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人生で二度プロポーズをした人

実は、夫は私の人生でなんと二度もプロポーズをした人でした。一度目は大学時代でした。

話を18歳の高校3年生の時に戻すと、私は中学も高校も美術部で、大学は美大に行きたかったのですが、母と兄の二人に美大はお金もかかるし、まともな仕事にもつけないと反対され、当時素直だった私は仕方なく普通の大学の経済学部に入ったのでした。そして、その大学の4年の時に同じクラブの5歳上の0Bである夫と知り合ったのです。

美大は諦めたけれども、どうしてもグラフィックデザインの仕事をしたかった私は、4年の秋くらいから名もない小さなデザイン事務所でアルバイトを始め、ついにはそこにアルバイト入社してしまったのでした。美大に行けなかったので、グラフィックデザインの知識もなかった私は、そこで一からデザインの仕事を覚え、私なりに充実した生活を送ってました。

ところが、彼は放送関係の会社のエリート社員でしたので、小さいデザイン会社でアルバイトしていた私をまともな就職ができなかった女の子くらいに思っていたようでした。そして、お付き合いしてすぐに結婚を申し込まれたのですが。。。

私には最初は小さいデザイン会社で業界のことを働きながら学び、いずれは転職してもう少しまともなデザイン会社に入るつもりでいました。そんな私の野望とも言える心中を察することなく、「結婚しても2〜3年は仕事をしていてもいいよ」と言われ、またしても私は自分のやりたいと思うことを諦めなくてはいけないのか、と悲しい気持ちになりました。

自分の一度きりの人生、私は自分の好きに生きたいと思っていました。美大に行きたいと言った時は家族に反対されたけれども、大学を出たら今度こそやりたいように自分らしく生きたいと思っていた矢先のプロポーズでした。

注:この漫画は2015年に描いたものです

いい人ができたらすぐに結婚するという腰掛け的な働き方はしたくなかったし、だからといって仕事がダメだった場合のためにスペアとして彼を取っておくなんて発想は私にはありませんでした。

結局私は夫のプロポーズをお断りしました。夫は結婚適齢期の27歳でハードな営業職でしたから、奥さんになるような人は専業主婦となって家庭のことをきちんとまかせられる女性の方が相応しいと思ったからです。
夫は指輪まで用意してくれていたので、とても真剣なことは分かりましたが、真剣だからこそ中途半端な気持ちで結婚するのは良くないと思ったのでした。

僕を否定しているのか?結婚を否定しているのか?
「All or Nothing」
と言いたかったけれど、言葉に詰まってしまいました。

わざわざ卒業式の日を調べて、超高級花店で有名な日比谷花壇から花束を送ってくれたのでした。我が家にはそんなすごい花束を飾れる花瓶はなく、バケツに突っ込んであったのは残念でしたけれども。

花束をもらったからと言って、惜しいことをしたとは思いませんでした。人生のチャレンジを何もせずに専業主婦になったらきっと私は後悔すると思ったからです。同じ後悔するならば、やらなかった後悔よりも、やって失敗する方の後悔を選ぶ私です。

しかしながら、彼と私は、お互いに違う道を進んで、人生めでたしめでたしとなる予定だったのに、なぜか再び出会うことになったのでした。



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