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特別な時だけ

私も夫もメガネ愛好者です。

年をとると、近視や乱視だけでなく、視力を合わせる力が衰えてくるので、老眼鏡も必要になって作ってみたのはいいけれど、普段使いのメガネと老眼鏡をしょっちゅう取り替える羽目に陥ります。仕方ないので、遠近メガネを作ってみると、今度は中近も必要になったりします。

また夫の場合は、脈絡膜新生血管(みゃくらくまくしんせいけっかん)などという眼病にかかり、紫外線をカットする医療用サングラスを作ることにもなって、いつの間にか私たち夫婦はメガネ売場の上得意の客となってました。

去年、夫は老眼が進行したので、視力に合わせて遠近メガネを新調しました。担当のHさんはいつもとても素敵なフレームを推薦してくれるので、私達夫婦の大のお気に入りです。その時購入したのは、俳優の瑛太さんがモデルでかけていたフレームで、見た目それまでかけていたちょっと老人ぽいメガネからだいぶイメージチェンジしました。

そんなメガネを作って一年も経たないうちに持ち主がいなくなってしまいました。ケースに入っているメガネを見ると、夫が最後まで身につけていたものだけに、なんとも切ない気持ちになっていました。

息子にも夫の「もったいない病」が移ってしまったのでしょうか?
瑛太とまではいかないまでも、せっかくオタクっぽい雰囲気から脱出した感じだったのに、納骨の後の食事会で、息子は新調したメガネをすぐにケースにしまってしまいました。でもまあ特別な時だけ、と形見分けしたメガネを大切にする息子もいいやつだなあと思ったし、きっと夫も息子のそばにいて、この先いつも見守ってくれることでしょう。

故人が身につけていたものは、形見分けされた人がそれを使ってあげることで喜ばれると思います。私も夫の持っていた時計を使ってあげようと、電池を入れ替えにお店に持って行ったらオーバーホールとなってしまい7万円も取られてちょっとショックでしたけれど、身につけると不思議に夫に守られているようで心が落ち着きます。

私は時計を、娘には本を、息子にはメガネを、私の兄にはレコードとプレーヤーを、甥っ子にはゴルフバッグとクラブ一式を、私の友達にはネクタイとカフスボタンをと、それぞれ形見分けしたら、皆がかなり喜んでくれたので、夫はきっと見えない力で皆の守り神となり支えてくれるのではないかと思います。

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