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ル・ボンを読んだら、現代社会と重なった

群集心理
ギュスターヴ・ル・ボン
櫻井成夫訳

古典作品へのお願い

普段、ここまでのいわゆる古典物を全くと言っていいほど読まないので、頭が凝り、肩が凝り、背中が凝ってしまった。
読んだものがたまたまそうだったのか、この本がそうなのか、なんとも言えないところではあるが、古典物に触れる機会がないものからすると、内容云々の前に日本語訳を持っと現代の言葉に置き換えることはできないのだろうか。
訳自体が古いもののようだから、なんとも言えないが、内容以前に日本語が難しい。
これは、本屋で読んでみたいと手にとっても感じることがあることで、原著を読むのもいいことだが、もう少しハードルを低くして、現代語で改訂されたものがあってもいいのではないかと思った。
改訂版を読んで、興味が出たら原著を読む、というものでもいいと思う。
これは、本離れの一つの原因ではないかと思う。
この群集心理も、もっと現代語で書かれたものがあったら、もう一度読み直してみたいと思ったりする。

科学の先をいくル・ボン

内容の感想で言うと、卓越した観察眼を持ち、思考の整理に長け、物事を読み解く力がある人は、科学の先を行く眼を持っているのだと、そんなことを感じた。
現代の脳科学において解明されていることを、いともあっさりと述べられているのである。

脳科学でも証明されている

群衆には、思考より感情を。
感情に訴えかける。
思考といった「理性」に訴えかけても人は動かない。
「感情」こそが、行動のエネルギー源となる。
今日のビジネスでは、繰り返し述べられていることだ。

インパクトの有効性

真実そのものよりも、どう現れるかが大きな影響を持つ。
「真実が知りたい」ドラマや映画でよく登場する言葉ではあるが、こと集団となると、発している言葉と実際の捉え方が異なることは日常茶飯事である。
というか、むしろそれしかない。
つまり、「真実が知りたい」と言いつつ、実際にはインパクトのあることに心奪われるのだ。
「嘘も100回言えば真実になる」
群集心理、集団心理を悪用すれば、こうした結論に達するのは当然のことだ。

時代を超える

もちろん、現代社会においてはちょっと抵抗ある難い物言いや発想もある。
ただ、ル・ボンが生きた時代背景を考えれば、当然のことだと思われる。
階級制が今よりずっとずっとはっきりしていて、民主主義は出来立てほやほや、そんな時代だったのだろうから。
当時、群衆・民衆が社会制度を変える原動力となることに、その新しい、いわば試みに危惧することもあったろうし、実際にル・ボンのその危惧が今、実際に現実になっているとも感じる。

まとめ

内容を理解しているとはとても言い難いが、それでも共感する部分と反発する発想がある。
それは、本としては良著なのではないかと思う。
個人的には、必ずしも全面賛成できるものがいい本とも思わない。
きっと、時代によってル・ボンのとある考えに対して、賛成なのか反対なのかは変わる気がする。
そしてまた、ル・ボンが生きたあの時代に、あの時代に戻ろうとしている、もう戻っているのではないかという気がしてならない。

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