嘘つき姫と盲目王子

最後にテレビゲームをした記憶を手繰り寄せると、64が最初で最後だったと思う。
当時子供がやるゲームなんて複数人でやるゲームが多くて、まだ一人っ子だった私はあまりテレビゲームに楽しさを見出しきれなかった。
確か持っていたのはぷよぷよSUN、ディズニーのレーシングゲーム、ポケモンスタジアム、あとはピカチュウげんきでチュウとか。(今思うとピカチュウげんきでチュウって、今のAIスピーカーとかの先駆けみたいな感じだなあと思う)
でも近所に住んでいる友達は少ないし、きょうだいもまだいなかったし(のちに妹が誕生)、両親共働きで面倒見てくれた祖父母はゲームなんてわからないし、結局ゲームボーイでハムスターやポケモン育てたりする方が性に合っていた。あとは跡部様がみたいがためのGBアドバンスのテニプリのゲーム。(よく話題に上るドキサバなどはPSを持っていなかったのでついぞやることはなかった)
それから初めて自分で買ったゲームは……というと多分ポケモンBW(周りで爆発的にはやって妹と一緒にブラックを買った。妹とバラバラにすればよかったのに二人ともブラック)なのだけど、ハードもあわせて買ったのはアイドルと恋する某乙女ゲーム。ここから乙女ゲーにはまり、いくつかプレイした。

なんでこんな話を始めたかというと、最近その小学生ぶりにテレビゲームソフトをプレイしたからだ。
タイトルは「嘘つき姫と盲目王子」――このタイトルで既に少し惹かれた方、絶対公式ページのストーリーを見て欲しい。
https://nippon1.jp/consumer/usotsukihime/story.html

ざっくりこの物語を説明すると、異種交流譚、ということになると思う。人間の王子と化け物狼の女の子の物語だ。導入部分の流れとしては人魚姫のような話。人食いの醜い化け物の狼は、その見た目とはかけ離れたとても美しい歌声を持っていて、毎晩森の崖で歌いながら過ごしている。ある時人間の王子がその声に惚れ、どうにか声の主に会いたいと思い崖を登って会いに来るが、狼は驚いて彼の目を傷つけてしまう。以前から自分なんかの歌を聞きに来る奇特な人間だ、と思っていた狼は、どうにか王子の目を治したいと思い、大切なモノと引き換えになんでも願いをかなえてくれる森の魔女に懇願する。魔女の前に王子を連れてくるために、自らの姿を人間の姫に替えてもらい、狼は盲目になった王子を城から連れ出すのだった。という話。

ノスタルジックで可愛らしい童話調のイラストとストーリー。ゲームシステムは2Dアクションゲーム、というらしい……?ゲーム詳しくないのでよくわかってないのだけれど、平行移動する、左から右へどんどん進んでいくタイプのものだ。ところどころパズルのようなギミックがあり、それを解きながらステージを進んでいく。恐らくは初心者や子供を対象にしたゲームで、難易度もそんなに高いものではない。私はTVゲームは本当に64以来で、恋人のPS4を借りてプレイしていたのだが、まず操作に全く慣れない……。□(王子の手を引く)と×(ジャンプする)とスティック(進行方向へ傾ける)を同時にやる!?無理なんだけど!?ジャンプしているときに王子の手を離してしまい(□ボタンを離してしまい)何度王子だけを地面にたたきつけて殺したことか。残機型のゲームだったら絶対にクリアできなかった。
ただ、ゲーム慣れしていない……というか普段ゲームなんて〇か×か十字キーだけで進められるゲームばかりやっている私にとってはしんどいところも多かったが、全体的な難易度としては、恐らくゲーム慣れした人には「物足りない」レベルだろう。実際どうしてもうまくジャンプできないところやタイミングが難しい所を恋人にやってもらったりしていたのだが、恋人は特に問題なく進めていた。私の不器用さが歯がゆい。音ゲーなら負けないのに。(某乙女ゲーのおかげ)
※ちなみに後から知ったのだが、どうしても詰んでしまったところはスキップもできるらしい。初心者に優しい。
※あとPS4のトロフィー機能?だと「〇〇のステージを〇分以内にクリアする」というタイムアタック的なものもあったので、玄人ならシナリオを一通り楽しんだあとそういう楽しみ方もできるかもしれない。

ただ、そんなめちゃくちゃプレイでも継続できたのは、やはりシナリオの魅力と、画面全体の美しさによるところだと思う。
このゲームはかなりシナリオに重点を置いている。王子に自分が本当は化け物だということを偽り続ける姫と、純真無垢で心優しい王子。ゲームでは姫と狼、どちらの姿を取ることもでき、その切り替えこそが攻略のポイントだったりするのだが、狼の姿では王子の手引けないし、でも姫の姿では狼に比べ全体的にスペックが劣る。シナリオ中にも姫が「狼の姿なら簡単なのに」と思うシーンがあるが、王子には絶対にばらすわけにいかない。王子に嫌われないため、嘘を重ね続ける姫の苦悩も見どころだが、それを含め自分本位にしか考えられなかった姫が、他人を思いやる(時には森の他の化け物相手にも)王子の優しい心に触れ、少しずつ成長していく「一人の女の子の成長譚」ともとれる。ゲーム内での細かな所作も大変可愛い。(一人でいると不安げにしている王子も、姫に手を取られるとにこりと笑うし、王子だけが死んでしまうと姫は崩れ落ちて泣く。姫が楽しそうに歩くのに対して引っ張られ気味の王子も可愛い。)
比較的攻撃性の低い森の住人(化け物)たちとの交流や、その中で垣間見える姫の心の揺れも繊細に描かれ、ラストはボロボロ泣きながら進めた。決してご都合主義じゃない、二人それぞれの結末が切なくて苦しくて暖かくなる。

そして不気味だけれども美しい、化け物たちがすむ森もとても魅力的だ。登場するエネミー(化け物)も不思議な造形の者が多いが(どう見てもハリネズミに見えるタヌキやひよこに見えるモグラ、羽の生えたカエルなど)不思議の国のアリスの登場人物みたいでかわいらしい。もちろんいかにも恐ろし気な見た目のものもいるのだが……。ステージとなる森もよく作りこまれた素敵な世界観で、とてもきれいな絵本を見ているような感覚になる。

正直、この手のゲームであれば、スマートフォンとも親和性が高いし、初めてHPを見たときはスマホ向けゲームだと思っていた。それがお値段約6000円のTVゲームなので驚く。(一応ハードはPS4、Switch、PSVitaの3つで出されている)ゲームのボリューム、難易度から考えると、人によってはかなりコスパが悪いものかもしれない。私もスマホで1200円くらいで売った方がより売れる気がする。けれど、スマホで通勤時間の片手間にやるよりは、家に帰ってがっつりテレビの前に陣取ってやる方が、断然没入感が違うのだ。特にこのゲームはシナリオや世界観、ビジュアルの美しさがポイントになっている作品なので、VitaでやるよりはTVに映してやった方が正解だったなあ、と思っている。

元々この手の異種交流譚には本当に弱いし、軽率な女オタクなので二人の関係性にポルノのアゲハ蝶をすこしリフレインさせてはまた泣くのだが(あなたに会えたそれだけでよかった世界に光が満ちた……)、そういう話が好きだという方はひとまず公式ページに行って少しだけでも世界観に触れてみて欲しい。

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