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スリヤンレックは惜しい敗戦で本契約を逃す、クラップダムがスアブラックをKO~ONE FRIDAY FIGHTS 81(2024年9月27日)

ONEチャンピオンシップは、9月27日にバンコクのルンピニースタジアムで特別興行のONE Friday Fights 81を開催した。この日は有名選手のムエタイ、キックボクシングの試合が多数組まれ、超満員の観客を魅了した。

今回取り上げるのは主に
第5試合のジャオスアヤイ対スリヤンレック
第9試合のスアブラック対クラップダム

ONEチャンピオンシップ(以下、ONE)では、毎週金曜日にムエタイ、キックボクシングのイベント”ONE Friday Fights”を行っているが、 3か月に1度、この日のような豪華カードを揃えた特別興行を企画している。

この日は、日本人選手が第1試合から4試合に集中して出場し、武尊のKOで会場がヒートアップしたところで、スリヤンレックジャオスアヤイが5試合目に登場した。二者とも日本にゆかりのある選手でもある。(リンクはONE Friday Fights 81・武尊編、Friday Fights 68・スリヤンレック前戦)

スリヤンレック・ポー・イェンイン対ジャオスアヤイ・モー・クルンテープトンブリー

スリヤンレックは、これまでONEで6勝(5KO)2敗、KO率が高く、ONEではほぼ毎試合、KOボーナスを獲得している。2019年にはK‐1で現ボクシング世界王者の武居由樹と対戦したこともある(判定負け)。普段は大分県佐伯市のBravely gym佐伯支店でトレーナーを勤めており、日本在住。ONEでの試合の度にタイに帰国している28歳で、通算戦績は81勝27敗。

剛腕のスリヤンレック、6月28日以来、3か月ぶりのONE登場

ジャオスアヤイは2019年にK-1ワールドグランプリ、フェザー級で準優勝の経験がある23歳、これまで56勝22敗、ONEでは4勝(3KO)2敗、元ラジャ王者のゴントラニー・ソー・ソンマイには判定負けしているが、前戦はそれまでONEで4勝無敗だった、プンルアン・バーンレンバーに初回KO勝ちしている。

5月31日のFriday Fights 65では、メインイベントで勝利したジャオスアヤイ

133ポンド(60.32キロ)契約、3分3ラウンドのムエタイマッチでこの試合は行われたが、勝者どちらかがONEチャンピオンシップとの本契約を獲得するとされ、お互いに重要な一戦となった。

166センチのジャオスアヤイに比べて、160センチのスリヤンレックは上半身が発達しており、パワーを感じさせる。初回、フットワークを使いながらローキックから、得意のパンチを軽く放つスリヤンレック、静かな立ち上がりだが、中盤距離を詰めて左右フックを打ち込んでいくと、ジャオスアヤイの狙っていたかのような右フックがスリヤンレックの顎に命中し、リングにひっくり返るダウン。何事もなかったかのように立ち上がるスリヤンレック、ラウンド終盤は激しいパンチの交換も、決定打は出ず。

スリヤンレックのダウン、一発に沈んだ。

2回はダウンの失点を挽回すべく、前に出て左右パンチをふるい、圧力を強めるスリヤンレック。下がりながらスリヤンレックの攻撃をいなしていくジャオスアヤイだが、何発か喰らったのか、右目の下が腫れてきている。中盤にはジャオスアヤイの左ストレートがスリヤンレックに命中し、大きく後退するスリヤンレック、あわやダウンだが、何とか堪える。再び強烈なアタックを続けるスリヤンレックに、ジャオスアヤイは距離を保って対応する。

スリヤンレックの攻撃をいなすジャオスアヤイ

3回に入っても手数は減らないスリヤンレックに、ジャオスアヤイはまともには打ち合わず、距離を保ち、カウンターを狙う。クリンチでスリヤンレックの攻撃を遮断するも、パンチの幾つかはジャオスアヤイの顔を捉えていたようで、顔の痛みも目立ってきた。最後の最後までジャオスアヤイを追いかけて攻撃の手を緩めなかったスリヤンレック、初回ダウンのビハインドは挽回に至らず、判定負け。ジャオスアヤイが判定勝ちを収めた。

スリヤンレックの猛攻をしのぎ切るジャオスアヤイ

続いて、元ルンピニー3階級王者のスアキムのKO勝ち、昨年のRWS王者のシャドウの判定勝ち、久々の登場となった大ベテラン、40歳のサムエーのKO勝ちでスター選手が順当に勝利を収めると、第9試合にスアブラックとクラップダムが登場した。(リンクはスアブラックの2024年1月、4月の試合)


スアブラック・トー・プラン49対クラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイ

スアブラックは2023年1月にロシアでキアムラン・ナバティと対戦し、初回29秒でKO負け。その後、ONEに参戦したスアブラックは、そのルールに適応したのか、覚醒したかのように、6連勝(4KO)を飾り、4連勝後にはONEと10万ドル本契約も結んだ。しかし、前戦でキアムランとのリマッチをKOで落としてしまった。通算では50勝19敗、ペッブリー県のカレン族の出身の28歳で、故郷のペッブリー県にスアブラックジムを開いてカレン族の子供たちにもムエタイを教えている。

キアムランにKO負けまではONE無敗だったスアブラック(スーブラック)

クラップダムは元ルンピニースタジアム認定ライト級、スーパーライト級王者、2018年には来日し、REBELSで梅野源治にKO勝ちしている。ONE参戦前の実績では、中堅ファイターだったスアブラックと大きな差がある。ONEでは7勝(4KO)5敗、ノンオー・ハマに判定負け後に、ナビル・アナンにKO負けと2連敗中の26歳。

ナビル戦では弱点?のボディを責められ、KO負けのクラップダム。2連敗からの復活はなるか。

ONEバンタム級(65.8キロ)ムエタイ3回戦で行われたこの試合、初回は、静かな展開だが、カレン族の難民キャンプでの山仕事や畑仕事で鍛えられたという太ももを土台に、激しいパンチ、後ろ回し蹴り、首相撲でクラップダムを襲うスアブラック。手数は少ないものの、相手の攻撃に対応できているクラップダム。決定打となるようなものはもらっていない。

静かな立ち上がりの初回、共にサウスポー

2回も達人同士の駆け引きのような展開で、互いに被弾は少ない。キックを右手でキャッチしてからの左ストレートでKOを連発してきたスアブラックは、クラップダムには警戒されているのか、なかなかキャッチもできない様子だ。

3回、距離を縮めての右フックがスアブラックの側頭部にかすめると、効いた様子のスアブラックは必死にクラップダムにしがみついて、そのままリング上に押し倒す。立ち上がるとクラップダムは猛打の嵐、もつれたスアブラックの脚を持って投げ倒し、そして立ち上がったスアブラックを、狙ったような右フック一発で仕留めてKOした。

3回のチャンスでスアブラックを完全に倒しきったクラップダム、さすが元ルンピニー2階級王者、勝負所を逃がさない。一方のスアブラックは2連続の壮絶なKO負けとなった。

右フックがスアブラックのコメカミあたりに命中
前戦のキアムラン戦に続いて、一発での失神KO負け
勝利をPRのクラップダム、連敗を脱出

この日の第10試合に前戦でクラップダムを下したナビル・アナンが登場、ミャンマーラウェーの鉄人、ソー・リン・オーとONEバンタム級ムエタイ3回戦を戦った。192センチの長身が特徴のナビルは、ソーを懐に入れず、長い距離からの攻撃も冴えて判定勝ち。試合前は’、これまでONE無敗だったソーを押す声が多かったが、ナビルの完勝となった。

ナビル対ソー、ナビルの強烈な前蹴り

続く第11試合、セミファイナルにはノンオー・ハマキアムラン・ナバティのONEバンタム級ムエタイ3回戦が組まれた。前戦でスアブラックを初回KOで下したキアムランはロシア出身の29歳、これまで、プロ21戦全勝で負けを知らない。ノンオーは300試合を超えるキャリアを持つ、37歳のレジェンド。強烈なキアムランの攻撃を外し続ける姿はさすがノンオーと言わざるを得ないが、それが精一杯か。終始攻勢を続けたキアムランが判定勝ちを収めて無敗をキープした。

セミファイナルのノンオー対キアムラン

※ルンピニースタジアムで現地観戦、写真は著者撮影のものと一部、試合映像(Channel 7のYoutube)から。

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