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地鶏の炭火焼を食べると思い出す、恥の上塗りをした宮崎の夜のこと
旅行に行くと、せっかくおカネと時間をかけて来たのにこの結果かよ、ということがある。
たとえば、南国の太陽やキラキラの青い海を期待して沖縄まで来たのに、台風が直撃して、真っ暗な空やカフェオレみたいになっている海を見るはめになったり。
先週、地元のお祭があった。
キッチンカーが出ていて、宮崎名物 地鶏の炭火焼を売っていた。珍しいので買って食べたが、美味しかった。
めちゃくちゃ美味しくて、もう1つ買ってしまった。
食べながら、去年行った宮崎の夜のことを思い出した。
去年の12月、青島太平洋マラソン(以下アオタイ)に出るため宮崎に遠征した。10月の金沢マラソンに続いて2度目の遠征だった。
金沢は、レース中に出てくるエイドという給食を食べ尽くすのが目的のお遊びだったが、アオタイは本命レース。サブ4の記録を狙っていた。サブ4とは、4時間以内でフルマラソン42キロを完走することだ。
トイレ対策などスタート前の準備は完ぺきで、走り出しも順調。4時間を切れるペースで推移していた。ただ、その日は12月なのに最高気温が25度。夏日だった。28キロあたりから調子がおかしくなり、徐々にペースダウン。高温のせいか、一部記憶がない。
結局、体が動かなくなって33キロでリタイアした。人生初のリタイア。悔しくて情けなくて、しばらく放心した。
レース後は観光する予定だったが、そんな気もすっかり失せてしまって、ホテルの部屋でゴロゴロ過ごしていた。
夜になり、お腹も減ってきたので飲みにいった。宮崎地鶏の炭火焼を出す店だ。カウンター席の隣の女性もアオタイを走ったランナーだった。東京から来ていて、3時間ちょいで完走している。マラソンとかトレイルランが好きで、全国各地へ遠征するのが楽しい、なんて話をしていた。
俳優の天海祐希さんみたいな感じで、さばさばしていて、自然体でとにかく「健やかさ」が炸裂していた。めちゃくちゃまぶしかった。そんな話を聞いていると、私は自分がリタイアしたことが恥ずかしくて、「不本意なタイムだけど完走した」とウソを吐いた。
地鶏の炭火焼の味もよくわからなくなっていた。
帰り際、隣に座ってきた男性とも話をした。その人もランナーで、自分より1時間以上も遅い記録だったようだが、とても楽しそうだった。
アオタイは、高校生ボランティアの途切れない応援や、一生懸命働いている姿に勇気づけられる。レース後は、宮崎グルメをはしごするのがいい。家族を家に残して、せっかく遠征してるんだし楽しまないと!なんて話を聞かせてくれた。
高校生ボランティアがだくさんいて、その応援や働きぶりがすごいというのは、私も知っていた。宮崎地鶏の炭火焼が絶品だということも。
でも自分には、彼ら彼女らがほとんど見えてなかったし、地鶏の炭火焼にも集中できていない。
ただマラソンの記録だけにこだわって過ごしていた自分は、まだまだだなと思った。
また恥ずかしくなって店を出た。