LANケーブルをハサミで切った話
お盆休みなのに雨でどこにも行けず、家族と過ごす時間が長いため家族の話になる。おうちのテレビでYouTubeが観られるように繋いでいるLANケーブルをハサミで切った話。
善い子でいることのインセンティブ
我が家では、「約束を守り、やるべきことを済ませた日には、30分だけYouTubeを観ても良い」という取り決めを交わした。
そうすると、YouTube視聴が善い子でいるインセンティブの意味を持ってしまい、YouTubeが観られないと決まった日は、ますます長女は傍若無人に振る舞うようになった。
まさに、サンデル先生が指摘する「インセンティブは倫理の腐敗を招く」のまんまである。モノで釣れば、見返りを求めない道徳心が締め出されるのを目の当たりにした。
道徳を締め出す力が最も強いインセンティブは金銭(=お小遣い)で、その対極は自己肯定感による内的な動機だろう。それらの境界は曖昧で、意外と線引きは難しい。私の思い付くところを列挙すると:
金銭を渡す > 商品券を渡す > 好きなモノを買ってあげる > 好きなことをさせる > 何かやってあげる > 嬉しいことを伝える > 内発的動機
佐々木正美先生のオススメは「好きな献立にしてあげる」「嬉しいことを伝える」など、無理なく親の愛を伝えられる方法で、右から3つ目までとなる。YouTube視聴はそれより左、モノで釣る部類に入ってしまう。
補足:右側に近いところで、条件のない無償の愛として「高い高い」は続けている。別に見なくてもよいYouTube以外は、ほとんど無償の愛である。
よく破られる約束事は妹いじめ
二女が「高い高い」されるのを長女が妨害したり、二女の玩具を借りパクして原状復帰できなくしたり、「妹なんていなかったらいいのに」と言ったり。観ていて辛いくらい痛ましいけれど、二女は長女に歯向かわず服従している。
長女を観察していると、長女自身が施されたことを少なく見積もり、二女が施されたものを多く見積もる傾向にある。平等に扱っていても「妹ばかりズルい」と言いがかりをつけ、長女視点で公平を保つために二女を妨害し、周囲の大人は二女が可哀そうなので埋め合わせをしようとし、それを見て「妹ばかりズルい」と言う。...そんな負のスパイラルに陥っている。
長女は「私なんて生まれて来なければ良かった」と言って、私の妻を悲しませる。穴の開いたバケツと同じく、幸せを幸せと感じられていない。施してもらったところで、「ありがとう」ではなく「妹の方が多いんじゃないの?」と言ってしまう。「生まれてきて良かった」と思ってもらうために、親は何をすればよいのだろうか。
人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える、この三つの要素でしか人間は変わらない。
大前研一先生が言うところの、時間・場所・人を変えるには、施設にでも入れて距離を置くしかないんじゃないかと考えて調べだした事もあった。
LANケーブルをハサミで切った
どうしようもないくらい手が付けられないこともあれば、姉妹で仲良く遊んでいることもある。けっこうコロコロ分かるので、落差が激しくて親の気持ちがついてゆけない。
YouTubeを見る前は行儀良く、見終わったら傍若無人になり、約束を破ってLANケーブル没収すると再びしおらしく反省する。没収されても、謝ったらまた観られると思っていることが透けて見える。毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日...これの繰り返し。
先日、妹いじめが目に余ったので「YouTubeなんて2度と見なくていいわ!」とLANケーブルをハサミで切った。長女はYouTubeが二度と観れないのがよっぽど辛かったのか、号泣してセロハンテープで修理を試みた。
外見は繋がったように見えても、もちろん通信できる訳がない。言葉の暴力で傷ついた心も、見た目には分からなくても元には戻らないんやで。
そう言いながら修理はする
片方8本の銅線を丁寧に剥いて、短絡して、ねじって、
絶縁テープで巻くと、YouTubeがコマ落ちなく見られる通信速度に復活した。
教訓に反して、見た目は変わったけど元には戻った。完全元通りにはならないとしても、戻そうという努力だけは諦めないで欲しい。#我が家のDIY
その道の人から突っ込まれそうなことをFAQしておく。
Q: ルーター側ではじくとか、もっとスマートな方法があるんじゃない?
A: 見た目の分かりやすさ重視で、観れなくなるよ感を出した。
Q: 電気的に繋がっても、電磁的な特性は出ないんじゃない?
A: 厳密に言えばコネクター圧着すべきなのは理解している。もちろん減衰するけれど、full HDのYouTubeなんて2.2Mbps程度なので、10baseT程度が出れば充分。
Q: 最近のテレビなんて無線LANつながるんじゃないの?
A: それに気付いて設定した時は「腕を上げたな」と言うつもり。その次はMACアドレスでフィルターかけたり、イタチゴッコによりITリテラシー高める。
我悩む故に親である
正直なところ、育児に関しては思い悩んでいることの連続である。
・時間を区切るとはいえ子供にYouTubeを見せてよいのか?
・それをインセンティブにしてよいのか?
・LANケーブルを切るパフォーマンスは悪い影響を与えないか?
そうするのが本当に良かったのかは、試行錯誤中で答えは出ていない。役に立つ記事でなく、思い悩んだそのままを垂れ流している。そうやって思い悩むからこそ親と言えるのでないか。そんな葛藤も含めて、いつか気持ちが伝わる日が来るんじゃないかと思って記している。