お店づくりの現地調査、そして基本設計
少し更新間隔あいてしまいましたが、そうこうしているとお店づくりは佳境に突入!今、まさに施工まっさい中です。
そこらへんのダイナミックなおもしろさをどうにかお伝えしたいので、ちょっと巻き気味で今月末にかけて何本か書いていきますね。
前回、お店づくりってめっちゃお金かかるじゃん!というお話をしました。
こういうざっくりの予算は出店計画の時点で書き出して計算するんですけどね。まぁ、ここから実際に見積りをとってみると、だいたい予算をオーバーします。
そんなこんなもありつつ、お店づくりがどう進むのかというと...
リアル店舗のできるまで
1.出店の計画をする
2.立地が決まって不動産契約
3.予算を練って融資を申請する
4.並行して図面を進める
5.図面で工事の見積りをとる
6.融資が降りたら工事を依頼する
7.保健所や諸官庁への届出など
8.工事が終わってお店の引渡し
9.諸官庁検査(保健所など)
10.営業許可が下りる
11.備品類を準備して...
12.開店!
はい、長い!やること多い!
実際はこの合間にプロモーション関係(WEBやリリースやSNSアカウント作ったり)もやりつつ、アルバイトや社員採用なんかも進めつつ、試作をしたりもします。激務!
おまけに工事をDIYとか入れたりすると、本当に恐ろしいブラック企業っぷりです。漆黒すぎてもはやツヤすら見えない。
僕も現場で一緒にクライアントさんとDIY塗装や大工仕事をして、現場でそのまま仮眠...みたいなことをした事もあります。これ、怪我や事故の元なのでなるべく避けなきゃなヤツですが、まぁ若かったし無理もできた(最近はしないよ!)
というわけで、今日は上の表の2〜4あたりのお話です。
なにはともあれ現地調査
まず、リアル店舗の肝は「立地」です。
こればっかりは本当に現地に行ってウロウロして空気感を感じるのが大事です。
動きながら通行人や車からの視線がどう動くのか、地元の競合店はどうなのか、マーケットの規模に対して商圏人口は実際にどんな感じなのか?などの要素を現地に行って見てみるしかない。
僕の尊敬するある店舗デザイナーさんは、出店予定地の調査に行く時は、現地の喫茶店に行ってぼーっと通行人をながめてみるそうです。
そうすると、例えば子育て世代の親子の数から何となくオフィスワーカーが帰り道で寄ってくれるかも?とか、ご高齢のご夫婦の買い物客が多いなら日中でアクセスしやすい時間帯を、などの要素が見えてくるんですね。
あとは、現地の区画そのもの。
まず、僕ら設計者は現地に行ったら全ての寸法を計測し、設備周りをチェックします。
電気容量は足りるのか?足りないなら増やす余裕はありそうなのか?
給排水の位置は?排水の位置によって厨房の位置、トイレの位置などが制限を受けるので、設備によってレイアウトの自由度がだいぶ左右されます。
空調換気のルートはどうか?屋上まで排気ダクトをあげる必要があると、当然コストはかさみます。空調機の吊り込みもドレン排水の勾配を考えて無理のないレイアウトができるかなどを見ます。
看板の電源ルートはどうなっているのか?各種メーター類の位置、防災設備などのビル側の工事はちゃんとできているのか?
ここら辺は本当にプロじゃないとわからないところなので、出店時は物件の契約前に絶対に設計者立会いで確認をしてもらってください。
ごくまれに出店計画地をほぼ決めて相談に来られる場合もありますが、そもそも業態と内容に対して合っていない&コストが高くなる場所を選ばれている場合もあります。
また、物件契約前であれば家賃交渉や、基礎的な設備を大家さん負担で入れてもらう交渉などもできますが、契約後だと手が出せないことが多いのです。
できるならば、出店リサーチからお手伝いできると悲劇を防げる確率が上がります。
今回も、不動産契約前に何件かご一緒に回って現地を計測して、厨房機器や設備的に問題がないかをチェックしています。
上のメモは現地を一緒に回ったときの1軒で、ここに申し込みは入れましたが...契約直前で流れました...おもしろい字型なのでプランやってみたかったのですが、実際は木造だし色々と大変だった可能性も高いです。
最終的に決まったのは先ほどの写真のこっちですね。
今回はスケルトンという空っぽの状態の区画で賃借契約を結び、内装工事もゼロからスタートします。自由度は高いけれど値段が嵩むのと、原状回復で契約すると退店時には解体コストがかかってきます。
とはいえ、初期投資はちょっとかかりますが素直な字型なのでお店は作りやすそうです。
ラフレイアウトで機材配置などを確認
さて、現地計測ができたらザックリとまず平面図(真上から見た図面)を引いていきます。
こんな感じ。これは白図=はくずと呼ばれるもので、要するにまっさらな原稿用紙みたいなものです。
もっと細かく床面の高さ、天井の高さ、各所の材質、設備のルート、スイッチの位置etc...がきちんと書き込まれた建築の確認申請時の図面があるハズなのですが、不動産屋さんが出してくれることは少ないです。なので自分で計測して図面化します。
まぁ、現場が全てなので現地実測が基本ですし確実です。図面にあるのに現地にないとか、図面にないのに現地にあるとかはザラにあります。
この白図をベースに大体の部屋の寸法やレイアウトが決まってきます。飲食店なら厨房と客席、物販なら売り場とストックルームなどですね。
今回はパン屋さん。そしてサンドウィッチも作るので、通常のパンの製造室と、サンドウィッチ室、そして従業員用トイレ、売り場が必要です。
【 路面店のパン屋さんで必要になる部屋 】
1.パンの製造室
2.従業員用のトイレ
3.売り場
4.場合によっては更衣室と倉庫
5.サンドウィッチ製造室
※地域の保健所によって許認可設備条件は微妙に差があります。
それらを踏まえて、クライアントさんの希望を聞きつつレイアウトのやりとりをしていきます。
クライアントの國吉さんの希望を伺いつつ、実際の厨房機器の寸法などを入れ込んでいきます。
この時点では予算をかけたくないので壁の量もなるべく減らしつつ、クライアントの希望通りの厨房器具レイアウトで組んでいます。
で、左上に赤字で入れてあるのが保健所さんへの申請希望の許可種別です。今回はパンの製造+サンドウィッチ製造が欲しいので、この図面を持ってまず保健所さんへ相談へ行きます。
保健所さんへ相談の結果...こうなりました。
レジとパン製造を分けること+パンの製造室にいきなり外部からアクセスできるのが衛生上よくないからやめなさいね、という指導を受けたんですね。
早い段階で保健所さんと協議してこういう指摘をクリアしておかないと、計画をガチガチに固めてから更衣室作れとか言われてしまいます。今回は早めの相談で色々と詰められてよかった。
基本設計図に着手!
保健所の相談事項もクリアできたので、さらに設計を進めていきます。
給水、排水、汚水、空調換気、電気配線やコンセントetc...各種設備のルートや容量などのハード面を組み込みつつ、レジやドアや内窓などの機能面を入れ込みます。
さらに、意匠としてどういうデザインにするのが良いのか?外から見たらどう見えるのか?少人数のオペレーションでも導線に不備はないか?などもこの時点で検証します。
この図面の場合、やばいのは23番のベーカリーオーブン。めっちゃ、でかい。オーブンの上に吊り込むステンレスフードもデカイです。扉からだと入らない。
そのまんまだと搬入できないので、床と壁と天井を組んでから内装壁を全部組まずに開けておいて、オーブンやステンレスフード類を搬入設置してから壁を塞ぐ必要があるよな...というのも、この時点でクリアにしておきます。
何がヤバそうかという危険予測は設計者の経験値次第。僕も数々のやらかしで冷や汗をかいてきました...それがあって、今があります。
優秀な施工担当者と組めばここら辺のエラーは回収できたりもしますが、できれば設計者が設計段階でリスクを説明できればフェアですよね。
この時点でゴールイメージはもっておく
僕はこの時点でなんとなくですがこんなお店にするといいな、というゴールイメージを持つようにしています。
壁の位置、導線の幅、色味、素材感、照明の当て方や明るさ...
最終的にどう見せたいのか?という視点から逆算しつつ組み上げていく感じです。細かいしやること多いんですよ、設計のお仕事。だから楽しいんですけどね。
さて、デザインの話は長くなっちゃうので、続きはまた次回に!
次はさらに設計とデザインを詰めていく実施設計のお話です。
お店づくりって楽しいんです!
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