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#0146 勝手に空想旅行~カムイの棲む動物園~

おはようございます。
釧路出身の小田原です。

いつまで続くか分かりませんが、「勝手に空想旅行」続編です。

飛行機で釧路空港に到着したところで初回が終わってしまいましたが、一行はまず最初にどこに向かうのか。

今日もお付き合いを願っておきまして、どうぞ!

↓前回はこちら

○鹿にしか聞こえない

釧路空港でレンタカーを借りる。
受付のスタッフの方から「鹿笛は要りますか?」と尋ねられた。

「鹿笛?俺に笛で遊べってか?舐めてるのか?」と一瞬心のなかで思ってしまったのだが、聞くところによると、どうやら犬笛と同じように、鹿にしか(ダジャレではない)聞こえない笛があるらしく、それを搭載した車両があるらしい。

北海道ではエゾシカ頭数が高止まりしているとのことで、エゾシカとの接触事故や農業被害などが積年の課題になっているという。エゾシカを捕食する動物の減少やハンターの高齢化などが影響しているのだろうか。

北海道環境生活部自然環境局野生動物対策課エゾシカ対策係ホームページより

○いざ馳せ参じる

車を15分ほど走らせると釧路市動物園に到着した。
大きな駐車場で駐車しやすい。

東京の駐車場はどこも込み合っていて、空いているところを探すのにも一苦労。

好きなところに自由に駐められるというのも非日常の小さな贅沢かもしれない。

駐車して車を降りる。

家族一同「臭っ!!」

また、みんな顔を見合わせて爆笑した。

周辺は牧場が多いからか、牛さんのウン○の香ばしい香りを風が運んでくる。

何度か深呼吸すると、すぐに匂いに慣れ、臭く思わなくなった。
鼻が道東仕様になった。

ガイドブックで得た豆知識だが、釧路市動物園は1975年に開設されたようだ。来年で50周年を迎える。

国内最東端の動物園で47.8ヘクタールという国内最大級の敷地面積を誇るのだとか!

114種664点の展示があるそうだ。地方の動物園ではなかなかの数だ。

恐らく50周年に向けてと思うのだが、現在は大規模改修中で一部は入ることが出来ないところがあるようだ。

天然記念物のシマフクロウやエゾヒグマ、オジロワシなどを集めた”北海道ゾーン”は北海道の貴重な動物たちを身近に観察できるらしく、ここはじっくり見学してみたい。

○鼻血事件

自販機やドリンクスタンド等はある。
しかし、レストランはない。ランチをどうするか問題を抱えている。
一応、候補はある程度アタマにインプットしてあるから、お昼前あたりに歩きながら家族会議だな。

そんなことを考えながら、道路を渡って、いざ正門から入場。

少し霧が晴れてきて、視界が開けてきた。

大きな観覧車が見える。

動物園に併設されている遊園地だ。
パッと見、どの遊具も年季が入っているように見られた

右手には透明のアクリル板のようなもので作られた迷路があった。
こうしたアトラクションはあまり見たことがない。

子供達は、迷路に向かって走り出した。
どうやら好奇心に惹かれたらしい。

私はカメラ係で外で待機。
まさか動物園に入って最初に迷路をするとは予想もしていなかったが。

小学生の子供達には意外と簡単なようで、すいすいと前に進む。
そして、ゴール間近かと思ったその時、バン!という鈍い音がした。
2番目の長男が調子に乗ってダッシュし、アクリル板に顔面を強打したようだ。鼻をおさえている。

無残にも鼻血がアクリル板に付着し、衝撃の強さが伺える。

この絵に笑っちゃダメなのだが、笑ってしまった。
恐らくこのシュールな絵は向こう数十年現れることはないだろう。

そして、私は駐車場で嗅いだウン○の匂いを思い出した。
もしかすると、あれは鼻に気を付けろという暗示だったのかもしれない。
そんなことを思うと余計に笑えてきた。

長男が怒っている。
妻も長女も笑っている。

スタッフの人にアクリル板を掃除してもらっている間に、ゴールして迷路から出てきた。

「いやーいい写真が撮れたよ。動画にしておけば良かったな。」
「格好悪いところ撮らないでよ!削除して!」
そんな会話をしながら遊園地の中を歩いていく。

○骨組みのコースター

骨組みだけ残るジェットコースターが、盛者必衰を感じさせる。

釧路出身の小田桐さんから聞いた話だが、どうやら彼が幼稚園児のころにSLコースターとしてリニューアルされたようで、たまたま遠足で訪れていた日がテープカットのセレモニーの日で当時の市長をはじめ、偉い人たちが集まる中、流れで是非子供たちも一緒にということで、テープカットをしたのだとか。

テープカットでは終わらず、初乗りも一緒にという流れになり、怖くてジェットコースターなんか乗ったことがないのに半ば無理やり乗らされて大号泣して帰ってきたという話を聞いたことがある。

初乗りが初乗りとは凄いですねなんて言うと笑っていたが、もう初乗りの初乗りコースターは骨組みだけになっているようだ。

○当たり前は当たり前ではない

観覧車の方に歩みを進めて、中央広場に行くと、動物園らしい雰囲気が出てきた。

ペンギン、シマウマ、キリンなど動物園のレギュラーメンバーたちが涼しい釧路で快適に過ごしていた。

キリンの目の前に小さな観覧席のような建物がある。

看板に目をやると「キリンを贈ろう寄付者一覧」とあり、凄い数の名前が記載されている。説明を読むと、釧路市動物園に「キリンがいない。寂しいね。」という会話から、2011年にキリンを贈ろう!キリン募金プロジェクトが発足し、実を結んだとのエピソードが書かれていた。

そうか。いろいろな理由でキリンがいなかったのか。
市民の気持ちが実を結んだと思うと、なにか心が温まった。
キリンは動物園の定番でいるのが当たり前と思ってしまっているのだが、動物の命を預かるには、お金がかかるし、素人には分からない苦労があるのだということを再認識することができた。

東京の上野や多摩など色々な動物園に行ったことがあるが、こうしたことを感じ取ったり、学べる機会はなかった。

キリンの隣のスペースに目をやると空いている。
もしかすると、ここも本来は何か動物がいたのだろうか。
動物園に入ってすぐのエリアだから、レギュラーメンバーの何かだと思う。

先程の骨組みのジェットコースターといい、キリンのサイドストーリーと空いた展示スペースといい、都会の動物園では感じることのできないものが凝縮されているように感じた。

さっきまで鼻血を出しながらゲラゲラ笑っていたくせに、子供達も何かを感じ取っているのか、静かにキリンの観覧席の説明を読んだり、空いた展示スペースを眺めている。

釧路市動物園は、動物を見なくても人の心に訴えかけるような何かがあるようだ。

○北の大地のカムイたち

キリンの右奥に歩みを進めると「北海道ゾーン」という看板が見える。

寂しい気持ちになっていたが、急にワクワクしてきた。

文字通り北海道に生息する動物たちに会えるからだ。

もしかするとドライブ中に遭遇するかもしれないが、その前に北の大地のカムイたちにご挨拶しておこう。

タンチョウヅル:サルルンカムイ(湿原の神)

ヒグマ:キムンカムイ(山の神)

オオワシ:カパッチリカムイ(ワシの神)

シマフクロウ:コタンコロカムイ(村を守護する神)

などなど沢山のカムイたちにお目にかかった。

アイヌの人々の信仰では、動物や植物、山や川などの自然、人間が作った道具など、あらゆるものがカムイ(神様)と考えられている。

カムイは人間の世界を訪れる際、それぞれの姿となって現れるといわれており、動物であればその動物の毛皮を身にまとって現れる。

そう考えると、自ずと我々人間は自然にお邪魔させていただいているという気持ちにさせられる。

もはや現代人はあらゆる自然破壊をしながらでなければ生きていけない動物になってる。自然と都市の間に見えない壁を作って、その城壁の中で守られて暮らしている。

そして、人間はその城壁の中から、自然をコントロール可能なものとして振舞っている。

だが、ヒグマ:キムンカムイ(山の神)の巨体を目の前にしたとき、その振る舞いの愚かさに気付かされる。

昨今、人里にヒグマが現れるニュースを東京でも目にすることがある。SNSでも写真や動画がよくアップされている。

標茶町の「オソ18」も有名だ。

オソ18(オソじゅうはち)は、標茶町および厚岸町一帯で2019年から2023年にかけて家畜を襲撃していた雄のヒグマ。名前の由来は、最初の被害が発生した「オソツベツ」と、前足の幅が約18センチメートルであったことから来ている。このヒグマは非常に用心深く、捕獲が困難でしたが、2023年7月に釧路町役場の職員によって駆除された。
体重は推定330キログラム(三毛別羆事件のヒグマと同サイズと推定)、体長 2.2メートルと推定。

Wikipediaより

OSO18を駆除した時、釧路町役場や標茶町役場に苦情の電話が多数入ったそうだが、人間が想像で作り出した東京ディズニーランドにいるクマのプーさんとは違うのである。ヒグマの皮を着た神と、どう向き合い、お付き合いをしていくと良いのだろうか、自然にお邪魔させていただいている身として色々なことを巡らせながら北海道ゾーンを見学した。

間もなくお昼の時間だ。

さすが、国内最大の敷地面積を誇る動物園なだけある。歩くのが疲れてきた。腹も減った。

BBQ場の貸出があるが、肉や野菜は自分たちで調達しなければならない。

今更、火を起こす元気もない。

なんて人間てのは、わがままで無力なんだろうか…

そう思いながら空腹全開で動物園から、少し移動したところにあるレストランでの昼食を提案した。よし昼メシだ!

つづく

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