神話の地ギリシャ旅行記(6)港と三叉路
アウリスの港
テーバイを訪ねた後は、ボイオティア平原を横断してアウリス(現アウリダ)へ。ここも全く観光地ではない。本土と対岸のエウボイア島に挟まれたごく狭い海峡にある。
しかし、アウリスと言えばトロイア戦争の出発地。アカイア勢(ギリシャ方)の軍船1186艘が集結した港だ。海峡を埋め尽くす三段櫂船の列に皆心躍らせ、出港を待ちわびる。
それなのに、追風は一向に吹かない。
占わせると、総大将のアガメムノン王がアルテミス女神の怒りを買ったからだという。
ギリシャ全土から集結した軍勢が滞在すれば、一日でも兵糧は莫大なものだっただろう。アガメムノンは神託に従い、娘のイーピゲネイアを人身御供にするが、アルテミス女神は娘を憐れんで鹿と取り換え、連れ去ったという。
オイディプスの三叉路
そして道は再び海から山へ。デルフォイへ向かう道の途中に、かの有名な三叉路がある。
【神話】
デルフォイで「父を殺し母を娶る」という予言を受けた王子オイディプスは、コリントスに戻らず反対の山道を抜けてテーバイへと向かう。
ところが途中の三叉路で、向こうから来た馬車の居丈高な老人と
「道を譲れ」「そちらこそ!」
と争いになったあげく、相手を殺してしまう。
テーバイに着いてみると、街はずれに怪物スピンクスが現れ、通る人に謎をかけ、答えられないと食ってしまうという。
オイディプスはその謎を見事に解いてスピンクスを退治し、褒章として王座を与えられ、前王の妃と結婚することになる。
この話を読んでから長い事、「脇によけるとか別の道を通るとか、トラブルを回避する方法はなかったのか?」と思ってきた。
だが、迂回路は難しい地形の上、狭い道の両脇には、堅くとがった葉をびっしり付けた森(マキ)が迫っている。これではとてもよけられたものではない。
道端の草すら足を刺してくる。当時の陸の旅の難儀さを実感した。
デルフォイのアテナ
途中のタベルナ(レストラン)で昼食をとって、午後はデルフォイに戻る。
デルフォイの神域はパルナッソス山中腹に広がっていて、その中をバス道路が横切っている。古代の人々はキラの港からここまで登って来たわけだが、その入り口にあるアテナ・プロナイアの神域は、道路よりかなり下になる。
「アテナ・プロナイア」とは「前門のアテナ」の意。デルフォイの入り口をアテナが守護している。円形神殿(トロス)の復元された柱が美しい。
「イリアス」では主要な三柱の神として、ゼウス・アテナ・アポロンが並び称されていることがある。主神ゼウスは別格として、アテナとアポロンは同格なイメージがあるが、アポロンの本拠地ともいえるデルフォイではさすがに分が悪いのだろう。
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