#0007 港湾法改正による「みなとまち」再興の可能性
港湾法改正(2022年12月施行)の概要
港湾におけるカーボンニュートラルの推進
パンデミック・災害時の港湾機能の確実な維持
港湾の管理・利用の効率化と質向上
7月初旬に公民連携事業の有識者の方々と意見交換をさせていただく機会に恵まれ、2022年の港湾法改正(概要上記)により、港湾版Park-PFIのような手法が採用できるようになった旨、レクチャーいただきました。
今回は上記のうち 3.にフォーカスして、レクチャーいただいた内容を整理したうえで、「みなとまち」再興の可能性について考えていきたいと思います。
港湾緑地において行政財産の貸付・民間事業が可能に
規制緩和により可能になる取り組みはこんなイメージ
イメージではアリーナ整備といった結構大げさなものも出ていますが、これをMOOの改修・修繕に応用したり、親水エリアやビューポイントなんかは、釧路川の岸壁や幸町緑地のリニューアルでも応用できそうな可能性を感じます。
大きな方向性としては、従来のような隔絶されて入りにくい港湾から、一般人も親しみやすい公共空間に生まれ変わらせようとするものと理解しました。
基本的な取組スキーム「みなと緑地PPP」
基本的な仕組みは都市公園法のPark-PFIに似ていて、都市公園が港湾緑地に置き換わったようなイメージ。
民間事業者が港湾緑地を港湾管理者から借り受けて事業を行い、そこで得られる収益の一部を港湾緑地の整備等に充てる仕組み。
(※収益を港湾管理者に還元し、港湾管理者はその資金を使って港湾緑地を整備する)
以前、noteで記載した港湾法や都市計画法に関する制約について記載しましたが、このような法律を犯すことなく、公民連携事業に取り組めるように法改正した国の役人の人達はマジで凄いと思いました。
この「みなと緑地PPP」で取り組めることを一つの目標に置きながら、最も規制の緩そうな旧日銀釧路支店側の護岸を出発点にマイルストーンを考えていくのはアリかなと考えています。
釧路でどのような取組が可能か
釧路市の都市計画マップと臨港地区分区指定図では、港湾緑地と言って良いエリアがなさそうですが、2つのエリアに可能性がないだろうかと考えています。
1つ目が、釧路港で無区分地区とされているエリア。
このエリアは、「釧路港の臨港地区内の分区における構築物の規制に関する条例」第3条の「市長が公益上その他特別の事情によりやむを得ないと認めて許可したものについては、この限りでない。」とされるエリアと思われ、市長と議会の了解が得られれば、釧路倶楽部さんやシークレイン乗降場所周辺をリニューアルできるかもと思います。
ベンチに座ってビールを飲みながら夕日を眺められるようにしたり、沖の方にビューポイントを設置するのもアリかなと思いますし、釧路川の岸壁を今よりも回遊しやすいように、そして、幣舞橋を行き来したくなるような空間にできたら良いなと思います。
港っぽくコンテナハウスでできたお店が護岸に並び、炉端やカフェがあって、周りからジャズとか音楽が聞こえてきて、水上ホテルやウッドデッキなんかで夕日を眺める画とか釧路にしかない空間を作りたいですね。
コンテナハウスは初期投資も抑えられるので、賃料を低く設定できます。低めの賃料のところで商売を始めてみたい人や、道外からチャレンジしてみたい人なんかを呼び込んで盛り上げられたら面白いかなと思います。
また、運搬もできてしまうので、そのまま柳町公園に引っ越しとか、月単位で市内をローテーションしたりするのもアリですね。
(※建築基準法等の規制は要検討)
2つ目が、釧路川リバーサイド緑地と幸町緑地
平成の時代に「釧路川ふるさとの川整備計画」に基づいて整備された緑地で、幣舞橋より上流は北海道が管理する河川エリアになるので、河川法や釧路川河川整備計画の縛りを受ける可能性がありますが、河川も港湾同様の規制緩和が行われているので、港湾と河川が一体となって取り組めると全国的な注目を浴びるプロジェクトになりそう。
各緑地の使用ルールが釧路市の条例で規定されているので、民間事業者が取り組みやすいように改正が必要になるかもしれませんが、その辺は市長や議員さんに相談して前に進めることになるかと思います。難易度は高めですね。
3つ目はMOO・幸町緑地エリアです。
ここは釧路の顔みたいなところなので、綺麗にしたいです。
幸町緑地はキリフェス等のイベントも行えるところなので、もっとガシガシ営業掛けて釧路市の収入がアップするようにしたいです。
MOOも墓標と言われるのは悔しいので、維持管理しやすいように改修するとか、946BANYAを核に何かしらこの辺でやっているという風にできると、幣舞橋周辺に賑わいが戻り、不動産の価値も上がり、旧釧路デパート跡にできた施設の空きテナントも埋まり・・・と好循環を作れるエリアかなと思っています。
不動産開発の知見が乏しいのですが、わりと市民が愛しているMOOという施設を中心に、MOO周辺が市民に愛されるエリアになってほしいと思います。
この辺も釧路市の条例で細かい規定があるので、調整が必要になりそうです。
「みなと緑地PPP」制度の法的な枠組み
ここからは、面白くない手続きに関する内容を整理。
ワクワクすることをやるには、越えなければならないハードルですね。
港湾緑地において可能になったことは以下2点。(改正法第 51 条第 1 項)
【行政】民間事業者に対する港湾緑地の貸付
【民間】カフェ等の民間収益施設の整備・運営
6月2日に改定された国の「PPP/PFI推進アクションプラン」でも、「みなと緑地PPP」として導入促進を図るとしています。
(概要版P3、本文P6)
ただし、民間事業者が港湾緑地の貸付を受けるには以下が条件
【民間】当該施設から得られる収益を港湾管理者に還元
(※港湾管理者は還元された資金で港湾緑地の整備に充当)【民間】港湾環境整備計画を作成して港湾管理者の認定を受ける
更に、港湾環境整備計画の記載事項・認定要件は以下
【記載事項】(改正法第 51 条第 2 項)
貸付を受けたい区域
貸付を受けたい期間
収益の一部を港湾緑地の整備等の費用に充当できる認められる事項
休憩所、案内施設等の環境の向上に資する港湾施設整備に関する事項
緑地等の維持その他の港湾の環境整備に関する事業に関する事項
資金計画及び収支計画
【認定要件】(改正法第 51 条の 2 第 1 項)
当該港湾の港湾計画に適合するものであること
港湾の環境の向上に資すると認められるものであること
港湾の利用又は保全に著しく支障を与えるおそ れがないものであること
計画が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること
要は、民間事業者の取り組みが、地域に求められるものであって、継続性と収益還元が可能であって、且つ港湾計画に反していないものであれば良いということだと思う。
結構、面倒くさい感じですが、PFI法6条に民間提案制度というものがあるので、民間主導で釧路市を動かしていくのが一案かと思っています。具体的にどのように提案したらよいか等は、やったことがないので分かりませんが、全国で民間提案制度を利用したことがある人がいるはずなので、情報収集をしながら具体化していきたいと思います。