲光が轟くほんの10分前くらいに、わたしは、さめざめと、小さく泣いていた。
今日の就労移行支援での出来事。
昨日、実習の相談に行って、いくつか実習先を提案して頂いたのだけれども、そのときに、過去のことについても、たくさん質問された。
お渡しした職務経歴書と履歴書を見ながら、転職回数の多いわたしは(全部で9社もある)、ひとつひとつの仕事について、質問されたことに、答えていった。
担当の方はさっぱりとした、とてもいい方で、話しながら、この方に相談に乗っていただけるのは、ありがたいことだなあと、思っていた。
話の中で、「家族の理解」について、質問された。
障害者雇用をしている会社のなかには、本人の障害について、家族から理解を得られているかどうかを、確かめる場合がある。
それは、もし調子が悪くなったときに、適切な援助を受けられる体制が整っているかどうか、ということの、指標のひとつなのだと思う。
わたしは、正直に、答えた。
家族の理解は、得られていません。こころの病に理解のある親ではなかったし、病院に通うことも、「そんなものは必要ない」と、言われていました。だから自立してから、自分で通院をして、今があります。
担当の方は、そうですか、と、言ってくださった。
昨日、面談を終えたときは、なんともなかった。
家族の話をしたことなんて、忘れていたくらいだった。
でも、今朝、起きたらなんだか、とっても疲れていた。
疲れて疲れて、どうしようもなかった。
でも、休みたくなかった。
せっかく休まず通えるようになったのだし、ここで休んだら、自分で自分にがっかりしちゃう、と、思った。
同居人氏1と他愛ない話をしているうちに気分も回復してきていたし、予定どおり、通所した。
1コマ目のプログラム。
今日は軽作業の日だった。
作業をはじめるとすぐ、家族のことが頭にチラついた。
なんで?と思って、作業に没頭しようとした。
でもなぜか、できなかった。
何度拭っても拭っても、同じことばが頭を駆け巡る。
昨日、自分が、自分の口で言ったことば。
何度も何度も、頭の中でループする。
止められなくて、またあたらしいことばを、つれてくる。
わたしが今がんばっているのは、お母さんに振り向いてもらうためじゃない。
自立して、きちんと社会で生きていくために、仕事をしたくて、訓練をがんばっている。
お母さんのためじゃないのに、お母さんのことは今と関係がないのに、今日はどうしても、この考えのループから、ずっと自分を苦しめてきたループから、いくら欲しがっても振り向いてもらえないというかなしみのループから、抜け出すことが、できなかった。
1時間は作業をがんばったけれども、どうしてもつらくて、ああ、今日はだめな日なんだ、明日休まず通所するためにも、今日は早退しようと思って、支援員さんに、声をかけた。
支援員さんに、早退させてほしいこと、昨日の面談で家族の理解の話になったときに、理解が得られないことを話して辛くなってしまったことを口にしていたら、泣くつもりなんてなかったのに、涙がぼろぼろ、ぼろぼろ、溢れて止まらなくなった。
涙と一緒に、
わたし、がんばれてますか?
と、絞り出すように、支援員さんに問いかけている自分がいた。
支援員さんは、
がんばってますよ、すごくがんばっているの、わかってますよ。ご家族のことも、自分で考えて、距離を保って、自立した生活をしながら、ご家族とご旅行にも行ったりして、理解されないからと言って無視するわけではなく、はじめさんなりに働きかけをしていること、すごいことだと思います。
がんばっていることは、無駄じゃないですよ。
いつか親御さんが他界されて、ひとりで生きていくときに、ちゃんと自立した生活を保てるように、そういう人生のために、仕事をしたいと思って、今がんばってるわけですから。
無駄じゃないですよ。
と、言ってくれた。
でも、と付け加えて、
この先、面接でご家族のことを聞かれることは、避けて通れないことだと思います。
そのときに、また、今日みたいな苦しい気持ちになってしまったときに、どう対処するか、今のうちから備えておけるといいですね。
と、言った。
今までは、一度つらいきもちのふたがあいてしまうと、暴れ回って、ふたを閉じることも、見ないふりをすることも、気を紛らわすことも、できなかった。
ただただ、かなしさの嵐が、さみしさの嵐が、吹き荒れるのをじっと耐えて、過ぎ去ることを、待つしかなかった。
でも、もうわたしは、あのときのわたしじゃないはずだ。
今のわたしは、あのときのわたしと、ちがうはずなんだ。
今はまだ、かなしいけれど、かなしくてつらいけれど、わたしには、積み重ねてきた日々がある。
泣いてもいいし、つらくてもいい。
でも、負けない。
この嵐に、負けたくない。
今日までこつこつ、やってきたんだもの。
明日からもこつこつ、やっていくんだもの。
忘れたくないから、ここに書いておく。
いつかまた、かなしくてつらくなったときに、見返せるように、文字に託して、残しておく。
わたしは、負けたくないって、思ったよ。
負けたくないって思えたんだよ。
だから、大丈夫。
きっと、大丈夫だよ。
投げ銭?みたいなことなのかな? お金をこの池になげると、わたしがちょっとおいしい牛乳を飲めます。ありがたーい