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芸術の常識を打ち破る新ART「GENART」が描く未来のビジョン

昨年、ニューヨークで生活していたときのこと。アートギャラリーを巡る日々の中で、よく耳にした言葉がある。それが「GENART」だ。ちなみにGEN ART(ジェン アート)ではなく、GENART(ジェナート)である。

気になって、アート好きの知り合いに尋ねてみた。「最近GENARTって言葉をよく聞くんだけど、何か知ってる?」と。すると返ってきた答えはこうだった。

「AIと人の力を結集させてできたアート作品のことだよ。」

その言葉を聞いてピンと来なかった自分は、「ARTにAIってどうなの?」と聞き返した。すると彼は苦笑しながらこう答えた。

「まだそんなこと言ってるの?良いものはなんでも受け入れていかないと、自分の芸術性を足踏みさせることになるよ?」

その言葉に自分の無知を恥じた記憶が今でも残っている。



GENARTの注目度が高まった背景

どうやらアメリカでは、世界的な絵画コンテストでAIを駆使した絵画が最優秀賞を受賞したことを皮切りに、GENARTが一気に注目を集めるようになったらしい。その影響もあり、最先端のアートの街ニューヨークでは、「これからのアートはGENARTが主流になる」という声が多く聞かれるようになっていた。

そんな折、昨年11月、日本に帰国した際に国立新美術館を訪れた。ちなみに国立新美術館は日本最大級の展示スペースを誇り、常に新しい展覧会が楽しめる「開かれた美術館」をコンセプトとしている国内で最も注目されている美術館だ。特に企画展ごとに変わる展示内容が、何度訪れても新鮮な体験ができ、アートの多様性を体感できる場所として、私個人としても世界的に見ても最も気に入っている美術館の一つである。建物自体の建築も素晴らしく、特に内部構造は惚れ惚れする建築美が味わえるので、ぜひ一度足を運んでみてほしい。

話が少し逸れたが、いつものように館内の様々な企画展を見て回っていると一際目を引くセンスの良いアート作品が展示されている区画があった。スタッフに尋ねると、なんとニューヨークでよく耳にしたあのGENARTだという。

GENART作品「天啓」 (空と木が混じった鷹が舞い降りる様子)

GENARTとは何か

GENARTに興味を持った私は、その正確な定義を調べてみた。GENARTとは、「制作過程にAI技術を取り入れたART作品」を指すらしい。

さらに、AI技術の取り入れ方には以下の5つの主なパターンがあることが分かった。

  1. AIと相談してテーマを決定し、アーティストが作品を描く

  2. AIが生成した画像を参考にしながらアーティストが作品を描く

  3. AIが生成した画像をイラストレーターが手直しして完成させる

  4. イラストレーターが作成した絵をAIが手直しして完成させる

  5. アーティストの作品にAIが助言を与え、ブラッシュアップする

これらの手法を用いて制作されたアート作品はすべて「GENART」と呼ばれる。人間とAIの力が組み合わさることで、従来のアートとは異なる新しい価値が生まれている。

GENART:制作過程にAI技術を取り入れたART作品

GENARTが示す新たな価値観

アート業界にある「庶民にはARTの価値は理解できない」とでも言うようなエリート主義や資本主義は、アート本来の姿を見失わせる危険性がある。本来アートとは、誰もが触れられるものであり、触れた人の数だけ多様な価値を生むものである。

現代のアート市場では、「誰の作品か」が重要視されることが多い。しかし、これはアートの価値を生む一要素に過ぎない。アートの本来の価値とは何か。それは、人がアートに触れた瞬間に生まれる無意識的な体験ではないだろうか。それが生み出す感動こそが最も魅力的な要素であり、人々の生活にとってアートが欠かせない根源的な理由になっているのではないかと考える。

GENARTは、この価値観を再定義する存在だ。「誰が作ったか」ではなく、「どのように人々を感動させるか」に重きを置く。そして、その感動を生み出すためには、人間の創造力とAIの膨大な知識、技術力を融合させることを厭わない。この点がGENARTの最も魅力的な部分だ。

色彩調整等、様々な技術が日進月歩で進化している

GENARTがもたらす未来

GENARTの普及は、アート市場に以下のような変革をもたらすことが期待されている。

  1. 多様性の拡大:AI技術が加わることで、アートの形式やスタイルがこれまでにないほど多様化する。具体的には、視覚的に斬新なパターンや、複数の文化を融合させたユニークな作品が次々と生まれる可能性がある。GENARTは国境や文化の壁を越えた新たな表現手段を提供し、アートの国際化をさらに促進するだろう。

  2. 新たな経済価値:GENART作品は、従来のアート市場を超える新しい経済的価値を生む可能性がある。たとえば、ブロックチェーン技術と結びつくことで、GENART作品がNFT(非代替性トークン)として取引されるケースが増加。これにより、作品の真贋が保証され、アーティストへの適正な収益分配も実現される。実際、日本でGENARTを先駆けて販売している「GENART COLLECTION」(以下掲載)では、トップアーティストたちのGENARTを提供しており、利益よりもアート市場の活性化をコンセプトに置いている為、現時点では手頃な価格で購入可能だが、今後その市場価値が急激に上昇する可能性が非常に高い。

  3. AIネイティブの成長による市場の活性化:GENARTが普及されていくと、今までデビューできなかった新しいアーティストが参入可能になることで業界全体が盛り上がる。ただそれだけではない。一昔前はデジタルネイティブという言葉が流行った。子供の頃からスマホやSNS、Youtube等の情報媒体があり、それを使いこなす世代のことだ。これに加え、今の子供達の世代は「AIネイティブ」だと言われている。GENARTが普及すれば、AI技術を活用して、初心者でも高度な作品制作に挑戦できる環境が整う。例えば、AIを使って自分だけのアート作品を簡単に生み出し、評価される仕組みが構築されることで、次世代のアーティスト育成が加速する。今のAIネイティブな子供たちが大人になる頃には、今あるARTではなく、GENARTがARTのスタンダードとなる未来が確実に来るだろう。

GENARTは、単なる技術的な進歩ではなく、アートの在り方そのものを根本から変える力を持っている。この革新によって、アートとテクノロジーが共存し、さらなる創造性を引き出す未来が近づいている。

AIネイティブ世代の台頭

日本におけるGENARTの可能性

日本のアート市場はまだ発展途上だ。世界の市場規模が10兆円なのに対し、日本はまだ3%ほどしかない。しかし、GENARTがその成長を加速させる鍵となるだろう。漫画等が良い例だ。漫画の作成にデジタル技術が介入することにより、漫画を書く作者が増え、特に韓国の漫画界は驚くほど発展した。次こそはARTの番ではないだろうか。GENARTが日本の新たな文化形成の礎となり、世界から「日本ってアートな国だよね」と言われるようになれば、日本人としてこんなに嬉しいことはない。

GENARTは、単なる新しいアートの形ではない。アートそのものの価値を再定義し、アート市場を活性化させる可能性を秘めた存在だ。未来のアートを切り開くGENARTに注目し、その世界に触れてみてほしい。

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