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工場にIoTを入れる「レトロフィット」で製造現場が強くなる

レトロフィットとは、旧式のモノ(レトロなモノ)を、現代のニーズに合わせる(フィットさせる)ことを指します。

製造業では最新の機械や最先端の設備を使うことで生産性を向上させることができますが、それには多額の投資が必要です。したがってすべての製造業企業が、すぐに最新機械・設備を導入できるわけではありません。

そこで既存の機械・設備をレトロフィットさせて、コストをそれほどかけずに生産性を上げる取り組みが必要になるわけです。

レトロフィットを実施するにはさまざまな機器が必要になりますが、そのなかでもポイントとなるのがIoTです。レトロフィットIoTは製造現場の競争力を強化します。


 レトロフィットとは

製造業のレトロフィットIoTを「レトロフィット」と「IoT」にわけて解説します。レトロフィットはIoTによって、現代のニーズに応えるという目的を達成できるからです。

まずはレトロフィットとはそもそもなんなのか、について説明します。

既存の機械・設備を手離せないときに有効

製造業企業がレトロフィットに取り組まなければならないのはDX(デジタルトランスフォーメーション)化が急がれるからです。DXとは、デジタル技術やインターネット技術、業務システム、ビッグデータなどを投入するIT化によって事業に変革を起す取り組みなわけですが、これは製造業企業の競争力強化と成長に欠かせない取り組みでもあります。

ところが多くの製造業企業は、IT化もIoT化もされていない機械・設備を多数抱えています。これらへの投資は中小企業であっても千万円規模や億円規模に達しているはずで、したがって既存の機械・設備を廃棄してIT化IoT化された機械・設備を導入することは簡単なことではありません。

また、現場の作業者たちは既存の機械・設備を使い慣れているので、これまで使ったことがない新しい機械・設備を使いたがらないでしょう。人手不足に悩んでいる製造業企業が、作業者たちが好まないことを実行して離職者を増やすわけにはいきません。

つまり製造業企業の経営者は、DX化の重要性を理解しつつも既存の機械・設備を手離せないわけです。

優れた妥協

そこでレトロフィットが登場しました。既存の旧式の機械・設備のままでDX化できれば、大規模投資をすることなく(小規模投資は必要になりますが)、現代のニーズに応えることができます。

製造業企業に求められる現代のニーズは複数ありますが、最も重要なものは生産性の向上でしょう。例えば、生産の自動化や故障や異常の予知、品質の向上、不良品の減少、労働時間の短縮、作業者の負担軽減などは生産性を高め、より良い製品を、低コストと省人化を実現しながら提供できるようになります。このことは製造業企業に利益をもたらし、ひいては日本の製造業の世界競争力を強化します。

レトロフィットは、最新の機器・設備を導入できない製造業企業が採る妥協策といえますが、優れた妥協策ともいえるのです。

製造現場におけるレトロフィットIoTの概要

製造現場でレトロフィットを実現するにはIoTの力が欠かせません。つまりIoTによって既存の機械・設備でも、生産の自動化や故障や異常の予知、品質の向上、不良品の減少、労働時間の短縮、作業者の負担軽減を実現できるようになるわけです。

IoTなら工場の機械の異常を事務所の総務担当者でも発見できる

機械・設備が異常をきたしているのにそのまま使い続けるといつか故障してしまいます。そのため機械・設備には稼働状況を知らせる計測メーターや警告灯が装着されているわけですが、それでも作業者がその確認を怠れば異常が放置されてやはり壊れてしまいます。これが旧式の機械・設備を使い続けるリスクです。

そこで計測メーターや警告灯をカメラで常時撮影し、その画像データをIoTでインターネット経由で送信すれば、遠隔地にいる人のパソコンに計測メーターや警告灯のライブ映像が映し出されます。

例えば事務所にいる総務部の人が計測メーターのライブ映像をみて異常を発見できれば、工場の作業者に伝えることができます。

AIでレトロフィットIoTはパワーアップ

AIを使うとレトロフィットIoTはさらに便利になります。

計測メーターや警告灯の画像をAIに学習させると、AIが画像から異常を読み取れるようになりアラートを鳴らすことができます。このシステムなら、機械・設備に異常が起きたらダイレクトに、かつ瞬時に作業者に知らせることができます。

センサーとIoTは相性抜群

レトロフィット技術で注目されているのはセンサーとIoTゲートウェイです。既存の機械・設備に温度センサーや振動センサー、電流・電圧センサー、圧力センサー、位置センサー、流量センサーなどを取りつけると、より確実に機械・設備の状態を把握することができます。

機械・設備に取りつけるセンサーを増やすほど、異常が発生したときにどこで何が起きたかがすぐにわかるようになります。異常箇所を探す必要がないので、短時間で復旧でき生産性向上に寄与するでしょう。

そして、センサーがつくったデータを収集、処理してインターネットに送信するのがIoTゲートウェイです。IoTゲートウェイを機械・設備に装着することで、機械・設備、またはセンサーがインターネットにつながります。

後付けできる

レトロフィットIoTは後付けできます。後付けできるからこそ既存の旧式の機械・設備を使い続けながらDX化ができるわけです。

今、工場にある機械・設備にセンサーとIoTゲートウェイを取りつけて、工場内にインターネット環境を整備するだけでよいのです。

製造現場におけるレトロフィットIoTの利点

製造業企業がレトロフィットでIoTを使うと次のようなメリットを得ることができます。

●旧式の機械・設備を活かす

●生産性向上

●リアルタイムでの状況把握

●遠隔監視

●コスト削減

これらの一部は上記ですでに触れていますが、いずれも重要な要素なのであらためて確認していきます。

旧式の機械・設備を活かす

既存の旧式の機械・設備を使い続けられることは、レトロフィットIoTの最大のメリットといえます。これにより製造業企業は、1)大型投資をしなくて済む、2)支出を抑えられる、3)作業者に新たな負担をかけずに済む、4)離職予防につながる、といった利益を得ることができます。

生産性向上

製造業企業はレトロフィットIoTによって、旧式の機械・設備を使ったまま、最新機械・設備の導入に匹敵する生産性向上メリットを期待することができます。

製造業企業の生産性は、生産量、生産効率、稼働率、品質、などを増やしたり高めたりして高めることができます。さらに労働時間を減らすことでも生産性は向上します。

レトロフィットIoTは機械・設備の稼働時間を長くすることができるので、生産量が増えます。

レトロフィットIoTは機械・設備の監視体制を小さくできるので、生産効率が高くなります。

レトロフィットIoTは不良品の検知をより確実に行えるので、品質が向上します。

レトロフィットIoTは工場作業者の仕事を減らすので、労働時間が減ります。

リアルタイムでの状況把握

レトロフィットIoTは、機械・設備で起きていることを瞬時にインターネットを経由して、その情報を必要としている人に伝えることができます。これはあたかも、見守り番の人を機械・設備の前に配置して、ずっと監視させるようなものです。

しかも複数の機械・設備の状況をパソコン画面に映し出すことができるので、工場内のすべての機械・設備の状況を一人で把握することもできます。

遠隔監視

レトロフィットIoTは機械・設備のデータを、インターネット経由でどこにでも送信できるので、遠隔監視が可能になります。例えば中国工場の機械・設備の状況を、日本本社で監視することもできるわけです。

コスト削減

レトロフィットIoTの導入では大型投資は要らないものの、小型の投資は必要になります。それでもその投資額はすぐに回収できるでしょう。なぜならレトロフィットIoTは製造業企業のコストカット策にもなるからです。

レトロフィットIoTのコスト削減効果は、最初に人件費に現れるでしょう。レトロフィットIoTによって機械・設備の管理や監視の業務が激減するので工場の作業者の残業時間が減るはずです。

長期的な視点に立つと、レトロフィットIoTによって機械・設備の停止時間が減るので、つまり稼働時間が伸びるので、製造コストが下がります。

またレトロフィットIoTは機械・設備の小さな異常をみつけることができ、このことは致命的な故障の予防につながるので機械・設備の維持費も削減できます。

レトロフィットIoT導入のポイント

製造業企業の経営者が「レトロフィットIoTを導入しよう」と思ったら、次の5点に注意してください。 

●課題を明確にする

●対象にする機械・設備を選ぶ

●データ収集を最適化する

●段階的に導入する

●適切な相談相手を選ぶ

この5項目がレトロフィットIoTを成功に導き、ひいては工場のDX化につながります。

課題を明確にする

課題を明確にする必要があるのはレトロフィットIoTは万能ではないからです。例えばこの課題にはこのレトロフィットIoTが適している、といったイメージです。まずはレトロフィットIoTで解決できそうな課題を洗い出しましょう。

レトロフィットIoTで解決できる工場の課題には、生産量が低下している、生産効率が悪い、稼働率が低い、不良品が増えた、長時間労働などがあります。最も深刻な課題を、どのレトロフィットIoTを使って、どのように解決していくか――というように考えていきます。

対象にする機械・設備を選ぶ

課題が明確になったら、レトロフィットIoTを導入する機械・設備を選びます。例えば生産量の低下が課題になっていたら、生産のボトルネックになっている機械・設備を特定して、まずはそこにレトロフィットIoTを装備していきます。

データ収集を最適化する

機械・設備に取りつけるレトロフィットIoTはいわば、データ収集マシンです。そのため必要なデータを集めないと、効果は生まれません。つまりレトロフィットIoTに不要なデータを集めさせても意味がないわけです。

例えば、回転数が安定しないことで不良品が発生する機械があったら、回転数のデータを集めることができるセンサーを設置しなければなりません。電気系統に不安があれば、電圧・電流センサーが必要になります。

データ収集の最適化は、レトロフィットIoTの成功に欠かせない作業です。

段階的に導入する

レトロフィットIoTの導入は、小さく始めて大きくしていきましょう。これはIT化の原則でもあります。

機械・設備にセンサーやIoTゲートウェイなどを装着して、データを集めて、集めたデータを分析して、そのなかから改善策をみつけるには、スキルやノウハウが必要です。そのため、まずは1機(基)の機械・設備でレトロフィットIoTを成功させてから、段階的に次の機械・設備へと広げていきましょう。

適切な相談相手を選ぶ

レトロフィットIoTを軌道にのせるには、機械・設備の知識だけでなくITやIoT、DXの知識が必要です。もし製造業企業がIT関連の知識に自信がなければ、レトロフィットIoTの実績があるIT企業を頼ったほうがよいでしょう。

当社コネクシオは、製造業企業のレトロフィットIoTの豊富な実績を持つIT会社です。

「そもそもレトロフィットIoTとはなんなのか」といった素朴な質問から、「うちの工場に最適なレトロフィットIoTを選んで欲しい」といった深刻な悩みまで、コネクシオにご相談ください。 

まとめ~工場DXに最適

 製造業企業の経営者がDX化に危機感を持っていたら、レトロフィットは最有力選択肢になるでしょう。工場のDX化を阻む最大の要因はコストです。潤沢な資金があれば最新の機械・設備を導入することで生産性を高め、DXを成功に導くことができますが、すべての製造業企業がこの方法を採用できるわけではありません。

そこで次善の策になるのがレトロフィットなのです。既存の機械・設備をIoT化することで、工場内をほとんど変えることなく生産性を上げることができます。また、既存の機械・設備を使い続けることは、作業者を安心させることでしょう。

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