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Q:罰金刑になったら永住権更新できるの?

今日の質問は、永住許可を既にお持ちの方からです。

「駐車違反で罰金支払うことになったんですが、罰金とか永住の更新ができないって聞きました。私、更新できるんでしょうか?」

これはおそらく「放置駐車違反」のことですね。
つまり、車を駐車したまま、運転者が離れてしまっている間にステッカーはられる場合です。

この場合は「放置車両確認標章」とよばれるステッカーがばちこんとフロントガラスに貼られていると思います。

この場合、駐停車禁止場所なら3点、駐車禁止場所なら2点の違反点数の上、罰金を支払わなければなりません。

こちらに該当したときに、永住許可の更新ができるのかどうかというご質問に本日はお答えしようと思います。

永住許可の更新とは?

そもそもの話になるんですが、実は永住許可には「更新」という概念がありません。

更新の必要がないので、日本で暮らす外国人の方は永住許可を取得したいと考える方が大勢いらっしゃいます。

そもそも永住許可とはどのようなものなのか解説いたします。

永住許可は、文字のとおり日本に永住する許可のことです。
在留資格のうちの一つなのですが、他の在留資格とは違い、様々なメリットがあります。

まず、在留期間の制限がございません。
通常の在留資格であれば、在留期間が定められており、その期間が切れる前に更新や変更手続きを行わなければなりません。

更新や変更手続き中に在留期限を迎えてしまった場合に関しては以下の記事で詳しく説明しておりますのでそちらもご参考になさってください。

しかし、一度永住許可をしとくしてしまうことで、もはや在留資格の更新という手続きは必要なくなるのです。
日本で暮らす外国人の方にとっては、更新できるかどうかなどの不安もなくなりますし、雇用主に関して言えば、従業員の在留期間の管理の手続も不要になります。

さらに永住許可を取得することで、就労制限がなくなります。
通常のいわゆる”就労ビザ”の場合、在留資格により定められた活動以外を行ってしまうと「資格外活動違反:」となってしまう可能性があります。

永住許可を取得した場合は、就労制限や活動の制限がないため、日本人と同じように活動することができるというのも大きなメリットの一つでしょう。

このように永住許可にはメリットが数多くあります。
在留期間という概念が永住許可にはないため、永住の更新という手続きはそもそも存在していないのです。

永住許可を取得するには?(一般的な例)


上記のように永住許可は非常にメリットの多い在留資格であると言えます。
ただ、想像に難くないとおり、取得には様々なハードルを越える必要があります。
他の在留資格と比較しても取得の難易度が高い在留資格であると言えます。

条文上では、永住許可の取得は以下のように規定されています。

第二十二条 在留資格を変更しようとする外国人で永住者の在留資格への変更を希望するものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し永住許可を申請しなければならない。

 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。

 素行が善良であること。

 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。

 法務大臣は、前項の規定による許可をすることとしたときは、出入国在留管理庁長官に、当該外国人に対し、その旨を通知させるものとする。この場合において、その通知は、出入国在留管理庁長官が、入国審査官に、当該許可に係る外国人に対し在留カードを交付させることにより行うものとする。

 第二項の規定による法務大臣の許可は、前項の規定による在留カードの交付があつた時に、その効力を生ずる。

出入国管理及び難民認定法

そもそも要件を満たして申請した際に、「法務大臣が許可することができる」と書かれていますので、必要な要件を満たせば必ず許可が下りるという種類の申請ではありません。

素行が善良で、十分に生きていくことができる収入があること、このように記載されていますが、それぞれに実は細かい規定があるのです。

今回、細部の説明は省きますがいずれまたの機会に、永住許可の要件についてご質問がございましたら詳しく解説したいと思います。

今回のご相談者が不安に思った点と言えばおそらく「素行が善良であること」という要件を満たさないのではないか?ということであると思われます。

実際、永住許可の申請についての場合、信号無視や駐車違反など自動車関係の罰金についての不安を抱えていらっしゃる方が多いようにお思われます。
それぞれ個別のケースごとに、入管業務専門の行政書士に一度ご相談されることを強くお勧めします。

特に多いのは「友人が駐車違反でも永住許可取れたから、私も取れるはず」といった周りの方との比較でお話をされる方は非常に多いですが、個別に審査されるものですので、友人ができたからと言って許可が取れるとは限りません。

自分で判断せずに必ず相談するようにしてください。

永住許可とっても入管行かないとダメなの?

ここまで読んでいただいた方の中で、おそらく疑問に思う点は

「私の友人、永住持ってるけどたまに入管行ってるよ。なんで?」

ということでしょう。
確かに永住許可を持っている人用の窓口が設置されている入管もあり、連日混雑している様子を見ることがあります。

あの行列は、永住の更新ではないの?

実は永住許可そのものには在留期限はないのですが、在留カードには有効期限が設定されており、その期限が切れる前に在留カードの更新をしなければならないのです。

パスポートに期限があるように在留カードにも有効期限があり、写真を変更して新しいカードを取得する必要があるのです。

顔など年月とともに少しずつ変わってしまい、何年も日本にいたのちにはずいぶん変わってしまうことも考えられます。
そのために写真を更新する意味で在留カードの更新の手続が定められているのです。

第十九条の十一 在留カードの交付を受けた中長期在留者は、当該在留カードの有効期間が当該中長期在留者の在留期間の満了の日までとされている場合を除き、当該在留カードの有効期間の満了の日の二月前(有効期間の満了の日が十六歳の誕生日とされているときは、六月前)から有効期間が満了する日までの間(次項において「更新期間」という。)に、法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、在留カードの有効期間の更新を申請しなければならない。

 やむを得ない理由のため更新期間内に前項の規定による申請をすることが困難であると予想される者は、法務省令で定める手続により、更新期間前においても、出入国在留管理庁長官に対し、在留カードの有効期間の更新を申請することができる。

 前条第二項の規定は、前二項の規定による申請があつた場合に準用する。

出入国管理及び難民認定法

入管での行列は、資格の更新ではなくカードの更新なんですね。
それをひょっとしたら相談者の方は、永住許可の更新と勘違いしてしまったのかもしれませんね。

永住許可持ってたら何でもできる?

ここまで見てきたように、永住許可を持っている場合、国籍が変わらないだけでほとんど日本人と同じような活動を行うことができます。

今回のご相談の件も、更新の手続がないから気にしないでいいなん!なんて考える人もいらっしゃるかもしれません。

でも要注意!永住許可を持っていて、在留資格の更新がないからと言って何でもできるわけではありません。

実は永住許可を持っていたとしても、国籍は元の国のまま、つまりあくまで外国人です。
ですので、在留資格の取り消しの対象になってしまうんです。

次の場合は在留資格が取り消され、退去強制の対象になります。

第二十二条の四 法務大臣は、別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもつて本邦に在留する外国人(第六十一条の二第一項の難民の認定を受けている者を除く。)について、次の各号に掲げるいずれかの事実が判明したときは、法務省令で定める手続により、当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができる。

 偽りその他不正の手段により、当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第一節又は第二節の規定による上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。次号において同じ。)又は許可を受けたこと。

 前号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等(前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)又はこの節の規定による許可をいい、これらが二以上ある場合には直近のものをいうものとする。以下この項において同じ。)を受けたこと。

 前二号に掲げるもののほか、不実の記載のある文書(不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により交付を受けた在留資格認定証明書及び不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により旅券に受けた査証を含む。)又は図画の提出又は提示により、上陸許可の証印等を受けたこと。

 偽りその他不正の手段により、第五十条第一項又は第六十一条の二の二第二項の規定による許可を受けたこと(当該許可の後、これらの規定による許可又は上陸許可の証印等を受けた場合を除く。)。

 省略

 省略

 省略

 前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可、この節の規定による許可又は第五十条第一項若しくは第六十一条の二の二第二項の規定による許可を受けて、新たに中長期在留者となつた者が、当該上陸許可の証印又は許可を受けた日から九十日以内に、出入国在留管理庁長官に、住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。

 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に届け出た住居地から退去した場合において、当該退去の日から九十日以内に、出入国在留管理庁長官に、新住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。

 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に、虚偽の住居地を届け出たこと。

出入国管理及び難民認定法

こちらに規定されている事項は在留H資格の取得に虚偽の申請があったことや住居地の変更手続きなどを正当な理由なく行わなかった場合のことが規定されています。

残念ながらこれ以外にも素行が不要であると判断された場合にも在留資格の取り消しの対象となってしまいます。

ですのでたとえそれが軽微な違反であるとしても繰り返し違反してしまう場合などは素行が良好であるとは認められず、最悪の場合は退去強制の措置が取られてしまいます。

ですので永住許可をお持ちであるからと言って、何でもできるわけではないということを確認してください。

なお、帰化された方の場合はn退去強制の措置が取られることはありません。
帰化した時点で日本人として扱われることになりますので、あくまで日本人として罰を受ける形となります。

どちらにせよ、各種違反をしていいことはありませんので十分に注意するようにしてください。


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