広告コピーライターが観なきゃいけない映画を観た。
コピーライター本を好きで買う人なら、誰でも知ってるエピソードがある。
それは、次のようなものだ。
盲目の音が路上でものごいをしていたら、あまり反響がなく困っていた。男を見かねた女は、男が持っていた紙に書いてある文言を次のように書き換え渡した。
「今日の青い空を、わたしは見ることもできません」
すると、次から次へと男のところにコインが投げ込まれた。コトバ次第で、他人を動かすことができることを示すエピソードだ。
(本によって、エピソードの内容に多少の違いがあります)
このシンプルなストーリーの紹介から、
この映画の特別試写会が始まった。
「ART©」
アメリカのコピーライターズクラブが制作した、知る人ぞ知る映画。
意外すぎる制作エピソードを話す広告クリエイター。
以下のエピソードは、広告コピー好きでも知らない人がいると思う。
アップルのTHINK DIFFERENT。
文法的に言えば、THINK DIFFERENCEが正しいらしいが、語感を重視して、あえて誤ったままにしたのは有名な話。
当時パソコン最大手だったIBMの THINKに対抗して、THINK DIFFERENTを打ち出したこのCMは、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックの当時のアップル社ツートップが、他の役員の反対を押し切り、自費で放映したらしい。
CM内に登場する、ヒトラーを彷彿とさせる指導者の虜になった民衆。これは、IBMのTHINK PADを盲目的に利用するユーザーのようだ。
目を覚ましなさい、とばかりに、アップルのTHINK DIFFERENTが炸裂して、民衆が目を覚ます内容。
テイストが暗く、今見るとホラー映画のワンシーンを切り取ったかのようなCM。
だがインパクトは、絶大。
ちなみに、英語のコピーは、文法より説得力を優先する傾向がある。
映画の中で紹介されるGOT MILK?キャンペーン。
こちらも、文法上では正しくない。
あくまで語感を大事にしてる。
わたしたち日本人は、日本語と同様に、英語も正しく整頓されたものにしようとする。
コピーであれば、さらにキチンと書こうとする。
良くも悪くも不自由なルールに囚われている。
でも、ホントに響くのは、文法的正しさじゃない。
口にしたときの快感だ。
そのコピーを聞いたとき、
心の中でさけびたくなるか、どうか。
正論だけど、つまらない意見はいらない。
これが、THINK DIFFERENTの精神。
きっと、そういうことなんだと思う。