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現在進行形のショック・ドクトリン

ディープステート、グローバリズム、ネオコン、ロスチャイルド、ユダヤ金融資本。。。このようないわゆる陰謀論がネットを賑わしています。

スター・ウォーズにおけるダークサイドのようなわかりやすい世界であれば、まだ救われるのですが、現在のダークサイドは、文字通り闇であり、その姿は見えません。

スター・ウォーズのダークサイドは、恐れや怒り、憎しみ、攻撃性といった暗い感情から力を引き出します。同じようにショック・ドクトリンは、大惨事などによるショック状態を利用します。

ショック・ドクトリンを知ることで、世の中で起こっている出来事に対して、新しい視点を得ることができ、出来事を立体的に見ることができるようになります。これはショック・ドクトリンだと知ることで、対抗することができます。

以下は、NHK 100分de名著2023年6月号堤未果のショック・ドクトリンの抜書きに、私の意見を付け加えたものです。ショック・ドクトリンを知るきっかけにしていただければ幸いです。

ショック・ドクトリンとは

2023年6月のNHK 100分de名著のテーマはショック・ドクトリンでした。この番組を視聴して文字通りショックを受けた人も多いのではないでしょうか。

戦争やクーデター、テロ攻撃や大規模な自然災害が起きた時、政府は民衆に何をしてくれるのだろうか?
カナダ出身のジャーナリスト、ナオミ・クラインは、「政府にとって大惨事(ショック)は民衆を思いのままに支配する政策(ドクトリン)を実行に移す、絶好のチャンスである」と言います。

崩落したツインタワー

2001年9月11日、旅客機4機がハイジャックされ、そのうち2機が世界貿易センタービルに突入、ツインタワーを崩壊させました。アメリカ同時多発テロ事件です。
この時、米国の政権中枢にいたのはブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ラムズフェルト国防長官でした。フリードマンの教えを政策の柱とする彼らは、この大惨事を最大の契機と捉え、アメリカを「株式会社化する国家」へと一変させます。この惨事を境にアメリカという国が、極めてラディカルに、スピーディーに根底から変えられていったのです。

国連決議なしで、アフガニスタンやイラクに軍事侵攻し、国内監視を合法化する法律が即座に成立し、あっという間に国中に3000万台の監視カメラが取り付けられます。
マスコミは連日横並びでテロの脅威と愛国心を煽り、「テロとの戦争」への疑問や批判の言論は抑え込まれ、巨額な戦争関連予算が湯水のように使われていったのです。

これによって、セキュリティ産業が巨大産業となり、軍需産業は莫大な利益を上げます。政府は、国家を無制限の緊急事態に置くことで、国民監視と言論統制を行います。まさに、回転ドアを行き来する政商たちが税金を使って、無期限に、無尽蔵に利益を得るという略奪システムが定着したのです。

このように大惨事で国民がショック状態にあることを利用して、予め準備した政策を実行するのが、ショック・ドクトリンです。もちろん大惨事が起こるのを待つだけでなく、大惨事を引き起こすことができれば、より効率的です。

資本主義と民主主義

様々な国の形態がありますが、理想は資本主義と民主主義、私たちは、そのように教わってきました。いろいろ不満はあるけれど、少なくとも他の形態と比べれば一番マシだとみんな思っています。

資本主義というのは金が全てという主義。たとえば株式会社の最重要課題は利益を上げ続けること、利益を最大化することです。会社の方針は、持ち株数に比例した議決権により決定されます。誰か一人が過半数の株式を持っていれば、他の誰がどう言おうと、その人の意見が通ります。そして利益は持ち株数に比例して配分されます。
つまり会社は株主のものであり、経営者も、従業員も、顧客も、利益を上げるための手段である、というのが資本主義の基本的な考えです。

その結果、強い会社がどんどん大きくなって寡占化が進み、弱い会社が潰れていきます。

商店街がシャッター通りになって、郊外のショッピングセンターだけが賑わったり、街のナショナルショップがなくなって、家電量販店ができたり、と言ったことも、資本主義の必然です。

ネットの世界では、それが顕著で、いわゆるGAFAM(グーグル、アマゾン、Facebook、アップル、マイクロソフト)などのビッグテックが世界を制覇しています。

資本主義は弱肉強食の世界なので、放置すれば、世界全体での寡占化が進み、貧富の差が広がります。1%の富豪が世界の富の4割近くを所有し、成人の50%、25億8500万人の貧者の富は、全部合わせても、たったの2%に過ぎません。

ピケティの指摘を待つまでもなく、この傾向はますます強くなっています。世界長者番付け一位(2023年)のベルナール・アルノー(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の資産はなんと29兆円です。

1%の富豪が世界の富の38%を持っている

このような資本主義にブレーキをかけるのが、民主主義です。
民主主義では、富豪でも貧乏人でも、あるいは賢者でも愚者でも、全ての人が平等に議決権を持ちます。

すべての人が平等の権利を持つ選挙によって、政治家を選出し、政治家は票を入れてくれた人の代理人として、政策決定に関与するのです。
相対的に弱者の意見が強くなる結果として、国は、格差が広がらないように、企業活動に対して規制を行うとともに、教育、電気ガス水道、など公共性の高いものについては、国が事業を行います。また富豪からより多くの税金を取り、社会保障制度を充実させるなど、所得の再分配を行うのです。

資本主義では、大半が弱者となりますが、その弱者が一番多くの議決権を持つからこそ、資本主義の弱点を補うことができるというわけです。

ただ実際には、金持ちが政治献金やロビー活動を通して政治家を動かしています。それはアメリカで特に顕著であり、日本でも弱者の意見が政治に反映されているとは言い難い状況です。

新自由主義

資本主義における勝ち組にとって、民主主義は面白くありません。規制は自分たちが儲ける自由を奪う足枷です。せっかく儲けた金を税金として取られたくありません。公共事業を含めてすべての事業領域で、お金儲けをしたいと思っています。

そんな勝ち組の前に現れたのが、米国の経済学者ミルトン・フリードマンが提言する新自由主義(ネオリベラリズム)です。

ミルトン・フリードマン(wikipediaより)

政府は市場に介入するべきではない。政府が下手に介入さえしなければ、市場は自ら完璧に機能する、というアダム・スミスの考えをより推し進めた考えで、具体的には次の3つを主張します。

  1. 政府による規制の緩和

  2. 学校や公共インフラも含めた民営化

  3. 医療・教育・労働者などの社会保障切り捨て

この理論を、銀行家、多国籍企業、投資家など、資本主義の勝ち組が支持しました。再分配など気にせず、自由に好きなだけ儲けたいと願う人にとって、願ってもない理論です。

具体的には、シカゴ大学のフリードマン教授にお金を注ぎ込み、世界中の優秀な若者に奨学金を出して、シカゴ大学に送り込みます。マスコミを動かして、フリードマン理論を絶賛します。

このようにしてフリードマンの考えに染まった若者、フリードマンチルドレンは、国に戻り、政権や財界の重要ポストを占めるようになります。
彼らがシカゴボーイズであり、ショック・ドクトリンの実行の中核メンバーとなっていきます。

ロシアによるショック・ドクトリンとプーチン

ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領はグラスノスチとペレストロイカを進め、ソ連を段階的に民主化しようとしていました。10年から15年をかけてゆっくりと社会民主主義に移行しようと考えていたのです。

ミハイル・ゴルバチョフ(wikipediaより)

1991年7月、初めてG7に参加したゴルバチョフは、シカゴ学派に支配されているG7のメンバーから、そんなのんびりした計画はダメだ、急進的に進めるべきだ、と集中砲火を浴びます。そしてIMFや世界銀行から債務免除を断わられます。ゴルバチョフは四面楚歌となりました。

8月には、ゴルバチョフを排除しようとする、保守派のソ連共産党幹部や軍関係者によるクーデターが起こります。これはロシア共和国の大統領だったエリツィンによって阻止されましたが、ソ連共産党の権威は失墜し、12月のソ連解体につながります。

ソ連崩壊後、8月クーデター阻止で名を挙げたエリツィンがロシア連邦の初代大統領となりました。

ボリス・エリツィン(wikipediaより)

ショック・ドクトリンの好機到来と、西側の政府、メディア、IMF、世界銀行、国際金融資本は、エリツィンを熱烈に支持します。
国民がソ連崩壊のショック状態にあるあいだに、ロシア版シカゴボーイズがエリツィン政権の閣僚に就任し、価格統制廃止、貿易自由化、国有企業22万5000社の段階的民営化を実施、これが第二のショックとなって、ロシア国民は完全な放心状態になります。

インフレで中産階級は老後資金を失い、社会保障カットが労働者を生活苦のどん底に突き落としました。
有権者からの圧力を受けた議員たちは、エリツィンの暴走を止めるべく、大統領権限を無効化します。これに対してエリツィンは非常事態宣言を発令しますが、ロシア憲法裁判所は、非常事態宣言を違憲と裁定します。

エリツィンはアメリカの支援をバックに、大統領令で憲法を停止し、議会の解散を発表。これに反発した議員たちが議会に閉じこもると、軍に議会を包囲して攻撃させ、政府推計で死者187人負傷者437人、別の説では死者2000人という凄惨なクーデター(10月政変)を起こしたのです。

このようにして独裁体制を築いたエリツィンは、国家資産のバーゲンセールを行います。

たとえばミハイル・ホドルコフスキーは、1995年、ロシア政府の所有であり、石油産業の主要企業の一つであったユコス石油を買収しました。この資金はロシア民営化基金やロシア国内外の銀行からの融資、外国投資家から投資でまかないます。つまり超安売りされる国有企業を国の金や外国資本で購入したわけです。

これによってホドルコフスキーは有数の資産家となりました。同じようにして大金持ちになった人がたくさんいました。

このようにシカゴボーイズと手を組んで莫大な利益を得て誕生したのが、ロシアの新興財閥であるオリガルヒです。

オリガルヒ、ロシア政権内のシカゴボーイズ、ウォール街のファンドマネジャーらが結託し、ロシアという国を略奪し尽くしたのです。農場の8割が破産し、7万軒の国営工場が閉鎖され、失業者、自殺者、アルコール依存症、殺人件数が激増します。

大衆の不満を受け止め、反エリツィンのオリガルヒの支援を受けて大統領になったのがウラジミール・プーチンです。

プーチンは大統領になると、エリツィンを追い出し、エリツィン派のオリガルヒを逮捕、投獄し、国外に追放します。ホドルコフスキーも逮捕され、ユコス石油は資産を没収され、解体されました。プーチンに従うオリガルヒだけが生存を許されました。

ウラジミール・プーチン(wikipediaより)

これをきっかけに、アメリカを始めとするシカゴ学派とプーチンは完全に敵対関係となったのです。

ペトロダラーとイラク戦争

時代を遡って1971年8月、ニクソン米大統領が金とドルの交換停止を発表しました。それにも関わらず、ドルが世界の基軸通貨であり続けられたのは、石油取引がドルで行われているからです。

アラブ産油国とアメリカには密約があるとの噂があります。「アラブ諸国は石油取引をすべてドル建てで行う。その見返りとしてアメリカはアラブ産油国の政権を守る」というわけです。

これに対して反旗を翻したのがイラクのフセイン大統領です。EUの通貨統合でユーロが誕生した2000年9月、フセインはユーロ建て石油取引を表明、11月にはドル建てによる石油取引を停止します。

サッダーム・フセイン(wikipediaより)

これはアメリカにとって、あるいはFRB(連邦準備銀行)を支配する金融資本にとって、絶対に許せない事態です。これを許すとドル支配が崩れてしまいます。

そこで9.11の後、「テロとの戦争」を錦の御旗として自由に戦争を始める力を持ったアメリカは、チャンス到来とばかり、「イラクは大量破壊兵器を保有している。サダム・フセインは民主主義の敵だ」という捏造のキャンペーンを繰り広げ、イラクに侵攻します。その名も衝撃と恐怖(Shock and Awe)作戦です。

2003年3月から5月にかけて、3万発以上の爆弾と2万発の巡航ミサイルで空爆し、しかもその映像をショーとして流します。このようにしてイラク国民をショックのどん底に突き落としたのです。

その後バグダッドに入った占領軍は、戦火で横行していた略奪行為を意図的に放置します。博物館が破壊され、文化財が持ち去られ、1000年前のコーランごとモスクが全焼します。

このようにイラクの文化や伝統、歴史や宗教など、民族的アイデンティティすべてを白紙の状態にした上で、貿易を自由化したのです。

破壊されたバグダッドの町に「中国製テレビ、ハリウッド映画のDVD、ヨルダン製の衛星アンテナ」などが溢れます。公務員は解雇され、警察は解体、一万種以上を保存していた種の貯蔵庫は爆撃で跡形もなくなりました。

破壊と再建の両方で、その任務を請け負った企業に莫大な利益がころがりこみました。敗者はイラク国民とアメリカの納税者です。

このようにして、9.11とイラク戦争は、「戦争と再建の民営化モデル」となったのです。惨事が起きる場所なら、あるいは起こせる場所ならどこでも、ショック・ドクトリンを仕掛けられるようになったのです。

3.11

日本における最近の大惨事といえば、東日本大震災ですが、これもショック・ドクトリンとは無縁ではいられませんでした。

事故が発生した東京電力福島第一原子力発電所

津波による原発事故で、国内すべての原子力発電所が停止しました。そのときに「日本を再エネで復興したい」と手を挙げてきたのがソフトバンクの孫正義氏でした。

菅直人総理は孫氏の提案を取り入れた「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」をスピード導入し、1kW 42円という大盤振る舞いを決定します。

それを受けて孫正義氏は都道府県の首長に「自然エネルギー協議会」への参加を勧誘します。そして多くの自治体が土地を提供し、メガソーラーの設置をソフトバンクに発注します。

このようにして発電された電気を普通の電気よりはるかに高い価格で買い取るお金は、我々が「再エネ賦課金」として負担しています。2012年からの10年間の総計は22兆円です。

このように作られたメガソーラーが、山林という環境を破壊し、土砂崩れなどの災害を引き起こしていることはみなさんご存知の通りです。

コロナパンデミック

コロナでは、世界を舞台にショック・ドクトリンが実行されました。

2020年5月、トランプ大統領はワクチンをワープスピードで開発・製造すると発表しました。そして通常5年から10年かかるワクチン開発を8ヶ月に短縮しました。そのために一兆円以上の政府予算が注ぎ込まれています。
ワクチン開発で最も時間がかかるのは安全性の確認です。8ヶ月で開発できるなんてありえません。緊急事態との名の下に、これらの工程を全部すっ飛ばしたということです。

それどころか、プロジェクトヴェリタスのおとり取材に引っかかったファイザーの役員が、機能獲得実験をして、パンデミックの前にワクチンの準備をしていたことを認めています。これはCOVIDが人工ウイルスであり、ウイルスとワクチンをセットで作り出していることを示唆しています。

ワクチンを許可するのはアメリカFDAのワクチン諮問委員会でしたが、これらのメンバーにはファイザー関係者が多くいました。FDA長官はファイザーの取締役にヘッドハンティングされています。

WHOも同じです。このようにパンデミックに関しての重要な判断を行う組織の重要メンバーが、製薬会社との間の回転ドアを通って行き来しているのです。

日本ではどうだったでしょう。

新型コロナ対策にあたる政府分科会の尾身茂会長について見てみましょう。
彼は独立行政法人 地域医療機能推進機構の理事長を2022年の3月まで務めていました。その地域医療機能推進機構は、2020年、2021年と業績を劇的に向上させ、純資産を2年間で600億円以上増やしています。2022年の財務諸表は未発表ですが、おそらく2021年並かそれ以上の好業績でしょう。尾身茂会長は類稀な経営者でした。

地域医療機能推進機構の利益と純資産増加

感染症対策アドバイザリーボードやワクチン分科会の委員にも、ファイザー出身者や、ファイザーに移った人がいます。

日本政府が購入したワクチンは2022年3月までで8億8200万回分で、総額2兆4037億円です。そして、その購入判断に関わるところに、ファイザーやモデルナの関係者がいるという構図です。

普通ならありえないことが、コロナショックの元で堂々と行われているのです。

マイナンバーカード

マイナンバーカードの推進もコロナショック・ドクトリンの一つです。

マイナンバーとマイナンバーカードは別物です。

マイナンバーは、行政の効率化を目的としたもので、2015年10月以降、全国民に通知がなされています。マイナンバー導入のポイントは3つです。
1.国民の利便性の向上
 社会保障・税関系の申請時に、課税証明書などの添付書類が削減されるなど、面倒な手続が簡単になります
2.行政の効率化
 国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、これまで相当な時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に削減され、手続が正確でスムーズになります
3.公平・公正な社会の実現
 国民の所得状況等が把握しやすくなり、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止、さらに本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になります

このような行政の効率化は重要であり、国民への番号付与とシステム化は必要であると思われます。

一方で、違う人の住民票が出てきたなど、大騒ぎになっているマイナンバーカードは、マイナンバーとは別物です。

マイナンバーは「社会保障と税の番号制度」に基づいたもので、すべての国民に強制的に12桁の番号が割り振られています。目的は行政のデジタル化と効率化です。

一方、マイナンバーカードは「国民ID制度」に基づくもので、強制ではなく任意です。本人証明と、個人情報の幅広い収集提供が目的です。

個人情報を集めることが目的なので、強制はできません。なのであの手この手で、マイナンバーカードを取得させ、わからないようにさり気なく本人の同意をとって、個人情報を集めようとしているのです。

堤未果のショック・ドクトリンでは、一章をまるまる使い、「マイナンバーという国民監視テク」として、問題視しています。

マイナポイントで2万円という餌をちらつかせたものの、申込みが進まないと見るや、強引さに定評のある河野デジタル大臣は「健康保険証を廃止する」と言い始めました。

このように義務ではないのに、選択肢を奪って事実上強制するのは、ショック・ドクトリンの常套手段です。れっきとした違法行為です。ここまでして進めようとしているとき、メディアが揃って河野デジタル大臣を「突破力」として褒め称え、「カードを作らない人は国に知られては困ることがあるのでは」などと脅す時は、要注意です。何が企まれているのかを、じっくり考える必要があります。

マイナンバー制度で行政の効率化は十分可能です。堤未果氏によると、カードがないとできないことは2つです。

  1. 全国民の金融資産をリアルタイムで完全に把握する

  2. 国民の思想と行動を把握する

いくらなんでも、と思うかも知れません。でもカナダには実例があります。

2022年1月、カナダはワクチン接種の義務化を、国境を通過して入国するトラック運転手にも適用しました。義務化に反対するトラック運転手は抗議のために数百台の車列でオタワに集結し、道を閉鎖しました(トラックコンボイ)。
これに対してトルドー首相は非常事態法を宣言し、この活動に参加したトラック運転手や支援を行った人の預金口座を封鎖します。
その結果、封鎖を恐れた人による銀行預金の取り付け騒ぎが発生。銀行からの要請を受けて、口座の封鎖は解除されましたが、政府がこのようなことを実際に行う恐れは十分にあるということがわかります。

ウクライナ

今まさに進行中のウクライナ戦争も、大規模で世界を巻き込んだショック・ドクトリンです。

邪悪な独裁者プーチンが可哀想なウクライナを奪おうとしている。民主主義を守るため、みんなで助けましょう。

そんな単純な話ではありません。

ロシアによるショック・ドクトリンとプーチンのところでも述べましたが、プーチンはアメリカを中心とする「ダークサイド」にとって敵対する相手です。ウクライナ戦争は、実質的にアメリカのダークサイドとプーチンの戦争であり、2014年、あるいはそれ以前から始まっている戦争なのです。

もちろんプーチンは政敵を毒殺することも厭わない独裁者ですが、だからといってゼレンスキーが正義というわけでもありません。ゼレンスキーも「民主主義を守るため」に異論を許さず、政敵を排除しています。

今回の戦争がプーチンの目からはどのように見えているのかも考えないと、本当のところは見えてきません。

また、この戦争で誰が利益を得ているのか、仮にウクライナが勝利したとして、誰が利益を得るのかを考えることが重要です。

まとめ

NHK 100分de名著2023年6月号の最終ページを引用してまとめに代えたいと思います。

今は独裁者や悪い王様など、わかりやすい敵を倒せばいいという時代ではありません。二十一世紀のショック・ドクトリンの最大の特徴は、敵の顔が見えないことです。今日の味方が明日の敵にもなる。すべてはお金で動いていくので、敵の姿が見えたと思っても、それはどんどん変わり、複雑に絡み合うので、追いきれません。

犯人探しは国民を分断し、撹乱し、戦うべき相手を見誤ります。

物事を深く、長く、広く見る力を失い、自分の頭で考えることを放棄してしまった時、ショック・ドクトリンは牙を剥き、私たちはいとも簡単に餌食にされてしまうのです。

相手は人間ではなく、はてなき欲望を現実化するための「方法論」に他なりません。それを打ち負かせる武器はたった一つ、物事を俯瞰して眺め、本質をすくい上げる、人間の「知性」なのです。

勝者だけが語る物語とは別の、弱者から見たもう一つの歴史を紐解くことで、私たちは過ぎ去った時間を味方にできることに気づくでしょう。

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