見出し画像

タイラーメン・クィティアオ屋台を営む現役プロボクサー

サワディカップ

今回は、私が個人的に思い入れのある、タイのローカルボクサー、タイラーメン屋台ボクサーとして、タイ国内のボクシングファンにも有名な、ポクポク・ボクシングスラム選手を紹介したいと思います。
(2021年9月に取材、公開)

ポクポク選手はプロボクシングで50戦ほどを経験しているベテランで、ボクサーの戦績が記録されているサイト・BOXRECでは、19勝(16KO)26敗2引き分けという戦績が記録されています。ボクシングスラムというのは彼が所属するジムの名前です。(ワランチャイ・ブージャン・Worawatchai Boonjanという本名でリングに上がることもあります)

画像1
自身の屋台の前で、ポクポク選手の近景

3年ほど前、ポクポク選手と現在(2021年9月)WBC世界バンタム級1位にランクされている、ナワポーン・ナコンルアンプロモーション選手との10回戦の試合がイベントのセミファイナル挌で組まれ、私は試合会場でたまたまこの試合を観ました。

この試合、判定はナワポーン選手の勝ちでした。ジャッジはナワポーンを支持したものの、ポクポク選手は判定まで堂々と世界ランカー・ナワポーン選手と渡り合いました。その日の興行のメインイベントは、タイボクシング界のエース、シーサケット・ソールンビサイ選手が1RKO勝ちを飾ったノンタイトル戦でしたが、私の中では、その日の興行のMVPは、ナワポーンに最後まで食い下がったポクポク選手でした。

そのポクポク選手は、普段は、奥さんと二人で屋台でタイラーメン(クィティアオ)を売って生活しています。

最近は、大学の近くのマンションが多い地域で、屋台の営業場所を固定しており、周辺の下宿学生を相手によく売れているとのことです。

ラーメンのクオリティについては、こだわりが強く、仕込みに手間が掛けてクィティアオナムトック、クィティアオトムヤム、クィティアオイェンタフォーなど、何種類かのラーメンを屋台で提供しています。現在は、奥さんがメインで調理をして、ポクポク選手が調理補助と会計を担当しています。

※クィティアオナムトック~豚の血の黒いスープのラーメン、クィティアオトムヤム~このお店ではトムヤムクンのスープのラーメン、クィティアオイェンタフォー~ピンクの紅豆腐乳スープがベースの海鮮ラーメン

画像2

ポクポク選手のお勧めは冒頭の写真の「クィティアオ・トムヤム・タレー」で、魚介の出汁が効いていて、頭付きのエビやイカも入って美味しいと評判です。実際に食べてみると、年200食のタイラーメンを食べるマニアの私が太鼓判を押せる味で、とても美味しかったです。

ポクポク選手は、4年前まではプロボクサーをしながら、タイの有名百貨店グループ、ザ・モールで販売員として勤務しており、毎日スーツ姿でレジを打っていたそうです。

家族を養う為には、もっと実入りの良い仕事で、さらにボクシングの試合前に休みが取りやすい仕事がいい、と色々考え、30歳になったのを期に独立しました。

「独立後は、百貨店の店員時代より稼ぎが良いです。スケジュール調整がしやすい為、選手活動も以前より活発になりました」と、コロナ禍もありますが、定期的に試合をこなしていました。

彼は、青コーナーからリングインすることが多く、声が掛かればどこのリングでも上がると言います。ウェイトも今年2月の試合は53.2キロのバンタム級だったのに、最新の7月の試合は50.8キロの二階級下のフライ級と、階級間を行ったり来たりすることも臆しません。

強豪相手の実力差がある試合でも、最後まで勝負を捨てない彼の根性に、若手ホープの試練の相手にちょうど良いと、タイの大手プロモーターも彼に声を掛けます。

さらに海外からのオファーも受けてきました。これまでにアラブ首長国連邦(UAE)、シンガポール、オーストラリア、日本などへ遠征の経験があります。

日本での試合については、デビュー直後での経験で、対戦者が誰だったか、場所も東京、大阪、その他なのか覚えていないとのことでした。(BOXRECにも記録はありませんでした)

まだ海外遠征では全敗で「ボクシングが下手だから仕方がない」と彼は笑顔で語りますが、お店の看板に張り付けられたドバイでの試合写真は、笑顔で屋台に立つのとはまた異なる、勝負師の顔をしています。

画像3
屋台に貼られた遠征時の写真など

現在はコロナを取り巻く状況で、次の試合が決まっていません。

タイ国のコロナ感染対策についての規制で、ジムでの練習にも支障が出ている現状ですが、毎日ランニングを続け、次の試合の為にコンディション維持には努めているそうです。

ポクポク選手は「この屋台では、障がい者の方、お年寄りからはラーメン代は頂いていません。妊婦さん、お子さん、さらにコロナで失業された方も無料です。お客さん皆さんに喜んでもらえることが幸せです。」と語ります。

画像4
「障がいを持つ方などは無料」と書かれた看板

そんな彼の人柄に魅了される人も多く、多くのリピーターが屋台に通っている他、タイの「ザノンフィクション」のようなテレビ番組でその日常を取り上げられたこともあります。

彼のタイラーメンは、とても美味しいので、タイ在住の日本人の方、観光でタイにいらっしゃる方も機会があれば是非、食べてみてほしいです。

バンコク近郊のノンタブリー、ウォンサワンという場所で、毎日営業しています。

※追記:なんと9月25日に後楽園ホールで中川麦茶戦が決まったとのこと。2023年9月3日現在でポクポク選手の戦績は20勝27敗2分となっている。日本での健闘を祈る。

↓ ↓ ポクポク選手のBOXRECリンク

↓ ↓ 最後の黒星(2022年5月)となった、ポクポク対サーム戦(スーパーフライ級)


いいなと思ったら応援しよう!