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ぴかぴかな地球を、次の世代へ。 ーサラヤ株式会社インタビュー

私たち株式会社アエナは「捨てるをなくす」を合言葉に、オフプライスストアの仕組みを社会に広げていく企業です。
オフプライスとは、過剰生産・過剰廃棄によって生まれてしまった在庫を、お得に販売する仕組みです。
この仕組みを通じて、地球の温度を少しでも下げることと、商品購入における体験格差をなくしていくことが私たちの願いです。

「捨てるをなくす」OFF STORIES。
第四弾となる今回は、「自然に倣い、自然を守る。持続可能な社会をつくる」。環境にやさしい商品を通して、持続的な社会貢献を広げるサラヤ株式会社様にお話を伺いました。

▼インタビュイープロフィール

サラヤ株式会社
コミュニケーション本部
広報宣伝統括部 統括部長
クリエイティブディレクター&コピーライター
廣岡 竜也(ひろおか・たつや)さま

▼サラヤ株式会社とは?

世界の「衛生・環境・健康」の向上に貢献する、日本の衛生用品・日用品・食品メーカー。


知っていますか?陰で衛生を支える立役者

ーー今回取材させていただけると決まったときから、自然と「SARAYA」のロゴが目に入るようになりました。
特によく見かけるのは「お手洗い」なんです。ハンドソープや消毒液などに、さりげなくSARAYAのロゴが入っていることに気づきました。
今まで「ヤシノミ洗剤」や「ラカント」のイメージが強かったので、新たな発見でした。

廣岡さま
ありがたいです。実は私たちは「衛生事業」がメインの会社なんですよ。
食品衛生や公衆衛生、そして医療・福祉などのプロの現場から一般家庭まで、皆さんの「衛生・環境・健康」の向上に貢献する商品やサービスを開発しています。

ーーなぜ衛生事業に着目されたのでしょうか。起点となるエピソードがあれば教えてください。

廣岡さま
サラヤの創業の原点は、「手洗い」です。
創業当時、赤痢という病気が流行していました。紡績が盛んな時代でしたが、女工さんの間でもこの伝染病が猛威をふるうようになったんです。
戦後間もない貧しい人が多い時代の中で、誰もが等しく病気から逃れる方法がないだろうかと考えました。
そこで着目したのが「手洗い」です。そして多くの人が、効果的に手洗いが出来るよう開発したのが、日本初の「薬用石鹼液」です。これなら薬よりも安価に誰もが利用できます。

ーーだから「お手洗い」にSARAYA製品がたくさんあるんですね!

廣岡さま
ちなみに、私たちが用意したものは石鹸液だけではないんです。
「手洗いの標語」をつくり、手洗いを習慣として定着させることを目指しました。せっかく良い製品をつくっても、正しく使われなければ効果を発揮しません。どんな方であっても衛生管理をできるよう工夫を重ねました。
その甲斐もあり手洗いが習慣として広まっていき、文化として定着するに至りました。

ただ商品をつくって終わり!ではなく、お客様の健康に必要な「文化の定着」まで考えることがサラヤらしさかもしれませんね。

ーーただ商品を作って終わりではないことに脱帽です。一企業の取り組みが、国全体の衛生や文化を変えることに感動しました。

廣岡さま
大きい社会問題であればあるほど、事業としての持続性が必要だと考えています。
「社会問題をビジネスで解決する」という想いは、赤痢と戦った当時から変わらず持ち続けています。


日本の環境問題から、ウガンダの衛生問題へ

ーー個人的に一番馴染みのある商品がヤシノミ洗剤なんです。あのお馴染みのヤシの木のパッケージを見ると、ほっとする気持ちになります。
この商品もなにか社会問題と紐づいているのでしょうか?

廣岡さま
もちろんです。ヤシノミ洗剤は、高度成長期の1971年に誕生しました。
当時、石油原料の洗剤が引き起こす排水による環境問題が注目されていました。川や湖、海は汚れ、魚は死んで自然のサイクルも壊してしまう。
これではだめだと開発したのが、植物のヤシ油を使ったヤシノミ洗剤です。

手肌と環境にやさしい無香料・無着色にこだわった商品でしたが、コストが高く、知名度も低かったため、当初は全然売れませんでした。
しかし「この洗剤は手が荒れない!」と話題になり、そこから徐々に口コミで広まり、ファンが増えていったんです。

ーーヤシノミ洗剤は指名買いのお客様が特に多い印象があります。サラヤ様は全体としてリピーター比率が高いのでしょうか?

廣岡さま
サラヤ製品全体に「この商品が良い」と選び続けてくださるリピーターの方が多いというのはあります。それは、サラヤの考え方や商品のコンセプトに共鳴していただけるお客様に向けてアプローチをしているからです。
しかし、リピーターが多いからこそ、ある弊害も生まれました。

70年代は詰め替え用のパックが存在せず、リピーターのお客様が買い換えるたびにボトルを捨てざるを得なかったんです。
ボトルの使い捨ては、石油資源の無駄使いとプラスチックゴミの増加につながります。
そこでサラヤは、日本で初めて台所洗剤の詰め替え用のパックを開発しました。

そしてボトルのデザインも、一度買ったら長く使っていただけるよう、インテリアの邪魔にならないデザインに改良しました。容器もクリアタイプにし、内容量がすぐ分かるようにしました。
消費者の皆さまに長くこの製品を選んで使ってもらうことで、長期的に環境負荷を減らしていくことができるんです。

ーー今ではお馴染みの詰め替え用パックに、こんな製作秘話があったんですね。まさに「捨てるをなくす」ですね。

廣岡さま
実は、この商品の話はここで終わらないんです。
リピーターが多いとお話したように、詰め替えパックを購入するお客様が増えた結果、「ヤシノミ洗剤は詰め替えパックが良く売れるから、ボトルはいらないんじゃないか」と店頭に本体ボトルを置いてもらえなくなるという弊害が起きました。
初めて「ヤシノミ洗剤を買おう」と思って店頭に行っても、ボトルが無いと買えない。ということで新規のお客様が増えないんです。
この問題には、長らく悩まされることになりました。

さらに「エコロジー」や「CSR」という言葉が世間に広まり始めたころ、ある環境問題を報じるテレビ番組の取材を受けました。
その中で「ヤシノミ洗剤の原料生産地のボルネオ島では、熱帯雨林が伐採され、象やオランウータンが住めない環境破壊が進んでいる!」と報じられたんです。

今では、どのメーカーも植物原料を使っています。しかし、他のメーカーは取材拒否。弊社は、問題改善に向けて活動することをコメントしたのですが、放送ではカットされ、視聴者の誤解を招いたのです。ちょうど「ヤシノミ洗剤は環境にいいよね」とお客様から評価をいただきはじめた時期のことです。

この環境問題の原因となったのは、アブラヤシという植物からとれるパームオイルで、その85%は食用。工業用として化粧品やキャンドル、加工用に使われ、ヤシノミ洗剤に使われているのは1%にも満たない量でした。
しかし量の多少ではなく、問題を知ってしまった以上、見て見ぬふりはできませんでした。
同じ課題解決を目指す企業や団体と協力しパームオイル利用のルールを定めたり、持続可能なパーム油を使った商品を開発するなど、ビジネスの力でこの問題に向き合い始めました。
ボルネオの環境保全に向けた仕組みを作り、消費者がサラヤの商品を選ぶことでボルネオを守る活動に参加できるようにしたんです。

ーー社会問題を見て見ぬふりしないということはなかなかできることじゃありませんよね。この問題も持続的に貢献できる仕組みに落とし込まれたことが素晴らしいです。


社会問題と向き合ったら、ゼロからその先まで

ーー社会問題が尽きない世の中です。次に注目されている社会問題はありますでしょうか?

廣岡さま
先ほどのボルネオは熱帯雨林の話でしたが、密接に関わりあうものとして海があります。森が荒れると川が汚れ、海が汚れます。そういった背景もあり、今度は海をきれいにしていきたいと考えています。
対馬のゴミ問題をご存じでしょうか。対馬の海岸には海流の影響で、アジア各国から大量の海洋ゴミが流れついているんです。そのゴミ問題だけでなく、マイクロプラスチック汚染や海洋資源の減少、気候影響など海を取り巻く環境は悪化の一途をたどっています。そういった問題を知った以上、もう見過ごすことはできません。
海洋問題解決に向けて、様々な取組を進めていく一方、2025年の大阪・関西万博では、当社の社長が理事長を務めるNPO法人ZERI JAPANが出展する「ブルーオーシャン ドーム」を支援し、世界に向けて海洋問題の啓発を行う予定です。

ーー大阪・関西万博は今年の一大トピックですね。今から楽しみです。

廣岡さま
他には、ウガンダでの取り組みも継続していきます。
アフリカの問題に着目したのは2010年のことですが、ここは未来の市場になると信じています。

私たちは、「衛生を取り扱う企業」です。
衛生領域でもっと世界に貢献したいと考えていたとき、アフリカではまだ手洗いの文化が根付いていないことを知りました。消毒の重要性を理解している現地の医療従事者でさえ、コストの問題で十分に実践できていない状態が続いています。手を洗浄・消毒する文化が広がるだけで救える命がたくさんあると信じ、ウガンダでの事業展開を開始しました。

ーー「医療従事者でも十分に手洗いができない」ことから問題の深刻さがうかがえます。手洗いを日本に広めたサラヤ様にしかできないことがありますね。

廣岡さま
現在は、一般の人には「100万人の手洗いプロジェクト」。医療従事者には「病院で手の消毒100%プロジェクト」と題して、アフリカでも手洗い文化の普及に取り組んでいます。
創業当初から、手洗い文化を広めることによって社会の衛生意識と健康を守ってきた実績が、サラヤにはあります。この知見を活かし、現地でも手洗い文化を広めていきたいと考えています。

ちなみに、今ウガンダでは手を洗い消毒することを「サラヤする」と言うようです。文化として根付き始めてくれたのかなと思います。

ーー企業の名前がそのような形で使われることがあるんですね!日本だけでなくウガンダでも、手洗いが文化として根付き始めたんですね。

廣岡さま
やはり見据えたいのはプロジェクトが終わったその先です。
例えば、将来アフリカから撤退する日が来たとしても、サラヤが残した手洗いの文化が現地で根付き、受け継がれていくなら、こんなに嬉しいことはありません。


ぴかぴかな地球を次の世代に渡したい

ーー社会問題への関わり方に、一貫性がありますよね。目的をぶらさず、問題の根本的な解決のために考え尽くす姿勢に、サラヤ様のこだわりを感じます。

廣岡さま
社会問題と出会ったら、社長はもう当事者として行動を始めるんです。
一度目にすると、見て見ぬ振りができないんです。「この問題にサラヤとして関われないか!」と動き始めます。
トップである社長の社会問題に対する当事者意識が高いからこそ、会社全体が一丸となり、同じ方向に向かって走っていけるのだと思います。

ーー社長様をはじめ、会社全体の当事者意識が高いからみんなで同じ方向を向いて動いていけるのですね。
ちなみに今回私たちは「OFF Journal」という媒体です。サラヤ様の考える「OFF」について教えてください。

廣岡さま
社会問題を「オフ」にしたいです。
SDGsの切り口で持続可能性が語られる世の中ですが、私たちも負の遺産を次の世代に残したくないんです。
次の世代に渡すのはぴかぴかな地球であってほしいですね。
環境問題はどれも互いに繋がっています。だからこそ、一つずつ環境問題におけるタブーを「オフ」していくことが、今の私たちにできることではないでしょうか。

ーー「ぴかぴかな地球を、次の世代に残す。」今を生きる、私たちの使命ですね。

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