プロは体が道具になる
この前、お仕事をご一緒している渋谷Niruの佐保さんご夫婦(Niruの佐保さん、cakesの榎本さん)と打ち合わせ兼ねてゴハンへ行ってきたんですね。
そこで、なんてことない時に「シェフは指3本で1グラムが基本」っていう話になったんです。料理人は味がブレないように親指、人差し指、中指の三本指でつまんだ時に塩1グラムになるそうです。
こういうプロならではの身体感覚っておもしろいですよね。ソムリエさんなら人数分のワイングラスに750mlのフルボトルから均等に注ぐとかもできます。
通常はボトルから6杯取り=125mlですけど、お客さんがボトルで注文して5人でシェアなら150mlです。いつもより25mlずつ余分に注がないといけないって難易度高そうですよね。アレも日頃から何万杯と注いできた経験の妙なのでしょう。
同じように、僕ら設計者もヒューマンスケールと言ってだいたいの人体の寸法を押さえています。例えば僕の場合、右手を開いた時の親指の端から小指の端までで200mm。立った状態で肘を曲げると床からちょうど1000mmとか。
それ以外にもだいたい座れば椅子の座高、テーブルの天板の高さもわかります。今までに数限りなく計測することで覚えているのです。
人体の構造やおおよその寸法は個体差や偏差はあれど数千年大差がなく、いきなり身長5mとかにはならないですからね。覚えておいて損はない。
余談ですが、空間設計をする僕らの仕事の単位はmmです。一般的にはcmなんですけど、仕事柄5mm足りなくて入らないとか、隙間が空きすぎるとか、そういうことが普通にあるんです。
なので、僕の日常生活では1m=100cmよりも、1m=1000mmという感覚のほうが強いです。これはもう、職業柄そうなっちゃうヤツですね。
計測と計量こそ上達への近道
以前、仕事で設計しているレストランのシェフに「どうしたら料理が上手になりますか?」って聞いたんです。
その時「初心者ならとにかく計量しなさい」と言われました。計量して、手順通りに作って、基本形をちゃんと覚えなさい、と。
いわく、手順を守って計量さえちゃんとすれば、まず味が間違えることはないらしいです。いきなりアレンジとか、目分量とか、それをやると基準ができずに永遠に再現性のないマグレ当たり頼りになるよ、と。
なるほど、料理なんかは特にそうですよね。自分の体が道具の延長としてほぼ正確な軽量ができるようになれば違うかもしれませんが、そこにいくまではやはり大量に計測・計量を繰り返してきたのでしょう。
そうはいっても自分は料理人でもないし、デザイナーでもないし、設計者でもない。日常で計測や計量するものなんて全然ない。そう思いましたか?
noteを書いている人、読んでいる人ならおなじみのこの文字。これだって計量可能です。
ここまでで何文字でしょうか?(正解は1000文字です)
ここまでに何回、句読点がありましたか?(正解は54個)
ここまでに改行は何回したでしょうか?(正解は17回、多段改行除く)
だいたい1000文字で50数回の句読点で改行が17回くらいだと、これくらいのリズム感の文章ってことですね。
自分の文章と、読みやすいなと思った人の文章、その文章量や句読点の数や改行数なんかを測ってみると、色々気づくかもしれませんよ。
もちろん、文章以外にも数字で測れるものって世の中にはたくさんあります。
数字を測ってデータをとる、つまり変化を記録して法則性や関係性を見出していくっていうのは、みんな小学校の理科なんかでやってることなんですよ。これ、仕事したり生きていく上で実はすごい役立つ技能です。
気になるものを調べる、測る、記録する。
これを習慣づけるだけで、プロに一歩近づけますよ。
すべての正確な仕事は「計量」がキモです。
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