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文学フリマ東京39出店しました!

12月に入ったばかりの晴れた朝、東京ビッグサイトに向かうゆりかもめの窓から見える紅葉が目に飛び込んできた。
長引いた夏の暑さのせいで、秋を感じる間もなく季節が巡ってしまったように感じていたけれど、この日ばかりは、ようやく秋らしい空気に包まれる感覚を味わうことができた。
というのも、私は基本在宅ワークのおうち大好き人間。
こういうイベントでもなければあまり外出しないのである。

文学フリマ東京39

2024年12月1日、この日は「文学フリマ東京39」に出店する日だった。
会場は、つい2週間前に「デザインフェスタ vol.60」を経験したばかりの東京ビッグサイト西3・4ホール。
けれど、同じ場所でありながら、その雰囲気は全く違っていた。
文学フリマは、作り手が「自らが〈文学〉と信じるもの」を販売する文学作品展示即売会だ。
そのため会場には、創作物に真剣に向き合うクリエイターと、作品を心待ちにしている読者が集い、落ち着いた熱気が漂っていた。

今回も、私は絵とことばのユニット「アトリエけだま」として出店した。
作家のあやこあにぃさん、デザイナーのりさこさんとともに準備を進めてきた新作「トイレで読み流す『月刊ストーリーズ』」をはじめ、これまで販売してきた「けだま本」や「おはなしみくじ」なども並べた。
特に「月刊ストーリーズ」は、トイレでふと目に留まるカレンダーという日常のアイテムに、「水」や「流す」をテーマにした12篇の超短編小説とイラストを組み合わせた意欲作だ。
ページごとに登場する猫やうさぎたちのイラストを探す楽しみも添え、ほんのひと息つく時間に寄り添えるような作品に仕上げた。

文学フリマ東京39お品書き

文学フリマは、「本」が中心のイベントだ。
お目当てのブースをめがけて歩く人たちの中で、私たちの「グッズ」が並ぶブースは少しゆるやかな空気が流れていた。
それでも、ふらりと立ち寄ってくれる方や、これまで交流のあった方が「コンセプト面白いですね」と声をかけてくれる瞬間があり、やっぱりこの空間には特別な魅力があると感じた。
デザフェスから文学フリマへ――短い間に続いた出店は、どちらもそれぞれに面白みがあってオフライン出店っていいなと改めてズブズブとイベント出店沼にハマっていく自分が容易に想像できた。

そして、この日はもう一つ特別なことがあった。
中学生の息子たちが、はじめて自分たちだけで会場を訪れてくれたのだ。彼らが持ってきてくれた五円チョコの差し入れとともに、「楽しい」の先に「お仕事」がつながるということを伝えたい、そんな私の思いも静かに会場に広がっていった。

出店準備

文学フリマ東京39への出店を決めたのは、実はデザフェスに出店することを決めた時期とほぼ変わらない。
5月の文学フリマ東京38、7月の星々文芸博に続けて出店して「出店ハイ」になっていた私たちは「デザフェスが終わったら少し休もう」…なんて言うわけもなく、気づけば「じゃあ次の文学フリマも出るっしょ!」と全員で盛り上がっていた。
何事も、勢いって大事!

今回は、これまでの作品に加え、新作「トイレで読み流す『月刊ストーリーズ』」を準備した。
カレンダーという身近なアイテムに、12の超短編小説とイラストを組み合わせ、ひとつの作品にデザインする。
「水」や「流す」をテーマに物語を紡ぐというアイデアは、確かデザイナーのりさこさんからでた何気ないひと言から生まれたんだったと思う。
「トイレで読むような物語を書いてみたら面白いかも」。
その言葉に一気にみんなの妄想が膨らみ、それならテーマを「水に流す」に絡めた話であれば「水」でも「流す」でも「トイレ」でもOKにしよ!となり、カレンダーにしたらいいんじゃない、とあにぃさんが12編を書き下ろしてくれた。
小説ができたら挿絵の出番で、あにぃさんが仕上げた物語にぐふぐふ笑ったり感動しながら、けだまたち(猫とうさぎ)が各ページに登場することは私なりのちょっとしたこだわりで入れてみた。
小説→イラスト→デザインの流れで出来上がったものから次々とひとつの作品に仕上がっていく。

制作スケジュールは相変わらずギリギリだった。
今LINEのやりとりを振り返ってみたら、デザフェス出店のほぼ1週間前にまだイラスト一つも描けてないなんてメッセージ送ってるのを発見した。
入稿期限は2週間くらいは見ておいた方がいいことを考えたら、恐ろしすぎる…笑
あやこあにぃさんは超短編小説を書き、私はひたすらイラストを描き、りさこさんが全体のデザインをまとめる。それぞれが手を動かしている時間は違えど、頭の中では常に作品のことを考えていた。そんな日々の中で、完成した「月刊ストーリーズ」を手に取ったときの達成感は格別だった。

トイレで読み流す「月刊ストーリーズ」

準備の中で特に印象に残っているのは、息子たちのことだった。
デザフェスが終わったとき、「今度の文学フリマ、2人で遊びにくる?」と声をかけたときのことだ。
思春期真っ只中の彼らが、「うん」と答える姿が少し意外で、嬉しかった。
普段、私のこうした活動をどんなふうに見ているのかはわからない。
ただ、「楽しい」だけではなく、努力の先にある「学び」や「仕事」につながる過程を、彼らなりに感じてくれたらいいなと思っていた。

準備期間はあっという間に過ぎ去り、気づけば当日を迎えていた。
ゆりかもめの車窓から紅葉を眺めながら、少しだけほっとした気持ちで会場に向かった。
自分たちの手で作り上げた作品やブースがどんなふうに受け取られるのか、期待と緊張が入り混じった心地よさがそこにあった。

当日

文学フリマ東京39の当日、会場に一歩足を踏み入れると、すぐにその独特な雰囲気が身体に染み込んできた。
デザフェスとはまた違う、文学を大事にする人たちの静かな熱量。
ゆったりとした歩調でブースを回りながら、真剣な眼差しで本を手に取る来場者たちの姿が印象的だった。

「アトリエけだま」のブースも準備万端。
新作「月刊ストーリーズ」を中心に、「けだま本」や「おはなしみくじ」、「おはなしコースター」を並べて、いつものふわっとしたけだまの世界観を表現した。

開場してから最初のお客様がブースに立ち寄った。
目に留まったのは「月刊ストーリーズ」。
カレンダーを手に取った瞬間、「これ、トイレに飾るんですか?」と少し戸惑い気味に尋ねられた。
「はい、トイレにぴったりの、ちょっと変わったカレンダーです」と答えると、納得したように微笑んで、「こういう遊び心がある作品、いいですね」と言ってくれた。
その言葉がとても嬉しかった。

また、「おはなしコースター」を手に取った方が、「これ、もったいなくて使えない!」と笑いながら言ってくれたことも印象に残っている。
自分たちの作品が、ただの「使うもの」ではなく、眺めて楽しんでもらえる「作品」として受け入れられているのを感じて、心の中がじんわり温かくなった。

会場してから1時間経つ頃になると、晴天に恵まれたせいか、会場内にもたくさんの人が集まり、活気が増してきた。
そのタイミングで、息子たちが会場に到着した。
正直、彼らがちゃんと東京ビッグサイトまでたどり着けるか少し心配していたけれど、私が心配しすぎだったみたいだ。
会場に来るなり、「はい、これ」と得意げに五円チョコの差し入れを持ってきてくれた姿に、なんだか胸が熱くなった。

ふと息子たちに「どう? 楽しい?」と聞いてみると、「まだわかんない、でも本が多いね!」と返ってきた。
会場を歩き回る彼らの後ろ姿を見送るとき、「これも一つの学びになればいいな」と思った。

引き続き、お客様とのやりとりが続いた。中には、以前の文学フリマで「けだま本」を手にしてくれた方が「新作ありますか?」と訪れてくれたこともあった。作家のあやこあにぃさんと繋がりがある方とお話しできるのも、このイベントの醍醐味だと思った。
それと他のブースを回りながら、やっぱりZINEに目が入ってしまった。
(デザフェスの時からずっとうずうずしている)
作品づくりがんばるぞ!

文学フリマ東京39を終えて

文学フリマ東京39を終え、家に帰ると心地よい疲労感がどっと押し寄せてきた。
今回の出店は、デザフェスからわずか2週間後ということもあり、それぞれの準備が重なりながら進めていかなければならず、他業務も複数抱えており…となかなかのマルチタスクだった。
どれだけ準備が整うのか不安もあったけれど、ふたを開けてみればやっぱり出店して良かったと充実感でいっぱい。

開業届を出してからのこの1年、私個人の活動とともにアトリエけだまとしての活動も中心にあると感じている。
実はもうひとつ中心となって運営している、多ジャンルのクリエイターが集まるオンラインアトリエ「テトイロ」の活動もある。
主軸が複数あるから複業というけれど、どれも私にとって大事な存在で今後も盛り上げていきたい。
そして次のイベント静岡県浜松市にあるイオンモール志都呂で開催されている展示会「クリスマスのまえのよる」はまさに今年の集大成!
アトリエけだまとしてもテトイロとしても出店している。
開催期間は12月15日から22日まで。
開催日初日には、私も新幹線に乗って会場に行ってきたよ!
そのときの様子も含めてこちらのイベントレポートもまた書きたいと思う。

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