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飲食店は学割をするべき?しないべき?

まだ22歳の頃、当時のデザイン学校の先生が授業の終わった後によく飲みに連れて行ってくれた。

一時期は教える側に回っていたこともあるからわかるのだけれど、講師といっても講師料はほぼ時給数千円がいいところだ。つまり1コマ90分でも15000円〜30000円程度。

この報酬金額で、学生10人くらいに居酒屋で奢ればどうなるか?赤字である。

さらに、1次会では終わらずに2〜3次会と飲むことも多かった。

翌日も朝から授業はあるので多くは脱落していくが、僕はしぶとく居座って飲んでいた。


そんなある日、3人ほどの学生が残った時に青山のかなり格の高いワインバーへと連れて行ってもらったことがある。

そこで生まれて初めて、1級シャトーと呼ばれる高級ワインを飲ませてもらった。シャトー・ラトゥール。塔のイラストがラベルに描かれた、ボルドーワインの最高峰の一角である。

おそらく、15年前でもワインバーで頼めば1本15万円〜20万円くらいはしたはずだ。グラス1杯が3万円...なぜ、学生にそんな良いものをご馳走してくれたのか、当時は全然わからなかった。

そしてあれから15年ほどたち、ようやくあの時のご馳走してくれていた先生の気持ちが少し分かった気がしている。

アレはおそらく、未来ある若者への投資であり、本物を作るべきデザイナーのたまごに対して本物を体験させるパトロン意識だったのだろう。


飲食店は学割をするべきなのか?

今、僕は吉祥寺の小さなお店のオーナーをしている。自分でお店に立つこともある。

そんな中で、心のどこかに常にあの頃に受けた恩を次世代へと返していきたい気持ちもある。

だからいつも葛藤する。20代、まだお金の自由度が少ない頃に、いいものを体験させてあげたい。薄利でも、原価でもいいからそういう機会をつくるべきなんじゃないか?

しかし、同時にこうも思う。本来の価格を払わずに手に入れた経験に、ちゃんと重みはあるのか?

自己満足な自己犠牲の安売りは、同業他社への営業妨害にしかならず、結局はフリーライダー的な体験をさせて若者の自立心まで奪うだけなんじゃないか?

思うところはある。悩んでもいる。正直、まだ答えが出ていない。

20代新卒、僕の初任給は手取りで18万円ほどだった。一人暮らしをして家賃で6〜8万円、携帯やらなにやらで可処分所得はさぼと残らない。

そんな懐事情で、居酒屋の5000円は高いと思ってしまう気持ちはわかる。僕もかつてはそっちだったから。

だから、手っ取り早く酔えるハイアルコール飲料に手が伸びる気持ちもわかる。

テキーラのショット3杯ぶんほどのアルコールを、200円ちょっとで喉越しよく飲めるドーピングのようなチューハイが売筋らしい。

そんな話を聞くと、文化としてのお酒を教えてくれた先輩たちのことを思い、酔うためだけじゃないお酒の楽しみ方を教える人がもっといないとダメなんじゃないか?とも思う。そんな時にGEM by motoの千葉さんの発言を見た。

学割とかないかな?という問いに対して、本当に来たかったらお金貯めて来てください。という答えはとても真摯だ。

なぜなら、僕らお店は生産者さんから食材やお酒を預かる立場でもある。お店が安売りをした先にあるのは、美味しいものを届けたいとがんばる生産者さんだったりする。

結局、いろいろな方向をちゃんと見ようとするほどに、単純な安売りはダメだという結論に近づいていく。

では、どんな仕組みならこの問題に解決の糸口を見出せるのだろうか?単純な安売りではない、でもエントリーユーザーにちゃんと好奇心の種を植えられるような、そんな方法はないかもう少し考えてみる。

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