”アナコンダ”バーバラがトーナメント優勝!KO負けのクワンチャイは引退へ~2024年12月14日のRWS①
2024年のRWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)トーナメントの、女子バンタム級、男子フェザー級、男子スーパーウェルター級、三階級の決勝戦が、12月14日にラジャダムヌンスタジアムで行われた。
三試合共がタイ対外国人ファイターの組み合わせで、どの試合が決勝らしい熱戦となった。そのなかでも女子バンタム級では”アナコンダ”バーバラ・アギラー(ブラジル)が”ザ・ティーチャー”クワンチャイ・クワンチャイムエタイジムを強烈な右ヒジで失神させるKO劇を魅せて会場のファンを震撼させた。
RWSトーナメントは各階級で選抜された8人の選手が、優勝賞金300万バーツを掛けて、半年にわたって争う。8人は4人ごと2つのグループに分かれ、グループ内で総当たり戦(3回戦)を行い、上位2名づつが準決勝に進み、準決勝(3回戦)を勝ち抜いた2人が12月の決勝(5回戦)で対戦した。
バーバラはブラジル出身の28歳でニックネームは”アナコンダ”。元WBCムエタイ世界王者で、11月2日に行われたトーナメント準決勝ではラジャダムヌン王者のソムラッサミー・マーノップムエタイジムを下し、ランキングは1位、プーケットファイトクラブで練習を重ねている。対するクワンチャイは”ザ・ティーチャー”のニックネームの通り、普段はチャイヤプームで教員をしている30歳、リーグ戦では同じブロックのバーバラに9月28日に対戦し、3回判定負けしている。アマチュアのムエタイのタイ代表選手としてアセアンの大会、シーゲームで金メダルを獲得したこともある。63勝24敗2分と抱負なキャリアと堅実なスタイルでRWSのリーグ戦を勝ち抜いた。11月の準決勝では、バーバラと同じブラジルのマリア・エドゥアルダを下して決勝に進出した。
バーバラとクワンチャイの二人は、2021年の MUAY THAI SUPER CHAMPでも対戦しており、この時はバーバラが3回にKO勝ちしている。(パンチとキックをまとめられ、スタンディングダウンからのカウントアウト)これまでの二人の対戦成績はバーバラの二勝、今回が三度目の対戦となる。
試合は9月の前戦と比べて落ち着いた立ち上がり、初回、バーバラのパンチやミドルへのクワンチャイが反応がやや遅れているように見える。パンチはバーバラが上回り、ミドルキック、前蹴りは互角のように感じた。ジャッジは3者ともクワンチャイを支持。二回は揉み合いからの首相撲、ヒザ攻撃の応酬、バーバラのほうがスムーズで的確にヒザを当てている様子。ニックネームの”アナコンダ”のようにクワンチャイにまとわりつく。この回はジャッジ三者ともバーバラを支持。
三回、ゴングと同時にクワンチャイが前に出てパンチを中心に攻めるもなかなか着弾しない。後半はバーバラに盛り返され、ポイントはバーバラに。そして四回、クワンチャイは三回と同様に積極的に攻める。バーバラとの差を埋めるべく「ここで勝負に出なければ勝ちはない」と、覚悟を持って前に出たように見える。必死に流れを変えようとしているが、コーナーでの攻防の際にバーバラの右ヒジがクワンチャイのこめかみにきれいに決まり、クワンチャイは堪えるも、左目尻を大きく切り、出血、そこから首相撲からボディへのヒザ攻撃とされるがままになり、マットに崩れ落ちた。
レフェリーは即試合をストップし、バーバラがKO勝ち。歓喜に湧くバーバラ陣営、外国人では2022年のダニエル・ロドリゲスに次ぐ、二人目のRWSトーナメント覇者となった。次戦は準決勝で退けたラジャ王者のソムラッサミーとのタイトルマッチ、またはリーグ戦で敗北を喫したマリー・ルーメットへの雪辱戦も期待される。勝利者インタビューではリングに上がった彼女の恋人兼トレーナーが「これで終わりでなく、バーバラは何本もベルトを集めていく」と今後のプランについて話していた。
一方、ダメージが心配なクワンチャイだったが、後日SNSで「教員の職務に100%注力する時が来た」と引退を発表した。「17年間の現役生活で沢山のものをもらえた。嬉しいことも悲しいことも、充実感もあればがっかりしたこともある。最後の日まで戦うことができたことに感謝します。夢が終わる時が来ました」とコメントを残した。試合3日前にメディアに公開されたインタビューでは9月のバーバラとのリーグ戦(三回戦)について「初回はポイントを取ったけど二回、三回は疲れてしまった。後はKOされないようにするだけで必死だった」と語っていたクワンチャイ、決勝では、バーバラにリベンジを果たすべく勝負に出て、KOされたが、印象に残る戦いぶりだった。
この日、スーパーウェルター級ではダニエル・ロドリゲス(ドミニカ/スイス)が、リッテワダ・ペットインディーアカデミーを下し、フェザー級ではチャイラー・ポー・ラクブーンがルアチ・ゴートン(イスラエル)を下し、それぞれが優勝を決めた。
12月7日には男子スーパーライト級、ウェルター級の決勝戦が行われ、スーパーライト級ではペッチトンチャイ・ソーソンマイ、ウェルター級ではハーキュリス・ウォー・チャクラワットが優勝を決めていた。
※ラジャダムヌンスタジアムで現地観戦、写真は著者撮影のもの。