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【鉄と貧血の関係・前編】なぜ必要なのか、なぜ血が減るのか


息切れや疲れやすさは、貧血の代表的な症状です。貧血は大抵の場合、鉄不足で発症します。

この鉄は橋やビルなどに使われているあの鉄(Fe)と同じもので、人は体内では鉄をつくることができないので食べ物で補う必要があります。

人の血液を正常に維持するには、成人で3~5gほどの鉄を体内に蓄えておかなければなりません。体内の鉄が不足すると血液がうまく酸素を運べなくなり、酸素不足が貧血につながってしまうのです。

鉄不足と貧血の関係について、前編と後編にわけて解説します。この記事は前編になります。

貧血の症状は息切れや疲れやすさであり、クラクラではない

最近元気がない、すぐ息が切れる、疲れやすい。このような症状が起きたら貧血が疑われます。

鉄不足による貧血のことを鉄欠乏性貧血といいます。

なお、貧血の症状として、くらくらする感覚を挙げる方がいますが、貧血ではそうはなりません。ただ、くらくらする症状も血液に関係していて、低血圧の人が起こしやすい症状です。

参照:貧血の原因は?(国立長寿医療研究センター)

https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/11.html

女性に多いが男性も油断できない

貧血は体内の鉄不足で起きます。月経(生理)があって、妊娠・出産を経験する年代の女性の3人に1人は鉄が不足しているというデータがあります。そのため貧血は女性に多いというイメージが定着しているのでしょう。

ただ男性や閉経後の女性も油断できず、胃などの消化管で出血が起きていると貧血を起こすことがあります。出血→酸素を運べない→酸素不足→貧血という順に発症していきます。

外傷による大量出血であればすぐに気がついてすぐに治療できますが、消化管出血は本人ですら気づかないうちに起きることがあるので、やはり気づかないうちに貧血が起きる可能性があります。

消化管出血は鉄不足とは関係ない病気で起きることから、貧血がほかの病気のしるしになりうることがわかります。

貧血は放置しないほうがよいのです。

参照:鉄欠乏性貧血のはなし(大分大学医学部腫瘍・血液内科学講座)

https://www.med.oita-u.ac.jp/syuyou/ida.html

鉄が不足すると貧血が起きる仕組み

貧血は「血が貧しい状態にある」と書きますが、必ず血液量の低下が起きているわけではありません。ほかの病気を発症していなければ、血液中の赤血球のなかのヘモグロビンというタンパク質のなかのヘムという成分のなかの鉄が減って貧血を引き起こします。つまり以下のような関係になっているわけです。

●血液>赤血球>ヘモグロビン>ヘム>鉄

この関係こそが鉄不足が貧血を起こす仕組みです。

鉄が不足した「正常でない赤血球」は酸素をうまく運べなくなるから

なぜ鉄が減ると貧血が起きるのか。

そもそも貧血は体内の酸素不足で起きます。酸素が足りていないので、体が酸素を獲得しようと息を荒げるのが息切れです。そして体内の酸素が減ると基礎代謝に使うエネルギーが不足しがちになり疲れやすくなります。

血液は肺で酸素を受け取ってから、全身を駆け巡ってすべての細胞に酸素を供給しています。血液中で酸素を運んでいるのが赤血球です。

赤血球をつくっているものに鉄が含まれているので、鉄が不足すると「正常な赤血球」ではなくなってしまいます。正常でない赤血球は酸素をうまく運べないので全身が酸素不足になって貧血の症状が起きるわけです。

貧血は調べることができる

鉄欠乏性貧血や鉄不足を調べるには医療機関にかかって血液検査をする必要がありますが、それよりもっと簡単な方法があります。

民間企業が有料で行なっている検査です。

鉄欠乏性貧血の可能性の高さがわかる

ある会社の検査は、検査キットを郵便で受け取って、自身で少量の血液を採取して、それを郵便で会社に送り返すだけです。

こうした検査でわかることは以下のとおりです。

■検査でわかること

●鉄欠乏性貧血の可能性が高いかどうか

●将来的に鉄欠乏性貧血を発症するかどうか

貧血の可能性が判明すれば、鉄を多く含む食べ物を食べるといった対策を取ることができます。

検査キットで血液を数滴採取するだけ

なお検査キットでの血液の採取は、短くて細い針で指先を刺すだけで、痛みはほとんどなく、血液の量も数滴で済みます。医療機関での血液検査のように長くて太い針を使うこともないですし、あれほど大量の血液も要りません。

フェリチンを調べる

検査で調べるのはフェリチンという成分です。フェリチンは体内に鉄を保存しておく作用に関わっているタンパク質で、これが減っていれば「鉄欠乏性貧血の可能性が高い」または「将来的に鉄欠乏性貧血を発症する可能性がある」とわかります。

まとめと後編の予告

この記事の内容を箇条書きでまとめます。

●貧血の症状は息切れと疲れやすさ

●女性に多いが男性も油断しないで~病気が隠れているかも

●鉄不足で貧血が起きるのは全身に酸素が届きにくくなるから

次の【鉄と貧血の関係・後編】では、貧血を予防するために食事のなかで鉄を摂る方法を紹介します。

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