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サービス管理責任者の確保・育成・定着に向けての提案② どう確保する?

 前回に引き続き、サビ管の確保・育成・定着の課題についてお話したいと思います。前回はサビ管の採用課題の大枠をまとめましたが、今回は確保段階での課題と対策について詳しく述べていきます。

人材確保の難しさ

 厚生労働省が令和6年6月30日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.23倍。少し前のデータになりますが(令和3年)、社会福祉の専門的職業に限ると有効求人倍率は2.88倍となっています。この数字からもサビ管確保がいかに難しいか分かると思います。

 さらに、近年の障害児者の事業所増加がサビ管の確保をより困難にしています。例として放課後等デイサービスを取り上げると、2012年から2020年の8年間で、事業所数は全国で約5倍に増加しています。(厚生労働省:令和2年版厚生労働白書)事業所の開所にはサビ管が欠かせないため、開所が活発になれば人材の確保はより困難になります。
 

人材確保のために出来ること

 では、サビ管確保のために何が出来るのか? 採用担当(経営側)の視点からお話します。
 私は過去に、東京ど真ん中である千代田区・中央区、瀬戸内海の離島、という両極端なシチュエーションで採用担当を経験しました。都市部と僻地で採用活動の違いもあるのですが、人材確保のための共通項もいくつか発見しました(採用に関するお話はまた別の機会で詳しく出来ればと思います)。
 
 私は、以下の2点が採用担当が実践するべき必須事項だと考えます。

  1. やるべきことをすべてやる

  2. 最後は経営者や採用担当の熱意

 「当たり前のことやん!」と思われるかもしれません(笑)
しかし、意外とこれが出来ていない採用現場が多いと感じています。採用活動が、経営者や管理職、または労務担当の「ついで作業」と化していないでしょうか?手が空いた時に動く、退職者が出そうになってから慌てる、忙しいから時間を割けない、等々・・。

 福祉を含むサービス業には目に見えた商品としての成果物がありません。サービスを実践する人材こそが最大の商品、武器になります(このような表現はこのご時世合わないかもしれませんが)。

 人材確保に時間を割かなくて、一体何に時間を割くのか??

 これは人材確保だけでなくその後の育成、定着にも共通する課題です。おそらく、どの経営者や担当者も「人材は宝」「採用活動は喫緊の課題」だと思っておられるでしょう。しかし、この思いには法人・個人の中でかなりの温度差があることが考えられます。経営者・担当者の考え方かもしれませんし、異業種から参入した場合には元となる業種(建設、製造、サービス等)によって感覚が違うかもしれません。

 では、上記の2つの必須事項について詳しく説明します。


やるべきことをすべてやる

 福祉事業は報酬単価、加算、定員等が明確にルール化されています。サビ管の処遇において、群を抜いた提案を求職者にすることは難しいと思われます。大手法人であれば、拠点数や売り上げ規模が大きいため必要に応じてサビ管の処遇を相対的に上げることは可能です。給与面だけでなく、休日の取りやすさ等福利厚生面で求職者に訴求する戦略を取る法人もあります。しかし、中小の法人でこのような戦略を取ることは難しいでしょう。

 実際のところ、採用活動でやれることは限られてきます。又、ピンポイントで劇的な採用策も存在しません。そのため、採用を成功させるためのは、「やれることをすべてやっているか?」ということが重要な視点になります。

  • 求人情報の内容を常に更新する ⇒ いつまでも古い情報や誤字脱字を放置していないか?他所の法人の求人情報と似たり寄ったりになっていないか。

  • HPやSNSを魅力的に ⇒ 職員のインタビューや活き活きと働く姿を見てもらう(すでに既存のサビ管がいれば必ず記事に載せる)。キャリアパスや優遇制度などあれば掲載する。利用者向けの情報は多いが、求職者向けの情報発信が極端に少ない法人もあるので意識変革は必要。

  • 人材会社やハローワークが開催する就職説明会への応募 ⇒ 参加したくても毎回参加できる訳ではない。常に情報収集する。

  • リファラル採用 ⇒ 職員による紹介からの採用は一定数を占める。そのため、長期的には既存の職員に紹介してもらいやすい職場作りが必要。サビ管は集合研修も多く、サビ管の知り合いが多い可能性あり。短期的には紹介報奨金制度(紹介した側、された側)の運用。

  • 学生へのアプローチ ⇒ サビ管の要件として3年~8年の実務経験が必要なため短期的な策ではない。長期的な採用活動として学生への呼びかけは重要。インターン・実習生の受け入れは採用だけでなく、既存の職員と職場の活性化にもつながる。※大学へのアプローチは「キャリタスUC」というサービスを活用していました。一括で多くの学校にアプローチが可能です。

 以上、当たり前の採用活動ばかりです。しかし、「採用が上手くいっていない!」という割には、活動が十分ではない採用現場もあるのではないでしょうか。一度採用活動を見直してみると良いかもしれません。

 

最後は経営者や採用担当の熱意

 採用活動を進めていく上で、勝負のカギとなるのが「熱意」です。精神論のようで申し訳ないですが、色々見て、聞いて、実践してみてこのような結論に至りました。

 「熱意」=経営者や採用担当のサビ管を採用したいという本気度です。サビ管の基本的な役割や処遇は、どこもそれほど差がありません。結局のところ、この人たちと働きたい、この職場で働いてみたい、というところに行き着きます。
 転職を検討しているサビ管からすると、自分を「○○さん」として個人を尊重してくれているのか、「サビ管Aさん」として事業所継続のコマと見られているのか、結構敏感に感じ取っています。そのため「あなたと働きたい」という熱意は、説明会や研修会、採用面接等の様々な場面で求職者に向けての強いアピールとなります。
 私自身、採用担当の熱意で就職を決めた経験がありますし、反対に採用担当としての熱意が伝わり採用につながったケースも経験しました。

 又、「こんな福祉サービスを展開したい」「地域福祉のために○○を取りいれたい」といった、ビジョンを語ることも必要です。「思いっきりお金を稼ぎたい!」と思って福祉の世界で働いている人は少ないかと思います(これはこれで構造的な課題ですが)。地域貢献、社会課題の解決のためのビジョンがサビ管と共有できれば、細かい処遇等が気にならなくなるケースもあります。

 反対に良くないのが、経営者や採用担当が殊更に「福祉の仕事はしんどくて当たり前」「うちの会社は給料が良くない」等、ネガティブな話に終始して夢も希望も語らないケースです。もしかしたら、疲れている担当者の正直な気持ちなのかもしれませんが、聞かされた求職者は働きたいと思うでしょうか。

  今回はサビ管の確保についての提案しました。次回は、育成・定着についてお話したいと思います。




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