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野村萬斎スペシャル・インタビュー
野村萬斎(石川県立音楽堂アーティスティック・クリエイティブ・ディレクター)が1月・2月・3月と音楽堂に登場。「オーケストラとの共演」 「二人三番叟」 「新作狂言」とそれぞれにジャンルも魅力も異なる公演が続きます。それぞれの見どころを語っていただきました。
①萬斎のおもちゃ箱 「真夏の夜の夢」
メンデルスゾーン×狂言×琉球舞踊!? 斬新なコラボで楽しむ名曲の数々。
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野村萬斎さんが自由な発想で舞台を創造する「萬斎のおもちゃ箱」。第3弾は「真夏の夜の夢」。シェイクスピアの同作品の劇音楽としてメンデルスゾーンが手がけた傑作 だ。あの「結婚行進曲」を擁する作品としても知られる。
見どころは狂言と琉球舞踊とのマッチングだ。この作品と狂言との相性の良さには理由があると萬斎さんは語る。
「この作品のようにすれ違ったり間が抜けていたりという人間の滑稽な部分を表現した喜劇を観ることで心の浄化を感じることがあると思うんですが、それは狂言の真骨頂でもあるんです。また、シェイクスピア作品の魅力はやはり詩による表現にある。狂言の朗唱術が生きる部分だと思います」
物語は、貴族と職人による人間界と妖精界が絡み合って展開する。タイトルは「真夏」となっているが、ここでは一年で最も夜が短 い夏至を指す。ヨーロッパではこの日の夜に妖精たちが舞い降りてくると伝わり、舞台では琉球舞踊によって華やかに表現される。
「いよいよ夏が来るという狂騒感のなかで、 妖精たちや人間たちの色恋沙汰が展開されます。独特の衣装をまとい、花笠を手にした琉球舞踊の方々による南国風の優美な妖精も、楽しみにしていただきたいですね」
異ジャンルが融合し、まさにおもちゃ箱のような楽しさに満ちた奇想天外な舞台に期待したい。
②萬斎の新春玉手箱 「二人三番叟」
新年の幕開けはこれで決まり! 狂言師と日本舞踊家の華麗なるバトル。
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新春を日本の伝統芸能とともに寿ぐ「萬斎の新春玉手箱」。2024年の野村裕基さんと歌舞伎俳優の中村鷹之資さんに続き、今回は萬斎さんと日本舞踊家の尾上菊之丞さんが「二人三番叟」を踏む。
萬斎さんの「三番叟」といえば、天皇陛下即位の晩餐会では歌舞伎俳優の市川海老蔵(現・團十郎)さん、文楽の人形遣いで人間国宝の吉田玉男さんと共演したことも記憶に新しい。今回共演する菊之丞さんは、歌舞伎のほか宝塚歌劇やフィギュアスケー トのアイスショーなどの振り付けにも携わるなど、多彩な活躍が注目される。
「日本舞踊ならではのダンスのニュアンスも期待して共演を依頼しました」
当日は、二つの三間四方の舞台が並べられる。
「まるでボクシングのリングのように見えるかもしれませんね(笑)。 観客のみなさんには二人の対比するエネルギーをぜひ感じていただき たい。菊之丞さんは、狂言師の茂山逸平さんとはすでに『三番叟』 を共演されているそうなので、こちらとのお手合わせはどうなるの か、私自身も楽しみです」
このほか、柳亭市馬さんによる落語「七段目」、ひろしま神楽団による神楽「八岐大蛇」 も上演。一年の幕開けを華やかに彩る。
③狂言&オペラ「日本昔ばなし」
アップデートし続ける新作狂言に注目。シェイクスピア作品との共通項も。
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「日本昔ばなし」を狂言とオペラで楽しむユニークな試み。狂言「彦市ばなし」は昭和の劇作家・木下順二さんによる、熊本・八代地方ゆかりの民話劇がベースになっている。八代弁のセリフが興味深い。萬斎さんは彦市を演じる。
「八代弁は狂言の抑揚にぴったり。彦市は狂言における太郎冠者のような存在で、うそがばれて破綻していく様子が見どころです」
彦市のほか殿様、天狗の子が登場。職人、貴族、妖精が登場する『真夏の夜の夢』 の設定と重なる。
「木下さんはシェイクスピアを研究した方として も知られていますから、もしかしたら意識していたのかもしれませんね。そのあたりも気にかけて 観ていただくと、より深く作品を味わえるのでは」
ぜひOEKとの『真夏の夜の夢』(2025年2月22日開催)と合せて楽しんでほしい。
この作品が狂言として最初に上演された のは1955年。当時は萬斎さんの父・野村万作さんが天狗の子を演じた。今回は裕基さんが演じる。
「昭和の狂言の新作が古典化し、さらに現在進行形でアップデートし続けています。その瞬間を目撃できる貴重な機会になると思います」