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酔狂な奴になりたくて100キロ歩いた

「酔狂な奴」になりたい時がある。

おそらく、『深夜特急』からの影響だろう。

人のためにもならず、学問の進歩に役立つわけでもなく、真実をきわめることもなく、記録を作るためのものでもなく、血湧き肉躍る冒険活劇でもなく、まるで何の意味もなく、誰にでも可能で、しかし、およそ酔狂な奴でなくてはしそうにないことを、やりたかったのだ。 

沢木耕太郎 『深夜特急』


そんな、酔狂な奴が今年も九州に集まっている。

21時間で100キロ歩いた

「行橋〜別府100キロウォーク」

福岡県の行橋を出発し、大分県の別府まで、26時間以内に100キロを歩く。

修行のようなイベント。

カッコよく言うと、「エクストリームスポーツ」だ。

かつて、酔狂な奴を目指した私は、これに2度参加したことがある。

1度目は2019年、途中リタイア。
2度目は2022年、前回のリベンジを誓い、21時間かけて100キロを歩いた。

人生観は変わらなかった

100キロはあまりに果てしなく、道中いろんなことが起こる。

なので、歩き切ると人生観が変わったとか、新しい自分に出会えたとか「映える」感想を残す人もたくさんいるが、自分は正直そこまでではなかった。

ゴールした後、一応達成感はあったが、やっと終わったという安堵感の方が大きかった。

完歩できたし、もういいかな、と2度目の出場を終えると、私は酔狂な奴ではなくなった。

みんなのドキドキ ワクワクが共鳴し合う空間

今年も、親戚と友人が参加すると言うので応援に行ってきた。

彼らは、ほぼ毎年参加していて、リピーター、というかもはや、酔狂マイスターだ。

しばらく談笑しながら、一緒にスタートを待っていると、みょうにワクワクしてきた。

まわりを見回すと、他のウォーカーも同じようなテンションで、ドキドキ ワクワクしているのが伝わってくる。

そのかたまりの中に、選手でもない自分がいること自体にすごく興奮した。

これから100キロを味わう人たちの心が、共鳴し合っている、なんか居心地の良い空間に感じた。

酔狂な奴に戻るのも、いいかもしれない。

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