しおしおミロとインスタント食品の限りない可能性
しおしおミロ。
映画「インスタント沼」で麻生久美子さん演じる主人公ハナメがつくる特製飲料である。
ミロは説明するまでもないけれど、あの、みんな大好き麦芽飲料ミロである。つい最近までの販売休止期間は、いつも常備しているわけではないけれどもの悲しかった。もっと飲んであげたかったと後悔していたので、販売が再開されて大喜びしているのはわたしだけではない筈だ。
ネスレによれば通常ミロ一杯分の作り方は、
ミロ15gを牛乳150mlに溶かすということになっている。
ミロのみならず、こういうインスタントタイプの粉末飲料にはこうすると美味しく飲めますよ、という液体との比率がちゃんと書いてある。だいたいの人はこれに従うだろうし、わたしも従っていたし、さすがはプロが研究を重ねた結果である。当然美味しい。
それなのにしおしおミロは。
映画を観たころも今も、"しおしお"という言葉に馴染みがないのだが、ハナメが作ったそれはまさにしおしおなのだった。
映画の中で紹介されているレシピによれば、
大さじ10杯のミロに12.5ccの牛乳でしおしおミロはできている。
ミロの粉末に対して牛乳が異常なほど少ない。
少なすぎるというレベルではないしもはや飲み物でもない。しおしお状態以外の何者でもないのである。
ただこれが悔しいことにやけに美味しそうなのだ。こちらはこれまで真面目に分量通りに"正しいミロ"を作り続けてきたのに、それを一瞬にして壊されてしまうなんて、その上なんだか美味しそうだなんて悔しい。
その日までインスタント食品は当然規定通りにつくくらせていただきます、それが当然美味しいのだからと思っていたわたしは、しおしおミロの出現により考え方がぐるっと変わってしまった。
カップラーメンのお湯は線までじゃなくてもいいし、3分待たなくてもいい。誰も思い付かないようなアレンジを加えてもいい。そのまま齧るのもアリだし、粉末飲料は飲まなくたっていいし、しおしおにしてもいい。もっともっと、トリッキーになっていい。愛をもっておいしさを追求する狂気。
インスタント食品に限らず食べることは基本自由だ。決まりを取り払うともっと楽しくなるということを、沈丁花ハナメとしおしおミロは教えてくれた。