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母の背中
ひと月経ちました。
おそらく、確定した状況なので、受け入れて参ります。
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ヤンママぴちょん
12月のある朝、不思議なことがあった。
そのころの私の布団には、たいてい子猫のじゅもんが身体の横で遠慮がちに寝ていて、お腹やお尻の上といったメインのふかふかした場所には、ヤンママぴちょんが寝ることになっていた。
ヤンママぴちょんは、おおかた幼児期の子育てを終えて、熱心な教育ママになっていた。教えるべきは狩り!自然の巡りとつながる狩りの醍醐味と、どんな時も凌いでいける技術を、子猫のじゅもんに伝えようと溢れる情熱を持って、数日ごとに鳥を、毎晩ネズミを捕ってきていた。
まるでサラリーマンのように、夕暮れからでかけて、19時ごろに夕食を獲ってくる。カリカリをもらう前に獲物でお腹いっぱいなこともよくあった。
朝は日の出と共に出かけて、人間が起きる7時前には必ず帰ってくる。そして獲物を台所で子猫に渡し、自分は布団にどっしりと眠るのだ。
ところが、あの朝は、ヤンママぴちょんの実体は帰ってこなかった。
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重さの帰宅
私はうつ伏せで、子猫のじゅもんがお尻の脇に寄り添って眠っていた。
ふと、お尻の上に、重さが乗った。
「ぴちょん、おかえり」半眠りでそう声をかけたのだが、なんだか軽い。目を開けて振り返ってみたら、お尻の上にぴちょんはいなかった。
「あれ、気のせいかな」ぐっすり眠るじゅもんと、私は二度寝に落ちた。
その日、ヤンママぴちょんは帰らなかった。
次の日も、帰らなかった。
私たちはいつもの時間に山に向かって毎日「ぴちょん!ぴちょんちゃーん」と呼ぶ。しかし、ぴちょんは帰ってこない。
私は本当はわかっている。
ぴちょんが、意識を振り絞って、帰宅しようとしたことを。
子猫のじゅもんの隣に、帰ってきたことを。
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乳母として
子猫のじゅもんはまだ小学生ぐらいな感じだ。
突然、の厳しいママが帰ってこなくなった。
私は乳母になった。
「じゅもん、一緒にぴちょんを呼ぼう。」と声をかけて、裏山に向かって「ぴちょーん!」と呼ぶ。じゅもんはニャーアニャーアと鳴く。
毎朝のルーティンでそれをして、二人でお茶を飲みご飯を食べる。
10時半以降は、一緒にひなたぼっこをして、あったかいね〜と言い合う。
夕方、窓を閉めて私がタップを踏んでいると、じゅもんが肩まで駆け上がってくる。私は彼女を抱っこしたまま基礎練習をする。
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じゅもん大好きだよ。
安心して大きくなってね。
ぴちょん、安心して。じゅもんは、初めての獲物、子リスを捕まえてきて、食べ切ったよ。
狩りの巡りの中にいる以上、避けられないことと認識している。
ぴちょんの母猫としての背中から、私も多くを学ばせてもらった。
優しくて、厳しくて、凛としていて、サイコーにロックなママ猫よ!
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