「 夢の続きが始まりました【第七十四章 (父) 】」
2023/4/8
石川善一52才です。
31才の時だった。
母が亡くなる2年前の2001年の出来事だ。
スーツ姿の女性2人が訪ねてきた。
2人は探偵で、「あなたを探していました」…と言った。
斉●●代さんからの依頼で、
「すぐに電話してほしい」…と伝言を伝えに来たのだ。
探偵は「内容までは教えられない」…と、私に電話番号を渡して帰った。
斉●●代とは、父の妹。
つまり私の叔母にあたる人。
荒れていた父から、強引に母を連れて逃げてから13年がたっていた。
(【第三十五章 (主役) 】参照)
父が死んだのだろう…とピンときた。
父方の親戚は癖があったと思っている。
私の中で、好きな人と嫌いな人がハッキリ別れていた。
父は6人兄弟の長男で、
母に対し、「長男の嫁なんだから」…と
キツく当たる叔父、叔母が大嫌いだったのだ。
●代おばさんは私にとって好きグループの叔母だった。
私は母には内緒で●代おばさんの家を訪ねた。
親戚は全員そろって私を出迎えた。
「よしかず…ごめんね…」
「お母さんに対して、私たちはヒドかったと思うよ」
「よく来てくれたね」
「お父さんね、ずっと「すまなかった」って後悔していたんだよ」
父は、まだ幼かった頃の私と2人で写った写真を、
肌身離さず持っていたらしい。
たった1枚しかない息子の写真を見ながら
「俺は息子に捨てられて当然なんだ」と泣いていたという。
母に対しても
イライラをぶつけてしまって可愛そうな事をした…と泣いていたという。
嫌いだった叔父、叔母も、涙を流し、
詫びながら許してほしいと私に頭を下げた。
父の葬儀に間に合わなかった私は、父の遺影に手を合わせ、
………… 全てを許したのだ。
「もう嫌いじゃないよ父さん」
「幼い頃のような仲いい関係が続けば良かったのにね」
「俺も、もう大人だよ」
「色んな事情があって荒れちゃったんだね」
皆は私に「これから親戚付き合いをやり直さないか」と言った。
私は、
「きっと母が気を使ってしまうだろうし、今の母との暮らしを守りたい」…とキッパリ断ったのだ。
親戚衆は、
もし父が亡くなった事を母に話すなら、
私たちが謝っていた事も伝えてほしいと言った。
……………………
それから1ヶ月ほど過ぎた頃、私は一部始終を母に話した。
母は涙を浮かべながら「そう…」と、つぶやいた後、
「みんな元気だった?…お母さん…皆に会いたい (^o^) 」
!!!…驚いた。
あんなにイジメられた人達を懐かしいと言ったのだ。
きっと楽しかった記憶だけが蘇ったのだろう。
なるほど … 母らしい。
母はそういう人だったのだ。
親戚付き合いを断った事を話すと、
「そうだね…考えてみたら会わせる顔もないね (^_^;) 」
……………………
父の遺品として貰った腕時計を見ながら、
私は母のように、楽しかった頃の父の記憶だけを残そうと思った。
31才の私はもう曲は作っていなかった。
シンセサイザーが壊れた後だったのだ。
あの時、まだ音楽活動をしていたら父の歌も作ったかもしれない。
考えてみれば父は息子の音楽活動を知らない。
私は自分の曲を流し、遺品の腕時計に聴かせた。
今頃、天国か…と思いながら、父に対して初めて涙した。
天国が関係するオリジナル曲を1曲持っている。
【僕と娘と天国のママ】
この曲は【美しいMemory】という歌詞で締めくくっている。
美しい時代も確かにあったのだ。
歌詞の内容は父の事ではないが、この曲が流れた時、
父との【美しいMemory】を忘れまいと思った。
私は天国の父に、「もう恨んでないからね」…と、つぶやいた。
*参照記事【第三十五章 (主役) 】はこちら↓
「 夢の続きが始まりました【第三十五章 (主役) 】」|石川善一 (note.com)
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