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【1/11・定期公演聴きどころ】OEKならではの凛ときりりとしたワルツの世界を堪能しよう

第489回定期公演フィルハーモニー・シリーズ

 ニューイヤー・コンサートと題されるコンサートは、ほぼヨハン・シュトラウス2世のウインナー・ ワルツ、ポルカで構成されるのが定番だ。そうで あることが当然の暗黙の了解としてなされている。クレメンス・クラウスがウィーン・フィルハーモ ニー管弦楽団とともに始めたニューイヤー・コンサートは創設時には政治的思惑が強いイヴェントであったかもしれない。しかし第二次世界大戦後はその政治性を落とす。そしてもう一つの性格である社会風刺的で高い娯楽性を備えていた部分と結びつきを強めて、「ニューイヤー・ コンサート」=「シュトラウス・ファミリーの音楽」 という型として再生して全世界的な広がりを見せた。日本では年末の第九、新年のシュトラウ ス・ファミリー、ドヴォルザーク《新世界交響曲》 が年末年始の型であり、今やクラシック音楽文化だ。 「ニューイヤー・コンサート」を「型」として無意識のうちに受け入れていると気が付かないが、 2025年はヨハン・シュトラウス2世の生誕200 年の記念年。松井慶太とOEKもワルツの王の有名ナンバーでプログラムを組んだ。鈴木玲奈のコロラトゥーラ・ソプラノの歌声も新春に華やかさを加えてくれるに違いない。ただ聴き手としてここで注意しなければならないことがある。「ウィーン・フィルだったらこういう音のはず」、「カラヤンやクライバーと比較すると」という言説だ。社会を風刺した、 世情と人間の生きざまを考えさせる作品を 生み出していた作曲家の作品は、紋切り型 な基準で価値判断をしては勿体ない。もっと 多様な解釈を受け入れる懐の深い音楽で あるはずだ。室内オーケストラならではの凛 と、きりりとした感じ、OEKならではのローカ ル色を投影したワルツの世界を地のものを 堪能するように味わってもらいたい。  没後150年のビゼー、没後100年のサ ティ、没後 50年のショスタコーヴィチの作 品もプログラミングされ、自らと社会の関わ りを考えながら一年の計を考えるのも面白 いかもしれない。(文=戸部亮)

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