日本酒啜って諸行無常
TPOに合わせた服装があるように、場所に合わせた食べ物飲み物というものはあるように思えるのです。
映画館ならポップコーン、
野球場にはビール、
落語とくれば蕎麦と酒、
みたいに。
◇
金曜日の夜、息子を家族に預けて初めての夜遊びをしました。
行き先は「椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常 札幌公演」。
林檎さんソロ名義では5年ぶりとなる全国ツアー、チケット当選を知った時から早数ヶ月、満を持しての参戦です。
時刻は17:30。大通駅に降り立ったものの開演まではまだ余裕が。
戦の前に、ごはん、いっときますか!
◇
百貨店の裏にある細長いビルの中にお目当てのごはん屋さんはありました。
コーヒーの香ばしい香りに包まれた狭いエレベーターで上昇すること3階、「ビル食堂でら」に到着です。
食堂というと割烹着を着たおばちゃんに壁一面のメニュー表を連想しますが、ここはビル食堂。
エプロンを付けたおしゃれなお兄さんと、ゆったり腰掛けられるソファー。料理上手な友達の家に来たわ〜感覚な空間(なんとBGMはジャズ)が出迎えてくれます。
壁に向かって座るタイプのカウンター席(ごはんに集中できるからこの手の席が好き)に腰掛け、メニューとしばし対峙します。
◇
今夜は1年ぶりにお酒を解禁しようと心に決めてやってきました。
ビールもいい。揚げ物なんかと合わせて「あぁ金曜日〜」とか思いたい。
でも今は林檎さんのライブ前。
林檎さんご自身も和装を嗜み、どこか和な演出も行われることから、日本酒でしっぽりだな。
よし、「陸奥八仙」で行こう!
ご無沙汰でしたな日本酒は、はじめふんわり甘みを感じ、胃に落ちた途端にじわじわぽかぁ〜と特有の暖かさが広がって良い心地。
そんな八仙のお供には牡蠣フライと〆鯖を。
牡蠣フライは添えられたタルタルだけでお酒が進んじゃいそうな味わい。
刻まれた漬物達のポリポリ感と塩味が柔らかな牡蠣にマッチするんだな〜
〆鯖はもう言わずもがなな日本酒の恋人。
酢でしまりすぎず、何より何より。
お箸を、杯を進めながら、ちょっと前まではこんな日常が本当に当たり前に横たわっていたことを今更ながらに痛感します。
「日本酒は水じゃー!」「ウイスキーは麦茶じゃー!」と
今思えば調子に乗っていたとしか言いようのない日々でした。
戻りたいような、でももうすっかりやり尽くしたような
ひとまずそんな日々を送っていたという事実がただただ嬉しいなぁと思います。
さぁいつの間にか開演45分前。
ごちそうさまにしましょうか。
◇
ライブですか?
もうもう最高なひと時でした。
いつものことながら林檎さんのライブは舞台劇を観ているかのよう。
荒涼とした眺めが、夢見心地な風景が次から次へと展開され、最後はやっぱり生きて行こう、と思えるのです。
今回も生に思いっきりしがみついてやろ!と前向きな気持ちをお土産にいただきました。
林檎さんも、美味しいお酒も、またね。
かくして日常へと戻って行ったのでした。