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いつか、靴に砂が入らなくなる日
週末の午後、息子と公園に遊びに来ていた。
いつの間にか、5月も終わろうとしている。
いつの間にか、すごく日が長くなって夏のよう。
夏が好きだ。
一日は長く、いつまでも好きなことをしていてよいような
気分にさせてくれる。
それでも、一人で熱心に砂遊びをしている息子を眺めているうちに、
ゆるゆると日は傾き始める。
周囲のママと子供達は順番に帰り始める。
私も普段ならそろそろ帰ろうと息子を急き立て始まるタイミングだ。
彼を寝かしつける時間から逆算し、そこに至るまでの多くの工程を考えればそろそろリミットなのだから、致し方ない。
まぁ、まだいいか。
今日はお休みで、そして、私は温かい夕暮れに弛緩して、凪いでいる。
お腹もまだ空かない。
たまにはとことん付き合おう、そう決めると、
ますます気持ちが凪いでいく。
ほんの少しずつ、優しく青くなっていく空気の中でぼんやりする。
息子は熱心に砂を集め、水を入れてこね、葉っぱや木の実を洗って
料理を作っている。
気づくと、高校生くらいの男の子が二人、いかにも楽しそうに
公園の端にあるブランコに乗りながらしゃべっているのに気付いた。
そして、彼らは勢いをつけて、それぞれの靴を一つずつ順番に飛ばした。
正直、ちょっと呆れながら眺めていた。
高校生にもなって?
黒いスニーカー、砂で真っ白になりそう。
てか、二人とも片足ずつ飛ばしたらどうやって取りに行くの?
ケンケンで??
二人はとても楽しそうに、どちらが遠くまで飛ばせるか何度も競い合っている。
見ているこっちも、だんだんそのしょうもなさが面白くなってきた。
靴を取りに行くときはやはりケンケンだった。
靴にたどり着くと、ざらっと砂を出して足を突っ込む。
どっちが遠くまで飛ばしたとか、笑いながら言い合ってたりしている。
その様子に、この時間が彼らにとっていつか大事な時間になると気づく。
ようやく息子が帰る気になってくれた時、時計は7時をすっかり廻っていた。
自転車の後ろの指定席に乗ると、こちらも靴を脱ぎ、砂を捨てて履き直す。
彼の靴、いや子供の靴には、たいていいつも砂が入っている。
思いだせば、私も子供の時はしょっちゅう靴を脱いで砂を捨てていた気がする。
高校生の彼らの靴にも砂が入っている。
いつから、靴に砂が入らなくなったのだろう?
もしかしたら、大人になると靴に砂が入らなくなるのかもしれない。
大人になっても、靴に砂が入っている時、子供に近くなっているのかもしれない。
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