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福祉施設長に求められる力とは②CSMが生み出した『量産型施設長』

 施設とともに施設長が増え続ける福祉の世界。量産された施設長の質が課題になっていること、そしてCSM(チェーン・ストア・マネジメント)が施設長の量産を後押ししていることについて、記事にしました。

 今回は、CSMが施設長育成に与える影響とはどのようなものか?メリット、デメリットをまとめてみました。

福祉事業運営とCSM

 CSMとは、複数の店舗を効率的に運営・管理するための経営手法のことです。この手法は、小売業をはじめ飲食業やサービス業など、多店舗展開を行う業界で広く用いられており、「標準化」と「効率化」を基盤としています。福祉施設への導入においては、以下のようなメリットと課題があります。

メリット


  • サービスの統一: 各施設で共通のケアプログラムや基準を導入し、利用者に一貫したサービスを提供。

  • トレーニングの集中化: スタッフの教育や研修を統一して行い、スキルの均一化を図ることが出来る。

  • 資材・設備の共同調達: 食材、医療機器、消耗品などを一括購入することでコスト削減。

  • 運営ノウハウの共有: 先進的な施設の成功事例を他の施設に展開。


課題


  • 地域特性との調整: チェーン展開では標準化が重視されるが、地域ごとのニーズや文化に対応する柔軟性も必要。

  • 個別対応の限界: 利用者個々のニーズに対応しきれない場合がある。

  • スタッフのモチベーション: マニュアル化や画一的運営が、働く人の士気に影響を与える可能性。

施設長育成にはどのような効果が?

 施設長育成に関しても、上記のメリット、課題がそのまま当てはまります。統一した施設長教育を行うため、異業種出身でも、新卒の新入社員でも早い段階で施設長に昇格することが可能になります。同時に、その施設長たちの早期の意欲低下や離職という課題もついて回ります。統計は取っていないですが、伝統的な社会福祉法人の施設長と比較すると上記の彼らの離職率が圧倒的に高いことは想像がつきます。

 私の経験になりますが、大手チェーンの人材育成に携わった際、年間3人のペースで施設長を育成しました。そのようなペースで施設長が誕生する理由として、以下の2つの要因があったと思います。

①ベテラン達の秘伝のたれのようになっている施設長業務を、レシピ分解したかのようなマニュアルの用意。

②カスタマーセンターのような本部、マネージャー、SVのフォロー体制

 ①に関しては、ベテランの聖域のようになっている施設長業務を若手に解放することで、一定の効率化が図れます。ノウハウさえ分かれば、経験が少なくても頭の回転の速さとエネルギーがある若手の方が良い仕事をする場合もあります。新規参入法人だけでなく、伝統的な法人も見習って取り入れることが必要だと思います。ベテランが必死に抱え込んでいる業務は実は大したことなかった・・・。よくあるケースですよね。
 ②については、施設の指定更新だったり、返戻等請求業務のつまずき、複雑な行政対応などを本部や上司がフォローすることで、経験の浅い施設長が目の前のマネジメントに集中することが出来ます。

※①②以外の要因として当時私はスーパーバイザーをしつつ自施設の施設長も兼務していました。結果、巡回指導よりも自施設の歴代2番手が目覚ましい成長施設長に昇格。私が多忙で施設運営の代行をお願いすることが多かったので、鍛えられたのかもしれないです(笑)。ほったらかしではなかったですが、手厚すぎない良さもあったかもしれません。留守を支えてくれた当時の人たちには感謝です!

CSMが中途半端な施設長を大量生産させる?

 ②のフォロー体制は、多店舗展開にはとても効率的なのですが、行き過ぎると施設長の小粒化に繋がる恐れがあります。以下、私が過去に経験したケースを紹介します。

ケース①

 A施設長よりTELあり。「利用者さんが転倒して膝を擦りむいて処置しました。事故報告書になりますか?」事故を報告・共有してくれることは良いのですが、事故報告書を書くかどうか判断できない施設長がいることに驚きました。マニュアルには事故報告書やヒヤリハットの記載はありますが、細かなケースについては個別判断になっていました。恐らくAさんは現場で事故対応を経験しないまま施設長になったのでしょう・・。簡単な事故対応で上司に指示を仰ぐ施設長を、現場の部下はどう思うでしょうか。

ケース②

 家族対応、施設見学、採用面接等々・・、常に上司に同席を求めるB施設長。現場の利用者とは活き活きと関わってくれるのですが、外部の対応には消極的なようでした。施設長フォローは私の業務なので構わないのですが・・・。施設長が上記の仕事を一人で出来なくてどうするのか?と思いつつも、「大丈夫ですよ。もう1回くらい同席してそのあとは一人でチャレンジしてみましょうよ!」と笑顔で声をかけたりしました。

 CSMは素晴らしい仕組みですが、加減によっては上記のような小粒?な施設長を量産してしまいます。実質、その上席であるマネージャーやスーパーバイザーが走り回るようなケースも少なくありません。

 私の経験上、CSMによる施設長育成はメリットとデメリットがはっきりしている印象があります。事業が大きく展開する上では効率的ですが、個々の施設長は小粒です。当時の私も含め『量産型施設長』『量産型SV』『量産型マネージャー』の集まりだったと思います。マニュアル重視の支援や、自身の成長に悩んで離職する同僚も多く見てきました。


堂々とした、力量のある施設長のイメージ

では、力量のある『施設長』とは?

 今回は、施設長を量産することの良し悪しについて書きました。次回はこの量産型施設長の対極にある、『施設長像』『施設長道』についてお伝えできればと思っております。

 




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