横一列で、ととのう
師走も目前な土曜、19:00からは大学時代の同級生と飲み会。
3年ぶりに会う友人
−結婚した者、パパになった者、転勤になった者、離婚した者
またみんなに会えるのがすごくすごく楽しみで、気合を入れて幹事まで務め、1ヶ月前から集まろうと呼びかけていた今夜。
なのに何故だろう、楽しさがバグを起こしたのか、行くの面倒だな…なんて思う始末。
(楽しみ過ぎるとよく起こる現象)
思えば知らず知らずのうちに肩肘張っていたのかもしれない。
3年ぶり、自分は元気に幸せそうにやっているように見えるか、やってこれたのか。みんなにはどう映るのかな。
いかんいかん!大学時代はまるでそんなことを考えずにただ呑んだくれていた仲間じゃないの。
そんなことを考えながらすすきの駅に降り立った。
時刻は18:20。開始時刻まであと30分ちょっと。
モヤモヤを抱えたまま会場には向かえない。
こんな時は、あそこに行こう。
◇
目的地は地下鉄すすきの駅改札を出て、3番出口を右に入った「すすきのビル」にある。
「ちょっとばぁ」と書かれた大きな暖簾の上に、寒さ防止のビニールがかけられた立ち飲み酒場。
ビニールを、暖簾を潜ってお邪魔します。
席に着くと手首で検温してもらうのが今のご時世らしい。。
では、最初のオーダーを。
「クラシックとニシンの切り込みをお願いします」
黄色い苦味がどうしてこんなに美味しいんだろう。
一口、二口と流し込むとお腹の底がぽかぽかしてきて、気分もいつもより5cm、ポッと浮き足立つ。
じんわりとアルコールが身体を巡ると、知らずに張っていた自分の外の膜が少しずつ薄まるのを感じる。
と同時に周囲への、自分への目線もいつもよりどこか優しげになる。
左隣のお兄さんはもつ煮込みと日本酒を味わっている。お若そうなのに渋いいチョイスだ。
右隣の女性は後から来た彼氏と思しき男性の話をうんうん聞いている。
「さっき行ったサウナが混んでてさぁ〜」
「ロウリュ、気持ちよかったよ」
…わかる。サウナ、気持ちいいんだよなぁ。
頭上のTVでは日本シリーズ最終戦。
私はそれをぼーっと見上げながらビールをまた一口、二口、合間に切り込みもいただく。
お、左隣のお兄さん、伝票を指差しながら数えるような仕草。おあいそかな?
私はあともう一杯、クラシックをいただくことにしよう。
左隣のお兄さん退店と入れ違いに「3名良いですか〜?」と男女のお客さん。
ズイズイ右へと席を詰める既存客。
こんなやり取りも立ち飲みの醍醐味だ。
時計を見ると18:50。おやまあいい時間。
「お会計をお願いします」
いつの間にか周囲と自分との境界線が曖昧になる不思議な空間。
どう見ているかもどう見られているのかとか、自も他もどうでも良くなる。それはとても良い意味で。
横一列にずらっと並んで、ととのった。
あれ、サウナ用語なんか使っちゃって、右隣のお兄さんの影響かな
なんて思いながら仲間の元へと急ぐ。