売上の4分の1しかない仕事に労働時間の大半が使われている
今年2024年は「働き方改革の年」です。
働き方改革の必要性を共有するために、またまた百貨店個人営業(以下、外商)の話をします。外商を取り上げてはいますが、実態としてはどんな企業でもある話なのではないかと思います。
現状の外商の仕事の中心は催事(店内外イベント+お薦め商品)にあると指摘してきました。この働き方は、戦後~高度成長期のモノ不足(供給<需要)の時代にはそれなりに機能してきたのですが、モノが売れない時代になって、この働き方では売上があがらなくなってきました。だからこそ、「マーケティング」の知識や技術が必要になってきた訳です。しかし、1980年代~90年代前半のバブル経済を経験した経営者の中には、頭では分かっていても、働き方改革にまでには思いが至らない方も少なくないのではないでしょうか。
そんな時には、現状の働き方分析をしてみることをお勧めします。掲載した図は、某地方都市の百貨店外商の実態をヒアリングして描いたものです。売上の構成は以下のとおりです。
外商売上(100%)=催事売上(25%)+催事外売上(25%)+一人歩き売上(100%)
百貨店によって構成比の変動はあるのですが、それほど大きな違いはないと思います。
「催事売上」と「催事外売上」は担当者が直接関わった売上です。この「関わり売上」を評価している百貨店も多いです。全体の50%を占める「一人歩き売上」(担当者の直接的な関わりなく、自由に買い物した売上)は評価されなかったり、評価ウエイトが小さかったりするのです。外商部門としては催事を企画・運営します。ある程度の売上を作らないと今後の企画に販売部門が協力してくれなくなるので力を入れざるを得ない。
一方の「催事外売上」は外商担当が、顧客のニーズを踏まえて提案したり、日々の営業活動を通して培った関係性で顧客からお声を掛けて頂いたりということで成約する売上です。つまり、「催事外売上」は外商担当の個人的な力量に大きく依存します。従来のマネジメントは「催事売上」を中心としたものになっています。
では、労働時間の配分はかなりざっくりと分類していますが、以下のとおりです。
外商担当の労働時間(100%)=顧客対応時間(25%)+移動時間(25%)+受注・報告業務(25%)+広義の待機時間(25%)
「移動時間」は担当地域によっても大きく異なりますし、「受注・報告業務」はサポート担当の配置有無によっても変わります。「広義の待機時間」と言ってもボーっとしているわけではなくて、催事での待機時間や店頭での情報収集などもあるので、待機時間が少ない方が良いという訳でもありません。
考えなければならないのは催事中心主義の働き方です。「購買目的別の生産性効率」の図は、あくまでもイメージなのですが、催事や訪問販売は売上規模で考えても25%程度しかない。さらに売上の伸びも大きくは期待できない。顧客は自分のニーズを踏まえて買い物をしたい。ニーズに合致した商品があれば買い物をしたい…ですね。「オケージョン売上(催事外売上)」と「一人当たり売上」の方が明らかに成長性は高い。規模も大きい。
「顧客対応時間」と「移動時間」及びそれに伴う「受注報告業務」と「広義の待機時間」を総合すれば、労働時間の50%以上を占めます。それが全体の売上の25%程度に留まる。もし、売上を伸ばしていこうとするならば、「催事外売上」や「一人歩き売上」を伸ばす方向に働き方を変えていく。具体的には「移動時間」を圧縮したり、「受注・報告業務」の効率化や外商担当からの切り離しによって生み出した時間を幅広い顧客との接点活動に活用してくことを考えるべきでしょう。
こういった働き方改革の視点でぜひ皆さまの会社の仕事を確認してみるといろんな課題が見えてくると思います。