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実録:お店づくり(2)お金のない個人事業主の出店戦略-前編-

先週に毎週火曜日に「実録:お店づくりマガジン」の毎週火曜更新を宣言してしまい、あっという間に一週間がたって焦っています。。。ヤバイ、全然工事が進んでない。

このペースで更新すると今の工事の段階だと後2-3回で追いつくので、今週からは無理やりスケジュールに工事日程をぶち込みました。ケツの導火線に火を点ける、ってやつです。

前回、物の売れない時代の僕らの事業構想の話をしまして、本当はもうすこしコアな事業のディティールの話とか、共同経営者の話とかもするべきなのだけれど、それは追々書くことにします。

今回は一歩進めて、事業構想を固めた先の話。

じゃあ実際に箱を作ろうぜ!ってなった時の、物件の探し方と決め方のことをお話ししましょう。


小さく始めて大きく育てる

まず、前提として物販店だろうが飲食店だろうが、出店してからファンづくりをスタートさせるのは無謀すぎます。ファンができる前に資金が尽きる可能性もある。

今の時代、ポップアップやイベント出店やEC出店などの簡易出店のハードルはかなり低いです。

楽々出店できるので数も多くファンづくりは大変だしコツも必要ですが、まずはそこで回数を重ねてリサーチ&ファンづくりの土台を作る。

小さく始めて大きく育てる、これが個人店での出店戦略の基本です。


リアル店舗を出すとなると不動産を賃借するか買うわけです。不動産は文字通り動けない資産なので、基本的にはその場所にきてもらうしか集客方法がない。

おまけに、一度出店したら契約条件にもよりますが簡単には撤退できない。

かといって、契約を更新したくても断られたり、ビルごと建替で退店する事になったり、何かとリスクが付きまといます。

それらも踏まえた上で、1番のリスクヘッジになるのは無店舗経営時代のファンの存在です。リアル店舗のOPENにこぎ着けた先で予想外の事態になり、たとえお店がなくなって無店舗経営に戻ったとしても、また来てもらえるのかどうか。。。

立地ではなくブランドそのものについてくれるファンの存在の有無は、これからの店舗運営での最重要資源だと思います。




土地の特性と条件を理解する

次に大事なのが出店する場所です。

ただ、これは一等地であればいいという単純な話ではなく、その土地(街と出店場所)の特性と自分の出す店舗の特性に相乗効果があるのか?という点が重要です。

まず、大きく見てください。出店する場所を空の上から見ている感じで街を広く見て、お店を出すのはどんな街でしょうか?

街にはそれぞれ、その街の色があります。いくつもの出店を成功させている人は、その街の色を見るのが上手です。

そして、街の色は季節や時間によっても変わります。


具体的には、大手企業のオフィスビルがあるならば平日のランチタイム需要は高くディナータイムの人出も多い。反面、土日は人が少なくいきなり落ち着いた雰囲気になる。

こういう場合は当然ですがデイリー需要のコスパが良くて回転の良いランチと、歓送迎会まで対応できる貸切20名程度の小箱ディナー、もしくは会社帰りに軽く飲めるビストロや立ち飲みなんかはニーズがあるでしょう。

まぁ、ここまでわかりやすい例っていうのはそうそうないですが。


本当なら出店する街に1年くらい住んでみるのがベストです。でも、リサーチのために毎回引っ越して行くのも効率が悪いですよね。

だから、僕の場合は街の駅前の喫茶店などで街の様子を観察しながら眺めていたり、自転車や徒歩で街を歩き回って買い物をしてみたりします。

居酒屋を出す場合は実際に飲み歩いてみたり、お客さん目線で過ごしてみると色々と見えて来ると思います。基本ですが、基本なのにやらない人が結構多いので、こういう地道なところをコツコツやっておくのがあとあと効いてきます。



店舗のテロワールを考える

ワインの用語でテロワールという言葉があります。

これは、ワイン造りのブドウがその土地の環境や気候風土などの影響を受けて、その土地固有の性格を帯びることや、その帯びた性格そのものを言います。

この考え方は店舗でも同じで、出店する場所ごとにその場所の持つ個性をいかに取り込んで上手に表現できるのかが重要です。


僕は設計をする際に、店舗のテロワールとでもいうべき場の持つ力を引き出すことを意識してます。

数百店舗を設計した今でも、まだこの感覚を上手に説明できないのですが、うまく店舗のテロワールを引き出すことで居心地がよく来店率の高いお店づくりができると感じています。

それは刻々と変化する日当たりであったり、近隣の店舗や住居などとの関係性であったり、駅などからのアクセスの際のお店の見え方であったりします。

これは実際に駅から出店候補地まで歩いてみる、周辺を散策してみる、などの脚を使って体験しないとわからないことが多いです。


狙うのは地元に根付いた小さい不動産屋さん

さて、それではいよいよ実践です。

出店を検討する時はまずいくつか候補の街を出すと思います。これは、なるべく自分が土地勘の効くところにしたほうがいいです。

なぜなら、そのほうが家賃の相場感も掴みやすいし、地元の大家さんなどを説得しやすいからです。

次に、狙うべき候補の駅がいくつか定まったら、今度は不動産屋さんへ行きます。

この時、ネットで調べるのは正直アテになりません。というか使えません。


不動産業者の中にはサブリース業者というのもいまして、いい賃貸物件を家賃保証をして大家さんから借り上げて、そこに手数料を載せてまた貸しするという事業をしている会社があります。

で、借り手のつきやすい立地の良さや、扱いやすい区画割の物件ほど、このリース業者が最速で見つけて抑えています。当然、手数料が載るので家賃は割高です。

資本のある出店ならいざ知らず、個人でこの手のリース物件に手を出すのは負担が大きいのでオススメしません。


また、ほとんどの物件情報はレインズという不動産情報管理システムで共有されています。このレインズに登録済みの物件=会員不動産会社ではみんな閲覧可能なので、ほとんどの不動産屋さんはこの情報は共有しているわけです。

つまり、レインズに情報が載っている時点で競合多数。いい物件は既にない確率が高いのです。


だからこそ、狙うべきは川上です。

一番いいのは大家さんからの直貸しですが、個人間での不動産の賃貸借契約は嫌がる大家さんもいるので、なるべく地元の不動産屋さんで大家さんとコネのあるところが持っている出始めの物件を狙うのがコツです。




不動産の儲けのカラクリ、両手と片手

また、不動産は情報手数料商売なので、大家さんが貸したい依頼を出した不動産屋さんAと、実際に貸し出す不動産屋さんBが別の会社の場合があります。

これを不動産用語で「片手」と言います。

貸し出す人の手数料 → 不動産会社A
借りる人の手数料 → 不動産会社B

でも、これを一社で大家さんと借主さんを抱えると、手数料が2倍になりますね。これを「両手」と言います。

貸し出す人の手数料 → 不動産会社A
借りる人の手数料 → 不動産会社A

もう分かったと思いますが、狙うのは両手の物件です。なぜなら、手数料が2倍の物件なので不動産屋さんが値引きに応じてくれやすいのです。

特に地場の小さな不動産屋さんほど、この両手物件を隠し持っていることが多いです。そしてそれをオススメしてきます。

とはいえ、小さい不動産屋さんほど取扱物件数は少ないので、なかなか良い物件に出会える確率は低いのも現実。

ここはもう、腰を据えて良い不動産屋さんを見つけて数ヶ月ごとに聞き込みに行くのが良いでしょう。その為にも、出店は焦らず、冒頭のファンづくりと並行してじっくり見定めるのが重要です。


さて、次は狙いの物件を見つけたらの家賃交渉のコツ・・・と思ったのですが、ちょっと長くなったので来週にしましょう。

OFFRECOではこういった店舗の出店リサーチから一緒に動くこともしています。色々と相談に乗れますので、お店を出したいと思っている方は、勇み足でいきなりハードモードに突っ込まずに一度ご相談いただけるとお力になれるかもしれません。


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