心を整えてくれるは大げさではない | 「喜嶋先生の静かな世界」(著者:森博嗣)
こんにちは
イデアレコードの左川です。
最近、平日はいわゆるビジネス本的なもの、土日は小説などを中心に純粋に楽しめるもの、という形で読書をしている。そんな中、“心を整えてくれる小説 これまでも、これからも何度も読み返す本です”という帯に書かれた言葉に惹かれて読んだのが「喜嶋先生の静かな世界」。森博嗣さんの名前は映画「スカイ・クロラ」を観たときに知ってはいたが、著作を読んだことはなかった。が、読み始めてみると今まで読んでこなかったことを後悔するぐらいの感動であった。
率直に好きと思える小説であった。
社会人生活も20年を超えるとだんだんと捻くれていき、若かった頃に抱いていた想いや純粋さみたいなものは薄れていってしまい、ほとんどなくなりかけている。が、「喜嶋先生の静かな世界」を読むと自分が失いかけているものが、再び形を取り戻していくような感覚を覚える。
人生というのは決して自分の思い通りにはいかないし、特に社会という中では自分というものをいかに出さないかが問われるようなことも少なくない。そのため、自分の想いに対して純粋にストレートに言葉を発することができる人は稀有である。
物語を通して自分自身も主人公と同じように喜嶋先生の教えを受けていくが、学生時代を遥か昔に終えてしまった自分としてはこれから学生時代を迎えていく人が羨ましいという感情も自然と高まっていく。だが、「喜嶋先生の言っていることはそんなことではない」とも同時に思ったりもする。そんな自分の中で繰り広げられる葛藤を通して、自然と心が整っていくような気がした。帯に書かれていたことは嘘ではなかった。きっと多くの人の「心を整えてくれる」であろう。というか、発売されてからはそれなりの年月を経ているので、すでに心を整えてきたであろう。
自分の娘にも読んで欲しいという想いを秘めて、そっと本棚に置いておくことにした。