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1%の斬新さと99%の旧来システムでイノベーションを起こす組織開発
自由は不安定であり、不自由は安定的であるとも言われます。
何をしても良いと言われても、何をすれば良いかに迷うでしょう。
一方、「これをしろ」と強制されることはストレスですが、それさえすれば良いという安定は得られるでしょう。
さて、自由度を増すフラットな組織は、誰にとって幸せな組織なのでしょうか…。
フラットな組織とは?
経営学における「フラットな組織」とは、階層が少ない、あるいは階層がほとんどない組織のことを指すでしょう。
これは、メンバーが、より大きな自主性と責任を持つことで、情報の流れが迅速となり、情報それ自体に生じる歪みを減らし、意思決定を迅速に行えるような環境を創り出すことを目的にしていると見ることができそうです。
すなわち、管理職の数を少なくすれば、情報伝達にかかるタテの経路は短くなります。さらに、情報を受けた管理職の“考え”によって補正(あるいは歪曲)されることも少なるでしょう。
したがって、正確な情報で、経営トップは、素早く意思決定ができるということになります。
一方で、各メンバーにとっても、従来よりも多くの権限を持つことから、自ずと自律的に業務を進めることができるようになります。
しかし、それは同時に、より多くの責任を持つということにもなります。
そのため、個々のメンバーの負担を軽減するような、チームワーク求められます。
それは、単に特定の集団で“仲が良い”状態になることではなく、より多くのメンバーとネットワークが組める状態になることを意味するでしょう。
その点で、フラットな組織であるためには、チーム間の協力が促進される、垣根の低い組織であることも、その条件の1つと言えそうです。
“顔の見える存在”としてのメンバー
このようなフラットな組織は、主にスタートアップ企業で見られることが多いでしょう。なぜなら、そこには、メンバー相互のリスペクトがあるからだと思われます。
例えば、1つの企業となるためには、商品を生み出す人、お金を管理する人、法人として成立させる人が必要です。そして、互いを信用していなければ、自身の役割に没頭することはできません。
だから、少数で立ち上がるスタートアップ企業は、フラットな組織として出発するのだと思われます。
そして、スタートアップ企業が終わるのも、事業の失敗という以前に、おそらく、この“信頼”(リスペクト)が失われることから始まるのではないでしょうか。
一方、より大きく組織が発展したり、あるいは、既に大きな組織でフラットな組織の構築を模索したりする場合はどうでしょうか。
「今日から、メンバーだ」と紹介されても、いきなり、その人をリスペクトすることはできないでしょう。
おそらく、何かリスペクトできる瞬間が訪れるまでは、表面的な関係にしか過ぎないのが、普通ではないでしょうか。
メンバー相互が“顔に見える存在”になって初めて、その組織は、フラットな組織になれるのだと思います。
同等なリスペクトがフラットな関係を生む
リスペクトという視点で組織を捉えたとき、そこにはフラットな関係が生まれてくるのだと思われます。
例えば、詩人としての谷川俊太郎氏と、その元妻の関係性を想像してみましょう。
谷川氏の元妻は、詩人としての谷川俊太郎氏を尊敬していたでしょう。しかし彼女は、谷川氏を評して、「無常識人」と言いました。
ここで、詩人としての谷川俊太郎氏を尊敬しているとき、元妻は、谷川氏の下に位置づけられます。
しかし、生活という場面においては、おそらく谷川氏は、そのすべてを元妻に委ねていたことでしょう。したがって、生活と言う場面では、谷川氏が元妻の下に位置づけられるということです。
つまり、ある場面では自身が上であり、別の場面では下になるという関係性があり、総体としてバランスが保てているとき、それはフラットな関係になるのでしょう。そして、それが成立して間は、両者の夫婦関係も円満だったのだと思われます。
ここから、フラットな関係を維持するためには、相互にリスペクトできること、そして、それが同等であると認識されていることが重要であることが見て取れる思います。
“公平性”を担保する“同等”がフラット化を効果的にする
ここで、同等であることは、ときに公平性を求めることに繋がります。
例えば、「この絵が100万円で売れたのは、私が生活を支えたからだ」と主張する場面は、遺産相続でもめるドラマで、よく目にするところです。
フラットな組織を標榜する会社で、その成果に対する評価、すなわち給料が、年功序列的に決まっていたりすると、社員から不満の声が上がるのではないでしょうか。
しかし、その業務において、年長者は、より多くの経験を積んでおり、そこで自身が得られたものは、そう多くはないかもしれません。
一方、経験の少ない若手は、より多くのものを手に入れることができたはずです。
すなわち、業務を通じて、年長者が得られる無形の資産は少なく、若者にはそれが多いため、公平性という観点から、年長者により多くの給与が支払われることになると考えることもできそうです。
このように考えると、無形資産の価値が高いクリエイティブな組織ほど、フラットな組織が効果的であると言えるかもしれません。
また、職人的な“技”が重視される組織や、前例踏襲的な組織であっても、自組織をフラット化することは、一定の効果はあると思われます。
すなわち、そのような文化の意義を、若手も身を持って知る機会を得ることができるからです。
しかし、このような組織が、自組織に革新(イノベーション)を求めるカンフル剤として組織のフラット化を求めるとすると、公平性が担保できなくなり、上手く機能しないのではないでしょうか。
すなわち、「旧態依然の慣習を破ったから成功した」と自負する若者は、おそらく、得るべき無形資産はなく、むしろ自分が提供したと考えるでしょう。
そうであれば、ベテランは、新しい無形資産を手に入れたばかりでなく、給料という有形財も、より多く手にすることになります。
これでは、若者の不満が増大するばかりではないでしょうか。
成功するフラットな組織とは?
電気自動車の開発で先駆者とも言われている方は、「電気自動車は、エンジン自動車とは、あらゆる点で別物であり、エンジン自動車といくら比較しても、電気自動車のことはわからない」と、激しい口調で述べていました。
おそらく、自動車であること以外は、すべてが違うということの理解を得るのに、相当の時間がかかったのだと推察されます。
新しいことを受け入れるためには、新しいことを、丸ごと受け入れる必要があります。しかし、多くの場合、その“違い”に目がいき、全体を丸ごと受け入れることができません。
とくに、イノベーションを急ぐ組織ほど、「従来通りで良いところは残して…」と考えることが、合理的だと思えるからでしょう。
あるいは、「従来通り」に、一定のノウハウ(インセンティブ)があると考えている場合は、それを活かしたいと考えるからかもしれません。
「石橋を叩いて渡る」ような経営方針であれば、従来の階層型組織のほうが良いでしょう。それは、管理職が、ろ過機のような役割を果たし、多ければ多いほど、不純物を取りぞくからです。
しかし、それが“方針”ではなく“文化”だとすれば、その根源を探る必要があるでしょう。
かつてエジソンは、「天才とは、1%の才能と、99%の努力で成される」という主旨の言葉を発したと言われます。
換言すれば、業務におけるイノベーションとは、「1%の斬新さと、99%の旧来システムで成される」のかもしれません。
おそらくフラットな組織が成功する組織とは、そのように新しい知識を吸収できる組織であるように思われます。
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